第65話 吸血鬼の日常
過去編突入
今から遡って約1000年以上の話。魔界のとある一族で、とんでもない子供がいるという噂が流れた。
「お、おい。聞いたか?あのローズビア家でとんでもない奴が生まれたらしいぞ?」
「まじかよ。ただでさえ手が付けられないのに。このままどうなっちまうんだ?」
その頃、ローズビア家では
ベルザ「あはは、楽しー!」
吸血鬼「べ、ベルザ様!家の中で暴れるのはおやめください!」
当時のベルザは人間世界でいうところの高校生2年生ぐらいの年だ。その頃は自身の持つ力を振るうのが楽しくなっていてよく家を破壊する勢いで暴れていた。
セロ「お兄さま!あんまり暴れては、わが一族の名に傷がつきます。大人しくしてください!」
セロがベルザを止めるために呼び掛けて止めようとする。(ちなみにセロは、中学3年生くらい。)
アルドフ「ふぁーーー。何だよまた兄貴が暴れてるのか?」
セロ「ええ、まったく困ったものです。」
ベルザ「ははははは!誰も俺には勝てないんだ!」
そう叫びながらベルザが暴れていた時、
?「何してんじゃあー!」
奥から現れた何者かが、ベルザに向かっていき思いっきりげんこつを放つ。
ベルザ「いったー!」
そう言ってベルザが吹き飛ばされ、壁にめり込む。
ベルザ「あ、が。」
?「全く。朝っぱらから勘弁してよ。」
セロ「おはようございます。シア様。」
彼女の名前はシア。ベルザの幼馴染であり、よく家に来ていた。
ベルザ「痛った。何するんだよ。」
ベルザはそう言いながら、頭を押さえて立ちあがる。
シア「何するんだじゃないでしょ!またベルザはそうやって暴れるんだから。」
ベルザ「別に暴れるくらいいいだろ。」
シア「よくないから止めてるんでしょ!」
セロ「はぁ。ところで、ジークレインは?」
アルドフ「まだぐっすりだ。起こしてくる。」
ベルザは今とは違い、荒々しくプライドが高そうな性格だった。それをシアが抑え込み、セロとアルドフはその光景に見飽きていた。(ジークレインは眠りが深く、その光景を見るのは稀だった。)
ベルザ「それで、今日は何しに来たんだ?」
朝食を食べながら、ベルザが問いかける。
シア「あ、そうだった。実は、最近異様に魔界に来る人間が多いからちょっと調査して来いって。」
ベルザの父親は、圧倒的な完璧主義。それは当たり前のように子供にまで要求され、ベルザほどの年齢となれば、大人の吸血鬼と同じほどの仕事をさせられるのだ。
魔界における仕事の種類は、大まかに二つある。一つは、魔界で起きた異常の調査や解決。二つ目は、魔界の果てにある『冥府』での仕事だ。多くの魔人や悪魔が後者の仕事をするが権力のあるものや、力のある種族、家系が前者の仕事をする。
ベルザ「はーったく。いい加減仕事を振るのはやめてくれってのに。」
シア「まあ今回は調査だけだから、まだ楽な方でしょ。」
セロ「この前は鬼たちとの抗争を止めてましたもんね。中々大変だったと聞いてますよ。」
ベルザ「あれは子供に任せるものじゃない。」
そうして朝食を食べ終え、二人は支度を始める。
ベルザ「じゃあ、行ってくる。」
シア「セロくん、よろしくね。」
セロ「お任せください。」
セロやアルドフはよく家の警備を任されていた。二人が仕事をすることもあるが、危険なものは基本ベルザが任されていた。
ベルザ「で、またついてくるのか。」
シア「私だって行きたくて行くわけじゃないよ。」
シアの家系も魔界では有力な吸血鬼だ。それに、ベルザ達とは昔から仲がいいため一緒に仕事をすることが多かった。
ベルザ「で、人間はどこから来てるんだ?」
シア「えーっと、冥府近くだって。」
ベルザ「はぁ?ならなんで俺らが行かなきゃいけないんだ?」
冥府の近くで起きた異常は、基本的には冥府の奴らが対処するはずなのだ。
シア「そのはずなんだけどね。そこらへんは詳しく言われてなくて。」
謎は残りつつも、二人は冥府へと向かったのだった。
その頃、冥府ではとある人物が冥府を訪れていた。
夜闇「(べラスが言ってたのはここら辺だが…)」
それは夜闇だった。戦力を増強するべく、魔界で強者を探していたのだ。
?「おい、お前。何者だ?」
その時、後ろから声をかけるものがいた。
夜闇「名前を聞くより、自分が名乗る方が先じゃないのか?」
?「(こいつ。凄まじいオーラだ。)……俺は七大悪魔の一人、ルシファーだ。」
夜闇「おお!まさかそっちから出向いてくれとはな!」
その名前を聞いた瞬間、夜闇は喜びの顔を見せる。
夜闇「俺はお前らを探していたんだ。七大悪魔。お前らを勧誘しに来た。」
ルシファー「何?勧誘だと?」
その言葉を聞いたルシファーは怪訝そうな顔を見せる。
ルシファー「馬鹿なこと言うな。我々七大悪魔は誰にも縛られない自由な存在だ。誰かの下につくなんてありえない。」
そう言ってルシファーがその場を立ち去ろうとした時、夜闇が再び話しかける。
夜闇「知ってるか?最近冥府の番犬が消えたらしい。」
その言葉を聞いたルシファーの足が止まる。
ルシファー「……それがどうした?」
夜闇「その犯人が俺だとしたら?」
夜闇は突然そんなことをいうものだから、ルシファーは驚きの表情をみせる。
夜闇「流石に俺もいきなり仕えろなんて言わないさ。だが、一度本拠地に来てみてくれないか?」
ルシファーは最初こそ疑心暗鬼だったが、冥府の番犬の件は魔界でも大事件とされている。そんな事件の犯人という異常性に、次第に興味がわいた。
ルシファー「……いいだろう。誘いに乗ってやる。ただし、一つ条件がある。」
夜闇「?なんだ?」
ルシファー「あともう二人、連れて行きたい奴らがいる。」
夜闇はその条件をのみ、ルシファーはある二人を連れてきた。
サタン「急に呼び出したかと思ったら、んだよこいつ。知らねえ奴だな。」
ベルフェゴール「めんどー。」
それこそが、サタンとベルフェゴールだ。
夜闇「(七大悪魔三人を勧誘のチャンスか。ついてるな。)よし、じゃあ行くか。」
こうして、夜闇はこの三人を連れて行ったのだった。
ベルザ「いつ来てもいい気はしないな。」
その頃、ベルザ達は冥府の入り口へと来ていた。そこには、見知らぬ魔人が立っていた。
魔人「お前ら、何者だ?」
ベルザ「ん。これ。」
そう言ってベルザは、ローズビア家を証明する指輪を見せた。
魔人「ろ、ローズビア家長男、ベルザ様!?これは失礼しました。」
そう言って魔人が膝をついた。
シア「相変わらずの影響力ね。」
ベルザ「こういうところは楽なんだよな。で、ちょっと聞きたいことがあるんだ。」
そこでベルザは自身たちが任された仕事について話し、何か情報がないか聞きだした。
魔人「人間の出現ですか?こちらにはそんな情報来ていませんよ。」
ベルザ「そうか。なら、しばらくここら辺を注意して見張っててくれ。」
魔人「かしこまりました。お任せください。」
そう言って、二人はその場を去った。
シア「で、この後はどうするの?」
ベルザ「他のところにも人間が出てくるかもしれない。魔界と現界の穴を探すぞ。」
そうして2人は二手に分かれて捜索を始めた。とは言っても、探すのは冥府の周辺のみなためすぐに終わるはずだった。
シア「見当たらないわね。まぁある方が珍しいけど。」
「はぁ、はぁ。た、助けてくれ!」
その時、シアの前から1人の人間が走ってきた。そいつはとても怯えていて、何かから必死に逃げてきていた。
「捕まえたぜ。さぁ、その肉体をよこせ!」
後ろからは、冥府から抜け出した魂か追ってきていたのだ。その魂は、男の中に入り込み、取り憑くことに成功した。
「ヒャッハー!これで晴れて自由の身だぜ!」
シア「まーたこういうことするバカが増えてるのかな?」
「あ?んだとてめえ。」
シアが少しずつ近づきながら煽る。その言葉に男が怪訝な表情を見せる。
「ちょうどいい。体も手に入れた事だし、お前で憂さ晴らしさせてもらうぜ。」
シア「相手の力量も見破れないなんて。ほんとにバカなんだね。」
次回
シアの実力が明らかに。




