第62話 真の力
敵の力が開放される。
「今日の体調はどうですか?」
「お陰様で元気いっぱいじゃよ。今からでも退院したいくらいじゃ。」
とある病室でお年寄りの診察が行われていた。その方はぎっくり腰になってしまい、病院で入院することになっていた。
「このまま安静にしていれば、1週間後には退院できますよ。では。」
そう言って医者が部屋を出ようとした時
ドゴォン!!
「うわぁ!」
「なんじゃあ!?」
突然上の階で爆発音のような音が聞こえ、窓を見ると、瓦礫が落ちていたのが見えた。
「あいたたた。こ、腰が。」
「だ、大丈夫ですか?」
医者が老人に駆け寄りながら、何が起きたかを考えていた。
「(事故か?いや、そんな事が起きるものは置いてない。一体何なんだ?)」
その答えは、外にいるとある人達が原因だった。
咲「ったく。危ないでしょ。病院に穴も開けちゃったし。」
サタン「あんな狭いところじゃイライラしてしょうがねぇからな。」
べルゼブブ「そんな事より、自分の身の安全を心配するんだな。」
咲と2人の悪魔が対立し、互いに臨戦態勢に入る。
隼司「咲、俺も加勢する。真鍋さんは先生方を安全なところに!」
真鍋「わかった。すぐに戻る。行くよ、みんな。」
そうして怪我人を真鍋さんが連れて行く。サタンとベルゼブブはそれを追おうとはしなかった。
ベルゼブブ「あいつらいい。目的はお前らだからな。サタン、好きに暴れていいぞ。」
サタン「言われなくて殺らせて貰うぜ。」
次の瞬間、サタンが隼司へ向かって突っ込んでいく。
隼司「うぉ!(速い、対応出来るか?)」
隼司が防御体制をとり、サタンを迎え撃つ準備をする。
サタン「がっかりさせるなよ?」
その瞬間、凄まじいラッシュが隼司を襲う。その全てが命を絶てる程の凄まじい威力を持っていた。
隼司「がっ!ぐっ!(えぐいな。直撃したらやばい。集中しないと終わる!)」
サタン「ほう、俺のラッシュを防ぐか。おもしれぇ。」
サタンの顔に笑みが浮かぶ。 その瞬間、ラッシュの勢いが増した。
隼司「くっ!(まだ上があるのか。)」
隼司の顔が少し曇るが、何とか対応していた。
ベルゼブブ「やっぱりあいつは好きに暴れされるのが1番いいな。さて、こっちも始めるか。」
そう言ってベルゼブブが短剣程の大きさの針を2本取り出した。そして2本の持ち手の裏側を繋ぎ合わせると、その針は禍々しい双頭槍となった。
咲「(前とは何か違う。)なんでお前らが手を組んでるの?」
ベルゼブブ「こちらにも事情があるんだ。それに、これから死ぬやつに教える気もない。」
次の瞬間、ベルゼブブが自身の眷属を召喚し、こちらに向かわせる。
咲「相変わらずめんどくさいね!」
そう言いながら咲は吸血鬼化を発動して、ベルゼブブの眷属を次々と倒していく。
ベルゼブブ「こいつらに気を取られてる様ならすぐに終わりそうだな。」
その間にできた僅かな隙をついてベルゼブブが突きを放つ。
咲「くっ!(気配もないし、前より速いような。)」
しかし咲は何とかサイドステップを踏んだ。だが、躱しきれず横腹が薄く切れてしまった。
ベルゼブブ「なかなかの反応だが、やはりその程度か。」
咲「舐めないでもらいたいね。」
そう言うと、咲の切り傷が治っていった。
ベルゼブブ「......なるほど。セロを殺っただけはあるな。」
咲「じゃあ、今度はこっちから行こうかな。」
次の瞬間、咲がベルゼブブへ突っ込んでいく。
ベルゼブブ「(なかなかの速さだ。気は抜けないな。)」
そのまま凄まじい斬り合いが始まる。咲は腕にある爪の手甲で切り裂くために距離を詰めようとするが、ベルゼブブの双頭槍によりなかなか詰められずにいた。
反対にベルゼブブもリーチを活かして攻めようとするが、俊敏さで勝る咲の防御を崩せずにいた。
ベルゼブブ「!!(そうか。そろそろか。)」
突如、ベルゼブブが距離をとるためにバックステップを踏む。
咲「どうしたの?もしかして、怖気付いた?」
ベルゼブブ「そんな挑発にはのらないぞ?見せてやろう。七大悪魔の真の力を。」
その瞬間、ベルゼブブのオーラが変わった。そのたたずまいはまるで自身が王であると主張するようであった。
ベルゼブブ「これからだ、簡単に死ぬなよ?」
その頃、この戦闘は苛烈さを極めていた。
べラス「やはり雷神!なかなかやるな!」
雷斗「よくしゃべる口だな。さっさ閉じるとするか。」
二人の猛者による生きるか死ぬかの戦闘。辺りの建物への被害は広がり続け、その戦闘は並みのバトラーであれば近くにいるだけで気を失ってしまう。
湊「なんだよ…これ。(一瞬でも気を緩めると魔力の衝突の圧力で気を失いそうだ。誠一郎の怪我もやばい。早く病院に行かないと。)」
倒れている誠一郎を見て、湊が回収に動く。
湊「『影移り』」
湊が影の中にもぐり、誠一郎の近くに移動する。そして誠一郎を抱えてこの場から離れようとした時、
べラス「させるわけないだろ。」
べラスが湊へ二匹の狼を向かわせた。その狼は、普通の狼よりも一回りほど大きかった。
湊「くっ。(こいつらの相手をしてたら誠一郎の時間がない。なら!)」
次の瞬間、再び湊が影の中に消えた。狼はにおいをかぎ、追おうとするがその姿を捕らえることはできない。
湊「この時間帯は、俺の時間だ。」
戦闘自体が始まったのは夕方。辺りはすっかり夜になっていた。つまり、夜にさえなれば湊は様々な場所に移動できるようになるのだ。
湊「(速く。もっと速く移動しろ!このままこいつを死なせてたまるか!)」
そして湊はその場を去った。
べラス「へえ、あんなものを隠してたなんてな。侮れないやつだ。」
べラスが一度距離を取り、狼を取り込む。
雷斗「(あの狼たち。そしてこいつの戦闘力。氷華の考えは当たってそうだな。)にしても、流石は『冥府の番犬』だな。ここまでとは思わなかった。」
べラス「…お前、どこでそれを?」
べラスの顔が曇り、少し不機嫌そうになる。
雷斗「勘だよ。てか、そんな事教えるわけないだろ。(はったりを仕掛けてみたが、ビンゴみたいだな。)」
べラス「なら、お前には全力を出してやろう。」
次の瞬間、べラスの体から動物のような毛と三本の尾が生え、その姿はまるで動物が擬人化したような姿だった。
べラス「俺のこの姿を見て、生きて帰れると思うな?」
次の瞬間、べラスが凄まじい踏み込みを見せる。その踏み込みはさっきまでの比にならなかった。
雷斗「なっ!(こいつ、さっきとは何もかも違う!)」
べラス「くだけろ!」
そのまま掌底が雷斗に突き刺さる。そのあまりの威力に地面の一部が沈み、雷斗は後方に飛んでいった。
雷斗「がはぁ!(腕を挟んで吐血?ばかげてやがる!)」
べラス「確かにお前は速いが、それだけで勝てるほど戦闘は甘くない。」
雷斗が吐血しながら膝をつく。べラスが迫っているが、自身と互角に近い敵との激しい戦闘により、体力も魔力も削られている。もう長くはもたないことは両者わかっていた。
雷斗「(…やはり、もうあれを使うしか。)」
雷斗が覚悟を決め、最後の切り札を使おうとした時、
?「何してるんだお前!」
べラスの頭上から火の雨が降り注ぐ。
べラス「何?(時間をかけすぎたか。)」
べラスは降り注ぐ炎を躱しながら、その範囲から抜け出す。
べラス「流石に来たか。」
燐「私の仲間にここまで馬鹿なことしたのは、お前が初めてだよ。」
そこには、後から追いついてきた炎神の暁燐だった。燐は既に雷斗の近くに来ていて、雷斗と入れ替わる形でべラスと向かい合う。
べラス「勝手に割り込んだのはそいつだ。俺は迎え撃ったまで。」
燐「んなことは関係ねえよ。何であろうと、私の仲間を傷つけるやつは許さない。」
そうして燐が迎え撃つ体制を取る。
べラス「(万全の炎神と今やり合うのは危険だ。魔力切れで負けるのが目に見える。)」
次の瞬間、べラスが魔界への穴を開く。
べラス「誠一郎だったか?あいつは助からないだろう。雷神もしばらくは戦線離脱だ。今日はここで失礼する。」
燐「ふざけんな!逃がさねぇ!」
燐が追おうとした時、
雷斗「かはぁ!(肋骨が5本はいったか?血が止まらない。)」
雷斗が激しく吐血する。本来一撃でも食らえば即死のべラスの技を受け続けた雷斗の体は、もう限界だったのだ。
燐「雷斗!(くそ!このままじゃやばいな。)」
べラス「今度は必ず殺す。じゃあな。」
そう言ってべラスは去っていった。
燐「雷斗、しっかりしろ。」
雷斗「燐。すまん。」
意識を失いかける雷斗を燐が運ぼうとした時、
燐「ん?なんだあいつら。」
燐の目に二人の倒れ伏す人が見える。そこには、湊と誠一郎に敗れた匠と鉄郎であった。
燐「こいつら、まさか国が選んだっていう新しい四神か?だとしたらあいつら目を変えた方がいいぞ?」
水葉「燐!お待たせ。」
その時、遅れてきた水葉と風露が合流した。
風露「この人たちは?」
燐「多分国が選んだ四神たちだ。このままは流石にやばいから、二人とも頼めるか?」
水葉「わかった。任せて。」
こうして、三人はそれぞれが怪我人を抱えながら病院へと向かったのだった。
次回
第5章最終話




