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蒼星のレクイエム  作者: ノザキ千溜
灰燼(かいじん)の星編
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転星者

皆さん、初めまして!新作『蒼星の亡魂ブルースター・レクイエム』、いよいよスタートです!2025年の大学生・タクヤ(転星後はアレキサンダー)が、彼女とのドライブ中の事故で死に、異星の過酷な世界に転生!

「タクヤ、いい加減にしてよ!なんでいつもそうやって逃げるの!?」

彼女のヒステリックな声が車内に響く。2025年、6月の夜。俺、藤原タクヤ、大学2年生、20歳。助手席の七瀬星來(ななせせいら)がスマホを握り潰しそうな勢いで睨んでくる。首都高のネオンが窓を滑る中、俺のイライラも限界だった。

「逃げてねえよ!お前が勝手に騒いでるだけだろ!」

セイラの不満はいつものことだ。バイトのシフト、友達との飲み会、俺の適当な返事――全部が「タクヤは私のこと大事にしてない」って話に繋がる。今夜はこの前のドライブの約束をすっぽかしたのが火種だった。埋め合わせに夜景を見に連れ出したのに、こんなケンカに。

「もういい!降ろして!」

「ここ高速だぞ!落ち着けって!」

セイラがシートベルトを外そうと暴れる瞬間、対向車のヘッドライトが異様に近づく。トラックだ。カーブを曲がり損ねたか――?

「セイラ、危ねっ!」

ハンドルを切るが遅い。衝撃。ガラスが砕け、金属が軋む。セイラの悲鳴が途切れ、俺の意識は暗闇に落ちた。


目を開けると、焼けるような熱と灰の匂いが鼻を突いた。

「…ハッ!?」

体が重い。地面はゴツゴツした岩だ。見上げると、空は赤黒い雲に覆われ、遠くで雷鳴が唸る。星なんて見えない。首都高のネオンも、セイラの声も、ない。

「ここ…どこだ…?」

立ち上がろうとして、腕に違和感。見ると、灰色の鱗がびっしり。指は爪が鋭く、まるで爬虫類。慌てて体を確認すると、背中から太い尾が伸び、尖端に毒針みたいな突起が光る。

「何!?何これ!?」

心臓がバクバク鳴る。服はボロボロの布切れで、俺のいつものスニーカーやジーンズは跡形もない。鏡がないから顔は分からないが、触るとゴツゴツした皮膚と、額に小さな角みたいな突起。

「落ち着け…夢だろ…?」

地面を這うと、近くに赤い溶岩の川が流れ、熱波が肌を炙る。遠くには火山らしき影。空気は薄く、呼吸するたび胸が締め付けられる。こんな場所、地球にない。

「セイラ…!セイラ、どこだ!?」

叫ぶが、声は掠れて獣みたいだ。事故の記憶がフラッシュバックする。トラックのライト、セイラの悲鳴。俺、死んだのか…?いや、でもこの体は?セイラは?頭がぐちゃぐちゃだ。

その時、背後に気配。振り返ると、槍を持った影が数人。俺と同じ鱗と尾の姿だが、鎧を着て、目が赤く光る。言葉らしき唸り声が聞こえるが、まるで意味不明。

「おい、待て!俺は――」

槍の柄で腹を殴られ、息が止まる。次の瞬間、首に縄が巻かれ、引きずられる。抵抗する力もない。連れて行かれたのは、岩窟の集落。火の光で照らされた広場には、同じ種族が数十人。子供や女もいるが、皆が俺を敵視する目だ。

「何だよ、これ…!離せよ!」

言葉は通じない。広場の中央に縛られ、槍を突きつけられる。部族の長らしい老人が出てきて、俺の顔をじろじろ見る。唾を吐かれ、群衆が哄笑する。

「くそっ…何なんだよ…!」

絶望が胸を締め上げる。死んだと思ったのに、こんな地獄に放り込まれるなんて。セイラは無事なのか?あの事故で…いや、考えたくない。俺はまだ生きてる。生きてるなら、帰らなきゃ。地球に。あの青い海に、家族の笑顔に。

その瞬間、頭に映像が閃く。――波の音。夏の湘南のビーチ。セイラが笑いながら水をかけてくる。「タクヤ、泳ごうよ!」って声。母さんの手料理、父さんのダジャレ、大学の飲み会。あの日常が、遠く、でも鮮明に。

「地球…帰る…」

呟くと、部族の子供が石を投げてくる。額に当たり、血が滲む。いや、血じゃない。緑色の液体だ。この体、ほんとに俺じゃねえ…。

夜が来た。縛られたまま、岩壁に寄りかかる。空は相変わらず赤黒い。星は見えないけど、どこかに地球があるはずだ。あの青い星。セイラは…生きてるよな?俺が帰るまで、待っててくれよ。

遠くで足音。槍を持った若い男が近づく。俺と同じ鱗だが、筋肉質で、鎧に部族の紋様が彫ってある。目が光り、俺を値踏みするように見る。

「…オマエ、何者だ?」

聞き取れた。言葉だ。部族の訛りはあるが、理解できる。

「俺は…タクヤ。地球から来た。帰りたいんだ…」

男は鼻で笑う。「ジチュー?何だそれ。そんな星、知らねえよ。」

槍を地面に突き立て、男は言う。「ここは灰燼の星。生きるか死ぬか、それだけだ。オマエ、役に立つなら生かす。使えねえなら、溶岩に沈める。」

心臓が跳ねる。灰燼の星?地球じゃない…別の星に俺、飛ばされたのか?

「答えろ、タクヤ。オマエ、何ができる?」

男の目が光る。生きたい。帰りたい。地球に。セイラに、母に、父に、友達に。会いたい。

俺は拳を握り、鱗が擦れる感触を噛み締める。

「何でも…やる。生きて、必ず地球に帰るんだ!」

鱗と毒針の尾の体、溶岩と灰の灰燼の星…地球への執着を胸に、仲間と銀河を渡るダークファンタジー冒険譚が開幕!血戦、絆、喪失、そして衝撃の結末――タクヤは青い星に帰れるのか?挿絵は自分で描いてます!楽しみにしててください!初回3話一気公開、感想やブクマお願いします

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