死闘の末に…
灰燼の星の昼、溶岩地帯は戦いの余波で静まり返っていた。俺、アレキサンダー(元藤原タクヤ)はザルクと共に、カイラを見つめていた。黒い目に、白いまつ毛、青い皮膚、額に一本のツノが生え、白髪の長髪を高めに結んだ長身の魔族。宇宙海賊「ブルーホーン」のリーダーだった彼女は、長老の自爆、俺の毒霧とザルクの攻撃で衰え、ついに膝をつき両手から刀と短刀を落として地面に座り込んでいた。
「ザルク、殺すな。治療しよう。」俺は毒針を下ろし、息を切らしながら言った。体力はほぼ尽きていたが、カイラの走馬灯で見た過去――野犬に追われ、奴隷として血と泥にまみれた幼少期、ガルドとの絆――が心を揺さぶっていた。
ザルクが赤い翼を広げ、唸る。
「ジチュー野郎、情けは敵を増やすだけだ。」
「でも…彼女も被害者だ。チャンスをくれ。」
「お、おまえもあいつの走馬灯を見たのか…」
「あぁ、生死を分ける戦いをしたから偶然やつの走馬灯をオレらも追体験したのかもしれない」
「……………お前がそう言うのならオレは…従うよ」
俺は部族の医者を呼び、薬草と包帯を準備させた。だが、その時、近くの宇宙船から重い足音が響いた。
巨大な影が現れ、灰色の岩肌のような皮膚を持つ異星人が降りてきた。身長約3m、筋骨隆々で、両腕の拳は金属のように硬い。「ナックル」ーーーカイラの仲間らしい。
カイラが倒れているのを見て、彼の目が怒りに燃えた。
「お前ら…リーダーを…!」ナックルの声は低く、地面を揺らす。拳を振り上げ、岩砕きの一撃を放つ。拳から衝撃波が広がり、近くの岩が粉々に砕けた。
俺とザルクはよろめき、応戦する力も残っていなかった。さらに次の瞬間、
ガシッ
カイラがアレキサンダーとザルクの腕を掴み、ツノから光線を放とうとエネルギーを溜める。
アレキサンダー・ザルク「しまっ…(くそっ、やられた!)」
直撃は避けられない。さらには新たな強敵の登場。毒も溶岩槍も使い果たし、死を覚悟した瞬間、リナがナックルの前に腕を広げ飛び出した。
「やめて!もうやめて!人がいっぱい死んだの!これ以上誰もいなくなってほしくない………あなたも…あなたたちのリーダーにも死んでほしくないよ…!」
リナの小さな体が震え、涙が頬を伝う。癒しの炎が彼女の周囲に淡く灯り、純粋な悲痛が空気を満たした。
ナックルが拳を止め、硬い表情が揺れる。
「…お前…」
彼は立ち止まり、戦意を喪失。巨大な体が膝をつき、言う。
「停戦だ。リーダーを…治療する。」
部族と「ブルーホーン」の医者が総動員され、カイラや怪我人を運び出した。リナの癒しの炎がカイラの傷口に触れると、黒い斑点が薄れ、呼吸が安定し始めた。ザルクの左腕が接着され翼の裂け目も、アレキサンダーの腹の切り傷もみるみるうちに癒える。
オレは驚いて言った。
「凄いじゃないかリナ!ザルクの左腕まで元通りにできるなんて!」
ザルク「オレもう、生き延びてもこれから先片腕かと思ってたから安心したぜ…ありがとな!」
リナは照れくさそうに言う。
「へへへ…!でも、切られた腕を新しく生やすのはできないから気をつけてね!?あればくっつけられるけど…」
ザルク「十分だ!」
数時間後、カイラが目を覚ました。
戦闘中は黒かった瞳が、今は白い。
俺を見上げ、「…お前ら…なぜ、私を…」と弱々しく呟く。
俺は答えた。
「お前を殺すより、仲間にしたい。過去を背負ってるのなら、未来で償え。だから、お前が死ぬのを許さない。許されない。生きて、これまでの罪を滅ぼし続けるんだ。可能な限り」
カイラのツノが微かに震え、「二度とお前らを襲わない。誓う」と誓った。ナックルが近くで頷き、
「オレからも誓う」と申し訳なさそうに言った。
治療が一段落し、夕暮れが近づいた。カイラが立ち上がり、俺たちを見た。「罪滅ぼしだ。宇宙船でおもてなしする。
お前たちを招待したい。」
部族の人々とともに、俺、ザルク、リナは直径10kmはあろう宇宙船に足を踏み入れた。金属の廊下を進むと、異星人たちが準備を始めていた。緑の皮膚の植物学者が薬草スープを温め、青い鱗の漁師が焼いた魚を並べ、羽の歌手が優しい旋律を奏でる。ナックルは寡黙に立ち、部族の子供たちが彼の筋肉に興味津々に触れる。
「すごいね、ナックルおじさん!」子供の一人が笑う。ナックルは照れくさそうに拳を下ろし、子供たちと遊ぶ姿が微笑ましかった。
カイラが俺に近づき、グラスを渡す。
「お前らの優しさ…ガルドを思い出す。地球へ行く目的、教えてくれ。」
俺はセイラのことを思い出しながら答える。「元の世界に戻りたい。セイラたちに会うためだ。」
ザルクが加わる。
「俺は部族の未来のため、力を得る。そして地球を観光する。」
カイラが頷く。「なら、協力する価値はある。だが、食料と水が不足してる。エネルギーは原子力で賄っているが、それがなくなれば火力か太陽光頼りになる…宇宙船には一万の異星人がいる。解決策を考えよう。」
アレキサンダーは得意げに言った。
「地球は、少なくとも俺の住んでいた日本は食料が飽和してるし水に関しては世界で1番恵まれてる!なんたって水道から直接水を飲んでも腹壊さないくらい綺麗だからな!お前の宇宙船の一万人ぐらい賄えるさ!一緒に地球にこいよ!日本人は宇宙人に興味津々になると思うし、お前らが技術を提供するならWin-Winだし、好待遇してくれると思うぜ!」
ザルクも得意げに言った。
「オレを連れて行けば火力には困らないぜ!なんたってその気になれば無限に炎出し続けられるからな!」
カイラは「ありがとう!頼もしいよ!」と初めて彼らの前でにっこり笑顔を見せた。
アレキサンダー・ザルク
「ズッキューーーーン❗️かわわーーー❣️」
ザルクは鼻血を吹き出して倒れた。
「ま、待て。俺にはセイラがいる、セイラがいる…」
アレキサンダーはそう自分に言い聞かせて鼻血が出そうになるのを堪えた。
宇宙船内の温かい空気が、戦いの傷跡を癒す。リナが歌に合わせて踊り、部族と「ブルーホーン」の間に新しい絆が生まれた。カイラは微笑み、「これが新しい始まりだっ!」と言った。