第60話 全身全霊の決着
各々の力が最大限発揮される。
碧「じ、神宮寺。どうしてここに。」
突然助太刀に来た神宮寺に対し、碧が倒れながら問かける。
神宮寺「湊から呼ばれてな。見舞いの品を買うために集合したはずだったんだが、来てみたらこんなことになってたんだ。」
綿谷「仲良く話してる場合か?」
綿谷がそう言うと、再び大量の火球を作り出し、神宮寺へと向けて放った。
神宮寺「こんなもので止められるか!」
神宮寺はそう言うと、能力を発動し、体の一部を龍のようにした。言うなれば、『半龍化』である。
神宮寺「炎なんか効くかよ。」
綿谷「ほう(かき消された。なかなか優秀だな。)」
神宮寺は背中から生えた羽で風を起こし、火球をかき消してみせたのだ。
碧「気をつけて神宮寺。そいつのぬらりひょんは私のとは格が違う!」
本来、ぬらりひょんを憑依させていられる時間は少ない。その強力さ故に負荷も大きいからである。だが、綿谷は驚異的な魔力により、その欠点を埋め、それどころか新たな能力の解放まで至ったのだ。
綿谷「ぬらりひょんのポテンシャルは他の妖怪と比べても最高クラスだ。お前程度ではそのポテンシャルを発揮できないだけの話だ。」
碧「くっ!(悔しいけどその通りだ。私なんかじゃ出来ない。)」
神宮寺「だからなんだ。」
碧「!?」
その時、神宮寺が意義を唱えるように綿谷に言う。
神宮寺「どんだけ才能がなくても、どんだけ今が弱くても、努力を惜しまず少しでも強くなろうとするやつを無下にするのは、誰であろうと、この 神宮寺龍青が許さない。」
綿谷「ふん、綺麗事を。」
神宮寺「なら、その綺麗事やらでお前をねじ伏せてやろう。」
その頃、観月と椎名は綿谷の妖怪と戦闘を繰り広げていた。
観月「くっ!(流石の実力。我の才能でも捌ききれぬとは。)」
観月はかまいたちの斬撃により、徐々に体を削られていた。
椎名「何こいつ!(捉えきれない!)」
椎名は鵺を捉えようと忍者刀を振り続けるが、まるで全て見透かされてるかのようにことごとく攻撃を躱されていた。
椎名「これ、ちょっとキツいかもね。」
観月「強者との戦闘こそ、我らを成長させる。」
観月と椎名が背中を合わせる。
椎名「......ねぇ。こうやって背中合わせた時のこと、覚えてる?」
観月「.....無論だ。」
椎名と観月。この2人は幼少からの知り合いだった。2人の両親が元から仲が良く、その影響で2人が会うことも多かった。
椎名「ねぇねぇ。どうしてずっと刀を振ってるの?」
観月「我が才能を伸ばすため。」
椎名はずっと刀を振り続ける観月に少しずつ興味が湧いていた。様々な技術を取り込む椎名とは違い、刀のみに全力を尽くす観月。2人は対象的な存在だった。
椎名「観月、私こんなのもできるんだよ!すごいでしょ。」
観月「確かにすごいな。我にはできぬ事だ。」
観月も、そんな椎名に関心を持っていた。そんなある日、突然魔物の大群が辺りを襲った。
「くそっ!何匹いるんだ!」
大人達が応戦するも、多勢に無勢。少しずつ押されて行った。そしてとうとう、魔物が幼い観月や椎名にまで迫っていた。
「響也!香純!」
大人が向かうが、時すでに遅し。誰もが終わったと思った時、
観月「はぁ!」
観月が持っていた短刀で魔物の首を切り落としたのだ。
椎名「えい!」
それに続いて椎名も手裏剣やくないを投げる。その全てが正確に核を捉えていた。
観月「行くぞ、香純。」
椎名「わかったよ。響也。」
そこから2人は襲ってきた魔物達を次々と倒していった。その連携はお互いをよく知る2人だからこそ成せるものだった。
この一件以来、2人はタッグで魔物を倒してきた。だが、入学試験の時、生徒が組むことが禁止されて以降、2人は個々での成長を選んだ。
椎名「あの時の感覚、まだ覚えてる?」
観月「分からないが、このままでは厳しいだろうな。」
2人の考えは一致していた。
観月「また、背中を預けてもいいか?香純。」
椎名「もちろん。よろしくね。響也。」
次の瞬間、椎名が炸裂弾を鵺へと投げる。
椎名「弾けとんじゃえ!」
その言葉と同時、炸裂弾が爆発し、辺りが煙で覆われる。
観月「ここは我らの土俵!」
それと同時、観月がかまいたちに向かって凄まじい踏み込みを見せた。
観月「はぁぁぁ!」
観月が渾身の横なぎを放つ。かまいたちはその斬撃をギリギリで受け止めた。だが、
観月「そんなもので止まるか!」
観月は強引に刀を振り切る。それによりかまいたちは後方に飛んで行った。
椎名「いらっしゃい。」
飛んで行った先には既に椎名が待ち構えていた。
椎名「くらえ!」
椎名が空中のかまいたちへ突きを放つ。その突きは見事にかまいたちの胸を貫いていた。かまいたちは、力が抜けるように腕をおろし、黒い煙となって消えた。
椎名「さて、次は。」
椎名が鵺を方へ向かおうとした時、既に鵺は椎名の後ろにいた。
椎名「(やばっ!やられる!)」
椎名がそう思った時、
観月「我から目を切るとは。愚かな。」
観月が居合の構えを取っていた。鵺は既に刀の間合いに入っていた。
椎名「相手が悪かったね。」
椎名がそう言ってバックステップを踏んた瞬間、
観月「さらば。」
観月の居合が鵺を捉える。上下分断された鵺はかまいたちの時のように黒い煙となって消えた。
観月「我らの勝利だ。」
観月がそう言って刀を納める。
椎名「やっぱりこれがしっくりくるね。」
椎名がそう行って肩を組む。
観月「相変わらずだな。お前は。」
こうして2人は、2体の妖怪を倒すことに成功したのだった。
だが、窮地に立つ者もいた。
誠一郎「ぐぅぅ!(防御壁が。)」
べラス「確かに硬いが、壊せない程じゃない。」
誠一郎はべラスに追い詰められていた。玄武を解放したが、戦局は変わらず、打開策を見いだせずにいた。
誠一郎「(こうなったらこっちも攻めるしか!)」
次の瞬間、誠一郎が全身をゴリラに統一させる。
誠一郎「ぐ、がぁぁぁ!」
べラス「ほう。(意識を断つことで爆発的な力を得ましたか。なかなか思い切ったことを。)」
誠一郎が自我を失い、本能のままに襲いかかる。
誠一郎「がぁぁ!」
べラス「はぁ!」
べラスは振り下ろされた腕を上段受けで受け止めた。だがそのあまりの力に地面が少し凹んだ。
べラス「確かに凄まじい力だが、直線的だ。」
べラスはそのまま流れるように懐に入り込み、発勁を放つ。
べラス「砕け散れ!」
誠一郎「ぐがぁぁ!」
まともに受けた誠一郎が後ろに吹き飛ぶ。それにより、ゴリラの力も解除された。
誠一郎「がはっ!(骨が何本かやられたか。)」
べラス「もういいだろ。よく頑張った方だ。終わりにしよう。」
べラスが徐々に歩み寄る。
誠一郎「.....はっ、やなこった。」
誠一郎が震える足で立ち上がる。
誠一郎「(もうほとんど魔力が残ってない。なら、これに全てをかける。)」
次の瞬間、誠一郎は再び全身を統一させる。その動物とは
誠一郎「これが俺の最後の力だ。これでお前を倒す!」
べラス「(この魔力出力!嘘ではない!)お前程のやつは久しぶりに見る。名前を言ってみろ!」
誠一郎「松風誠一郎。お前が最後に聞く名前だ!」
そう言って誠一郎は全身を朱雀に統一させた。その姿はまさに不死鳥の如く赤い炎に包まれていた。
誠一郎「がぁぁぁ!」
誠一郎が自身の体に炎を纏わせ、全力の突撃を見せる。それは、現状の彼にとって最強の奥の手。
誠一郎「これで終わりだ!」
べラス「これは......」
誠一郎とべラスは激しく衝突し、辺には爆炎が舞い上がった。
湊「はぁ、はぁ。(手こずった!急がないと。)」
湊は追っ手を退け、誠一郎の元へと向かっていった。その時、
ドゴォン!
湊「!?」
突然激しい衝突音と同時に、爆炎が舞い上がったのが見えた。
湊「あそこか!」
湊はその場所目掛けて全速力で向かった。
湊「(あの炎。まさか誠一郎が?そんな力が。)誠一郎!」
到着した湊が煙の中心地へ声を放つ。徐々に煙が晴れていき、そこに1つの人影が見えた。
湊「よかった。大丈夫....か....」
煙が晴れ、そこに立って居たのは
べラス「素晴らしかったぞ。まさかこれを使わされるとはな。」
そこには倒れ伏す誠一郎と服が燃えながらもその場に立っていたべラスだった。
湊「!!!」
誠一郎の方を見ると、力なく倒れ、もう動けないことはすぐにわかった。
湊「べラス!貴様ァ!」
湊が怒りをあらわにして影を操る。
べラス「おお、まさかお前から来てくれるとは。運がいいな。」
べラスが湊に向かって踏み込もうとした時、
ドゴォン!!
べラス・湊「!!」
2人の間に何かが落ちてきた。いや、これは、
"降りてきた"
と言うべきか。
?「国の奴らにもイライラしてるが、お前は許せない。」
湊「あ、あなたは。」
べラス「(面倒なやつがきた。)」
雷斗「このクソ野郎が。お前はここで斬り捨てる。」
次回
雷神の助太刀
そして、夜闇と氷華は.....




