第67話 数字の人間
おまけ話
この頃のAランクバトラーは現在の時より基準が低いため現在のAランクバトラーより弱い。
「おらおらおら!とっととくたばれ!」
人間による魔界への侵攻により、魔界への被害は尋常じゃないことになっていた。普通のスペックでは魔人が人間に後れを取ることなど絶対にありえない。だが、今回は突然の侵攻や人間が武装していたこともあり、徐々に魔人が押され始めていた。
魔人「くそ!人間ごときに!」
「ははは!これで俺も出世だ!魔界の王になるのは俺なんだ!」
そう言って、一つの集団のリーダー的な男が一人の魔人を倒そうと剣を振りかぶったとき、
?「腕を斬られても気づかないやつが、魔界で王になれるわけないだろ。」
「……え?」
いつの間にか、人間の腕は切断されていた。そのあまりの速さに、血が遅れて噴き出る。
「が、があああああ!う、腕が!」
男が腕を抑え悶え始める。その様子を見て、周りは唖然としたままその場に立ち尽くしていた。
?「騒ぐな。お前の耳障りな声が魔界に響くだろうが。」
その人物は、そのまま悶え続ける男の首を躊躇なく飛ばした。
魔人「な、何が起きてるんだ?」
魔人がその様子に気を取られていると、その場にいた人間たちが全員倒されていた。
?「よし、ここもいいか。」
その時、指にはめてあった指輪が光る。
魔人「あ、あなたは。」
その指輪は魔界の住民ならだれもが知っている家系の指輪だった。
魔人「ローズビア家長男、ベルザ様!?」
ベルザ「無事か。良かった。お前らも早く立て直しにかかれ。」
そう言ってベルザはその場を去った。
魔人「あれが最強一族の長男。とんでもないな。」
その頃、別のところでも激しい抗争が行われていた。
「魔界は我ら人間が統べる。お前ら魔人は用済みだ。」
冥府の門の前に大量の戦力が押し寄せてきていた。冥府が破壊されれば、封印されていた魔人や罪人が抜け出してしまう。そうなれば、魔界だけでなく現界にも影響が及んでしまう。そんなことも考えず、人間たちはどんどん攻め込んできていた。
シア「これはまずいかも。」
その時、上空からシアがその様子を眺めていた。一度両親と合流した彼女だったが、侵攻スピードがあまりにも速く、シアにも制圧の命が下ったのだ。
シア「まさかここまで多いとは。でもここは絶対抑えないと。」
シアはそう言って冥府の門の前に降りて人間たちの方へ振り向く。
「なんだ貴様は。」
シア「初対面なのに随分な態度だね。少しは敬意を払ったら?」
「魔人などに敬意を払うわけがないだろう。身の程を知れ。」
シアは人間の態度に苛立ちを覚えつつも、情報を聞き出そうと問いを投げかけた。
シア「あなたたちの目的は何?なんで魔界を侵攻するの?」
「教えると思うか?やれ。」
次の瞬間、後ろに控えていた人間たちが一斉に攻め込んできた。その数はざっと見ただけでも50人以上はいた。
「(Aランク以上のバトラーで編成されたチーム。たかが女の魔人一人に抑えられるわけがない。)」
この時代、まだ現界では魔人の詳しいデータが取れていなかった。魔人が現界に行く理由もなかったため、人間との戦闘なんて本当に少なかったのだ。ゆえに人間は魔人の強さを甘く見ていた。
シア「馬鹿ね。いくら人数をそろえても、次元が違うのよ。」
次の瞬間、シアが血を操り大量の小さな球体を作る。その大きさは汗粒ほどであったのにもかかわらず、凄まじいスピードで人間たちに突撃し、体を貫通した。そのすべては正確に急所を貫いていた。
「な!?」
その男は初めて気づいた。自身の判断は間違いであったのだと。しかし、時すでに遅し。目の前には大量の死体が転がり、目の前にはただ一人の女の吸血鬼が立っていたのだ。
シア「さて、質問に答えてもらおうかな。」
「ば、化け物が!」
男は恐怖しながらも、無数の魔力弾を放つ。だが、シアはそれを躱すことなくただゆっくりと歩いてきていた。
シア「少し痛い目にあってもらうしかないみたいだね。」
「な!(いつの間に?)」
その瞬間、既にシアは男の背後に来ていた。シアが加減をして蹴りを背中に放つと、男は凄まじい速度で吹き飛び、地面を転がっていき冥府の壁へと衝突した。
「が、が、」
シア「これで話してくれる気になった?」
「(なんだこいつ。次元が違いすぎる。)」
男はシアの強さの実感し、絶対にかなわない相手だと悟った。
「わ、わかった。話す。話すから、命だけは。」
忠誠心が全くないのか、その男は恐怖に負けてすんなり情報を話してくれる気になった。
シア「いい子だね。じゃあ今回の侵攻について詳しく……」
?「何も話すことなどないだろ?」
その時、離れたところから複数の足音がゆっくりと向かってくる音が聞こえた。
シア「!?(なんだこのオーラ。強者ともどこか違うオーラを感じる。)」
「(このオーラは。)ふ、フハハハハハ。無様な魔人よ。この勝負、俺の勝ちだ!この方々が来てくれたのなら人類の負けなどありえない!ははははは!がっ!」
次の瞬間、一つの細い魔力光線がその男の心臓を貫いた。男の体から力が抜け、体温が消えていく。
シア「……何者?」
シアが警戒をさらに強める。
?「我らは高貴なる人間なのだ。貴様のような下賤なものに名乗るなど、我らの名がけがれる。」
その人物たちの顔には漢数字で四、五、六と書かれていた。
四「魔人、そこをどけ。今どけば見逃してやらんこともないぞ。」
シア「おあいにく様。見逃してもらう気なんて毛頭ないから。」
四「そうか。残念だ。」
次の瞬間、シアの足元に魔法陣が展開されそこから複数の鎖が出現しシアの両腕と両足を拘束した。
シア「こんなもの!…え?(なんで、ちぎれない。)」
いつもなら簡単にちぎれたはずのその鎖は、なぜかちぎることが出来なかったのだ。
五「食らうがいい。」
次の瞬間、魔力で形成された剣が無数に現れて、シアの体に突き刺さった。
シア「があああああ!」
シアが痛みにより苦しむ。そのまま苦痛は続き、シアは鎖により抵抗できずただただ苦痛の表情を浮かべることしかできなくなった。
六「もうその辺でよいだろう。さっさととどめを刺して用を済ませようではないか。」
四「そうだな。では。」
その言葉と同時、シアを拘束していた鎖が消えた。それによりシアは解放されたが、もう立つこともできないほどボロボロだった。
シア「かはぁ。(こいつら、きっちり急所を外してきた。普段からいたぶることに慣れてるやつらの手口だ。)」
五「このまま放置していれば、魔人共も降伏するだろう。行くぞ。」
その三人は、シアにとどめも刺さず横を通り過ぎようと再び歩き出したとき、
シア「ま、待ちなよ。」
五「何?(あの体でまだ動けるのか?)」
シア「こっから先は通さない。通りたいならまず私を殺しなさい。」
シアはそう言って戦闘の構えを取る。
四「全く。苦痛が長引くだけだというのに。」
次の瞬間、四がどこからか短剣を取り出し、シアへと突っ込んでいく。
シア「(これくらいなら反撃できる!)」
シアが四の攻撃を皮一枚で躱し、カウンターを返そうとした時、
シア「ぐっ!(傷が…)」
四「さらばだ。愚かな魔人よ。」
その一瞬の隙をついて、四が再び突きを放った。その突きは無情にもシアの胸を貫通してしまったのだ。
五「終わったな。」
短剣を抜かれたシアが力なく前のめりに倒れる。
六「早く行くぞ。」
四「わかっている。」
そうして3人がそのまま冥府へ行こうとした時、突然凄まじいオーラが発せられる。
五「!?何だこのオーラは。」
3人が咄嗟に後ろを振り向くと、そこには1人の吸血鬼がいた。
ベルザ「やってくれたなお前ら。綺麗に死ねると思うなよ?」
次回
ベルザの過去編がついに終わる。




