表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気づけば異世界にいた私の非日常  作者: だいたいぶくふく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/27

ここはどこ? あなたはだれ?(2)

 


「はろー! 初めまして、沙良木撫子さらきなでしこです。一応魔物討伐隊の専属医師やってます!」



 次の日の朝、病室に運ばれてきた朝食を食べていると、勢いよくドアが開くと同時に快活な声が部屋中に響き渡った。



 病室に入ってきた小鳥遊さんのすぐ隣には、金髪の美人な女の人が立っていた。

 白金の髪に色素の薄い瞳。同じく色素の薄い眉毛は、ぱっちりな平行二重の目尻と同じ角度で垂れ下がっていて、おっとりと優しげな印象だ。


 百七十センチはありそうな身長にジーンズを履いていることで、長い脚がさらに強調されていてモデルさんみたい。



 小鳥遊さんは「食事中にすみません」と困った顔で謝った後、にこにこの笑顔の美人さんを紹介してくれた。

 彼女は魔物討伐隊の専属医師の一人だそうで、魔物の研究もしているらしい。


 魔物から受けた傷は、適切な治療を行わないと場合によってはかすり傷ですら死に至ることもある。

 特に昔から鎌鼬による被害は少なく、今後の参考資料の一つとして見ておきたい、と途中から小鳥遊さんに被せて話し始めた沙良木さんに言われた。



「ちゃんとね、ハジメンの診断結果も見るしハジメンを疑ってはいないんだけどね。こーゆーことはやっぱり自分で見て聞いて考えるのが一番だからね!」


 と、お顔の儚げな印象を吹っ飛ばす勢いで話す沙良木さんは、間違いなくドアが開いたとたん、部屋中に響き渡る声を発したご本人だった。


 …見た目と噛み合ってなさすぎて、空耳かと思ってたよ。


「ってことで、ちょっとだけ質問させて! あとご飯の後でいいから傷口も見させてね!」


 勢いに押されてぽかんとしていると、まだお皿に残っているご飯を食べるよう促された。


 にこにこの笑顔の沙良木さんと、「ほんとにうるさくてすみません」と呆れ顔の小鳥遊さんに見守られながら、なんとか食事の手を進めた。


 食べながらもぽつぽつと沙良木さんから体調について質問があり、それに応えている途中で何に興奮したのか、沙良木さんの魔物講座が始まる。

 ヒートアップしすぎたタイミングで小鳥遊さんが間に入り――と言うのが食事が終わるまで続けられた。


 魔物講座は大変興味深かったが、沙良木さんの情熱にちょっと体力が削られた気がする…。



 食事も終わって少し経った頃、手足にできた傷を見てもらった。

 一番深い切り傷は右足首だが、それでも縫うほどではない。ちなみに傷は、左右の足で五箇所、右手首に一箇所、計六箇所だ。


「傷周辺に痛みはない? 喉が渇いたりは? お腹が緩くなったり体が熱くなったりは?」


 切り傷の周辺の皮膚を軽く押しながらじっと私を観察する様子には、先ほどまでの勢いや快活さは全くない。

 冷静な姿を見て、ちゃんと医者でもあるんだとちょっと安心した。


「ええと、大丈夫です。いつもと変わらない、です」

「そう。…ほんっとーに、運がいいね。鎌鼬による被害で過去を遡っても、ここまで軽い怪我で済むなんて聞いたことがないよ」



 鎌鼬とは、嵐を呼ぶ魔物で肉食獣にも劣らない鋭い爪を持ち、嵐に紛れてその爪で攻撃する。

 とっても臆病な性格だが単独だと攻撃性が高くなり、敵とみなすと相手が死に至るまで攻撃を続けるらしい。


 そんな鎌鼬に攻撃されて私が軽傷で済んだのは、今回出会った鎌鼬は魔物討伐隊に捕獲され、その後無理やり脱走したことでかなり弱っていたみたいだ。

 もちろん、襲われてすぐ小鳥遊さんが助けてくれたからでもある。


「今回は未来ちゃんがかなり幸運だったから助かったけど、次はないと思った方がいいよ。家を出る前はきちんとラジオで警報を確認すること!」


 沙良木さんはそう言うとびしっと人差し指を立て、真剣な顔で注意をした。


 診察が終わった後は、今回の件に関して魔物討伐隊からの謝罪文書や損害確認書類、振込口座などさまさな書類について説明を受けながら、都度確認やサインをした。


 ちなみに、公式には私の被害は無かったことになったみたいだ。

 詳細は教えられなかったが、魔物討伐隊が一度捕獲したにも関わらず逃すという失態と、民間人が被害に遭ったことを突かれると、いろいろと面倒くさい事になるらしい。

 振込額がかなり多くて内心びくびくしていたが、その口止め料も含まれていたようだ。


 一通り説明や手続きが終わったら、小鳥遊さんから携帯と財布、それから食材の入ったエコバッグを返してもらった。

 念のため中身も確認するように言われたので見てみるが、たぶん買った商品はしっかり入っている。



「ところで、ちょっと気になったんですけど…携帯ラジオは持ち歩かないんですか?」

「携帯ラジオ…?」


 携帯のことではないよなと、私の視線の先を辿った小鳥遊さんは、目を丸くする。


「え。もし、」

「もしかして未来ちゃん、携帯ラジオ持ってないの!?」


 携帯ラジオどころかラジオすら持ってません。そう返すと二人から驚愕の色が顔に広がる。

 まるで現代の若者が携帯を持ってません、と伝えたときくらいの驚き様だった。


 え…なんでそんなに驚くの? だってスマホはあるしこのご時世の一人暮らしにテレビだって家に置いてるし。十分じゃない?

 というようなことを言ってみるが、二人の顔に変化はなかった。というかますます驚かれた。


「未来さんって何歳だったっけ?」

「確か二十三歳よね? スタンピードの時は六歳か。それにしても…」


 私の年齢知ってるんですね…というかスタンピードって? あと、ラジオは持ち歩くことが当たり前なのか。

 何も知らない様子の私に、二人は親切に教えてくれた。


 ラジオを持つことを勧められるのは、一番に情報伝達の速さが上げられる。

 しかし、それだけではないようで。



 今から十七年前、全国各地で一斉に魔物の大量発生――スタンピードが起こった。


 一部地域ではなく、全国のあちこちで一斉に魔物が大量に発生し、街や人を襲ったのだ。

 発生した魔物の種類もバラバラで、なぜ突然各地で一斉に現れたのか、その原因は現在もわかっていない。


 今までにも魔物による被害でインフラが損害を受けることは何度もあったが、そのたびに復旧と改良が重ねられ、被害は徐々に軽減し、スタンピードが起こる前の十数年間はほぼ被害がなかったようだ。


 そして、それはちょうど携帯電話が開発され普及し、ラジオを持つ人が徐々に減っていった時期でもあった。

 そうした状況の中でスタンピードが発生し、インフラに過去最大とも言える損害が出た。


 ネットが使えないことによる情報の断絶が各地で生じ、魔物の発生情報や被害状況などが伝わらず、二次被害、三次被害と被害が拡大していった。


 この一件以降、政府はラジオを各家庭に置くこと、また携帯ラジオを持ち歩くことを強く推奨した。

 そして今では各家庭にラジオを備え、携帯ラジオを持ち歩くことが当たり前になったようだ。



 私の無知ぶりに心配になったのか、二人から退院時間になるまでラジオの必要性を解かれ、また、お薦めの護身具も教えてくれた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ