第56話 八聖人
知鶴たちが襲われていたころ、彼らは会議をしていた。
知鶴が目を覚まして一週間がたった。あれから穂乃香も目を覚まし、とりあえず峠を越えることはできた。だが、かなりの深手であり当分の間は入院を余儀なくされた。
咲「雫ちゃん、腕の調子はどう?」
雫「うん、良くなってきたよ。このままいけばすぐ復帰できるかな。」
雫ちゃんの腕も回復の傾向にあり、すぐに復帰できそうだった。
知鶴「穂乃香、病院食飽きたよ。なんか作ってよ。」
穂乃香「お任せください。すぐにお作りします。」
咲「いや、動いちゃだめだよ。ステイステイ。」
動こうとする穂乃香を私が静止していた時、
?「失礼するよ。」
病室の扉を開き、入ってきた人がいた。
冬季「具合はどう?二人とも。」
それは、国から呼び出されていた冬季だった。
咲「冬季、帰ってきたの?」
冬季「ああ、やっと長い話が終わってね。」
知鶴「傷は深いけど、何とか平気よ。」
穂乃香「私もです。」
冬季「そっか。」
その時、冬季のこぶしは強く握られていた。
知鶴「ねぇ冬季。良かったら何の話だったのか聞かせてよ。」
冬季「……そうだね。教えてもいいかな。無関係じゃないしね。」
冬季は少し悩んだ様子だったが、申し訳なさが勝ったのか話してくれた。
知鶴たちが襲撃されたころ、同時に氷華(冬季)たちは国の偉い人たちに呼ばれていた。場所は極秘の会議室で、冬季たちとその担当である拓真さんしか知らない。
燐「相変わらず暗いところだな。」
雷斗「電気走らせるか?」
水葉「やめとなよ。ここの人達冗談通じなんだから。」
風露「というか、氷華まで呼ばれるなんて珍しいね。」
氷華「ああ、そうだな。」
その時、電球の一つ一つがつきその下に人影が出てきた。
?「来たか。」
氷華「久しぶりだね。八聖人さん。」
八聖人。この世界の最高権力者たちだ。自分たちこそが能力を生み出した本人であるといいっているが、その信憑性はあまりなさそうだ。
一「最近、ずいぶんと動きが見えるな。」
八聖人は自身の顔を見せようとはせず、顔の前には布がかかっていて、それぞれに数字が書かれていた。
氷華「そっちが仕事を振るから動いてるだけだが?」
二「ふん。相変わらず口の利き方がなってないやつだ。というか貴様は、我々の指示にないことはするなと言っていたはずだが?」
氷華「そんなこと言ってたら、守れる命も守れない。少しは妥協してくれ。」
四「まあその辺にしとけ。そろそろ本題に入ろう。」
次の瞬間、こいつらの口からとんでもないことを言われる。
一「単刀直入に言う。柊咲を差し出せ。」
氷華「………は?」
氷華が今から襲い掛かる勢いで八聖人を見つめる。
水葉「氷華、落ち着いて。どういうつもり?」
水葉が氷華を抑えながら、八聖人に問いかける。
三「今狙われているのは、ベルザという吸血鬼が住み着いているその女の子が原因なんでしょう?」
五「ただでさえ謎の組織による襲撃があるのに、魔界から吸血鬼が狙われるなんてたまったもんじゃない。」
六「だからこそ、その娘を差し出してお前らにその組織に集中してもらう。」
燐「ふざけんな!お前ら人を駒のように使いやがって。倫理観とかねえのか!」
燐が怒りをあらわにしながら怒鳴る。
七「何を言うかと思えば。」
八「我らはこの世の最高権力者。我々が何をしようが庶民に拒否権はない。」
風露「……ずいぶんですね。そんなことを私たちが聞くと?」
四「聞かないなら、こちらも駒を動かすだけだ。」
水葉「私たちに勝てるとでも?」
五「全く。これだから戦脳は。」
三「別にほかの手はいくらでもあるのよ?」
雷斗「どこまで腐ってやがる。」
二「何を言おうがお前らにできることはない。それにお前らは"あの"一件以来、信用を落としている。あんなこともできないようじゃ……」
氷華「!!!!!!!」
次の瞬間、氷華が二へと突っ込んでいく。
水葉「あっ!(しまった!)」
そのまま氷華が二を殴るかと思ったが、
二「なっ!」
氷華「………邪魔するな。雷斗。」
雷斗「気持ちは分かるが落ち着け。(何とか間に合った。)」
ギリギリで雷斗が止め入ったことで何とか攻撃は防がれた。
氷華「………くっ!」
氷華が渋々こぶしを下す。
五「やはりお前は危険だ。しばらく大人しくしてろ。」
その時、氷華の電話が鳴った。その電話は私たちが襲撃を受けたことを伝える電話だった。
氷華「……何?」
その時、氷華が血相を変えて会議室を飛び出した。
燐「あ、おい!待てよ!」
雷斗「ちっ!(さっきより早い!)」
水葉「追うよ!」
後から四人が追いに会議室を出た。
一「もはやあいつらは使い物にならないな。やはりこっちで手を回そう。」
冬季「ってことがあったんだ。」
知鶴「この国のトップがそんなに腐っていたなんて。」
ベルザ「………」
雫「咲さん。」
咲「心配しなくてもいいよ。私は自分をおとりにする気なんてないよ。」
この思いが変わることはない。絶対にだ。
咲「あとベルザ。私はあなたを住み着かせたことも、後悔したことはないよ。」
ベルザ「そうですか。ありがとうございます。」
冬季「っと、そろそろ時間だ。また来るよ。」
そう言って冬季は病室を出た。
冬季「(いつかはあのことも言わなきゃな。)」
ルシファー「べラス、ちょっと出てくる。」
べラス「?いいけど珍しいな。」
ルシファー「まぁちょっとな。」
そういってルシファーが向かった先は、魔界のとある荒野だった。
ルシファー「……何の用だ。」
ベルゼブブ「少し話でもと思ってな。」
次回
ベルゼブブの話とは?




