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第23話 本物の吸血鬼

怒りのままに、咲が反撃する。

 ハスター「(何が起きたのかはわからないが、やはりこいつは危険だ。早く始末しなければ。)いい加減鬱

 陶しい!」


 そう言ってハスターが湊を吹き飛ばす。


 湊「ぐっ!」


 ハスター「さぁ、貴様もあの世に行くがいい!」


 そう言ってハスターが咲に風魔法の斬撃を放つ。


 咲「(こんなものどうにでもなるが。)」


 咲は血液を操り、同じように斬撃を飛ばした。その斬撃はハスターの斬撃と相殺した。


 ハスター「何!?(何故私の斬撃が相殺された。そんなはずは)」


 咲「.....」


 咲は何も言わず、そのままハスターへ突っ込む。


 ハスター「(速い!だが私の防御魔法は壊せまい。)」


 ハスターは私との間に防御魔法を幾つも展開した。だが、


 咲「(邪魔)」


 咲はそれを突進で破壊する。


 ハスター「馬鹿な!(先程まで傷1つ付けられなかったというのに。ただの突進ごときで!)」


 咲「死ね。」


 その時、咲は既にはハスターの目の前にいた。


 ハスター「まずい!」


 咲がハスターへ渾身の蹴りをくらわせる。


 ハスター「がはぁ!」


 その威力は凄まじく、周りの壁や床も砕かれる。


 ハスター「(なんだ、このバカげた威力は。)」



 碧「なに、あれ。」


 穂乃香「あれが、咲さんの本当の力」


 知鶴「吸血鬼ってあんなに強いのね。」


 雫「(....おかしい。様子が変だ。)」


 みんなが唖然としている中、咲は血液の斬撃を無数に放った。


 ハスター「ぐっ!調子に乗るな!」


 ハスターも負けじと風の斬撃を放つが、咲の手数の多さと放つ速度に押され始める。


 ハスター「(何故だ。何故こんな小娘に私が押されている。)」


 咲「.....」



 咲は自身が押し始めたと感じた時、さらにギアを上げる。


 ハスター「がっ!ぐっ!」


 ギアを上げたことでハスターは対応しきれず、斬撃をくらう。


 ハスター「ば、馬鹿な。そんなはずは。(このままではやられる。何か、)」











 ?「......」











 ハスター「うっ!」


 その瞬間、ハスターが冷や汗をかく。


 碧「この反応、ヴリトラと同じ。」


 ハスター「はい....承知いたしました。」


 ハスターは誰かと連絡をとるようにつぶやき、



 ハスター「今日はこれで終わりにしてやろう。」


 そう言って辺りに煙をまいた。それが晴れると、辺りにはゾンビの大軍が押し寄せていた。


 碧「またなの!?」


 穂乃香「しかし、この量は流石にきついですね。」


 知鶴「あの時より強くなってるとはいえ、前の3倍はいるわよ?」


 咲「......」














 雫「湊さん!咲さんが!」


 湊「どうし...た。」


 その時の咲は意識がないように見えた。だが、次の瞬間


 咲「!!」


 咲は辺りのゾンビを狩り始めた。その勢いは凄まじく、あっという間にそのゾンビ軍団は片付けられた。


 雫「す、凄い。」


 知鶴「何よこれ。」


 湊「咲、ありが」


 その言葉を言う途中で、咲がこちらを振り向いた。その目には確かな殺気があった。


 湊「!!まずい!!」


 次の瞬間、咲が湊に襲いかかる。


 湊「ぐっ!」


 咲「....」


 湊は何とか影のシールドで防ぐ。彼女の意識はとうに消えていた。残された殺意と怒りだけが彼女の体を動かしていた。


 咲「......」


 咲が1度距離をとる。


 湊「(まずいな。他のみんなは動けそうにないし、俺もそろそろ魔力切れだ。)」


 そんな湊の不安も虚しく、再び咲が突っ込んできた。その時、湊と咲の間に魔法陣ができる。


 咲「!?」


 湊「な、なんだこれは。」


 知鶴「(あの色、私のじゃないしそもそも(トラップ)仕掛ける余裕なんてなかった。)」


 その魔法陣は赤黒く、何やら不気味なオーラを放っていた。そして、そこから誰かが出てくるのだった。


















 隼司「はぁはぁ。(くそ、このままじゃやばいな。)」


 その頃、隼司達はロキとの戦闘に苦戦していた。


 隼司「(観月も椎名もダウンしている。先生も頑張ってくれているが、魔力切れが近そうだ。)」


 ロキ「なかなか面白い戦いだったよ。でも、そろそろ終わりにしようかな。」


 そう言ってロキが武器を構えようとした時、


 ハスター「はぁはぁ。ロ、ロキ」


 どこからかハスターが出てきた。


 ロキ「ハスター!どうしたのその怪我。」


 ハスター「説明は後だ。あのお方から撤退の指示が。」


 ロキ「ちぇ、またかー。」


 そう言ってロキは武器を下ろした。


 ロキ「まぁ、今日は楽しめたしいいや。じゃあまたね。」


 その瞬間、ロキはハスターと共に転移してしまった。


 隼司「な、何とかなったのか?」


 源「だ、大丈夫か。隼司くん。」


 そう言って源先生が近寄る。


 隼司「何とかって感じですね。(さて、とりあえず横でダウンしてる2人を雫ちゃんからの瓶を使って起こすとするか。)」













 その魔法陣から誰かが出てくる。その人は、赤みがかった白髪で、目が赤く、牙があった。


 ?「このままでは咲さんのご友人にも被害が及びます。止めさせて貰いましょうか。」


 その人はそう言って咲と向き合う。


 咲「うぐぅぅぅ」


 咲はまるで獣のようにその人を警戒していた。


 ?「流石にまずいですね。早めに止めないといけなさそうです。(しかし、かなり無理をした上での召


 喚。咲さんの身や私自身のことを考えても3分が限界ですか。)」


 咲「がぁ!」


 その瞬間、咲が爪を立てて襲いかかる!


 湊「(速い!やられる!)」


 誰もがそう思い、助けに入ろうとした時


 ?「獣を相手にしているようですね。」


 その人は簡単にその攻撃を避けてしまった。


 ?「少し強くなりますが、我慢してください。」


 そう言ってその人はてから無数の血液を操作し、まとめてエネルギー弾のようにして放った。


 咲「ぐがぁ!」


 その一撃をくらい、咲は壁へと衝突した。その直後、咲の姿が元に戻り咲は大の字で前に倒れた。


 ?「はぁ。何とか気を失わせられましたか。一撃で仕留められて良かったです。」


 雫「あ、あ。」


 碧「一体、何が」


 穂乃香「誰なのです。あの人」


 知鶴「にしても、あの状態の咲を一撃で。」


 湊「.....あの。」


 湊は覚悟を決めて聞いてみることにした。


 ?「はい。どうしました?というより、皆さん大丈夫じゃなさそうなので急いで手当してもらった方が。」


 湊「そ、それより!あなたは何者ですか?」


 湊が全員が疑問に思ってることを尋ねる。


 ?「私はベルザ。この咲さんの心の中に住まわせて貰ってる吸血鬼です。」


 一同「え!?」


 その瞬間、全員が驚く。ベルサという吸血鬼が咲の中にいることは皆が知っていた。だが、何故ここに出てきたのか。咲を圧倒する強さ。謎があまりに多すぎたのだ。


 湊「あ、あの。どうして」


 湊が質問をしようとした時、ベルザの体が薄くなり始める。


 ベルザ「そろそろですか。すみません。まだ詳しくはお話できませんが近いうちにまた会いましょう。」そう言ってベルザは消えていった。
















 咲「う、うーん。」


 あれからどれほどの時間が経ったのだろうか。咲が目を覚ますと、そこは病院のベットの上だった。


 湊「気がついたか。」


 横を見ると、湊と碧がそばにいて看病をしていた。


 碧「よかった。本当によかった。」


 その時、咲の脳に、あの日の記憶が駆け抜ける。


 咲「っ!」


 その瞬間、咲の目から涙が溢れ出た。冬季が死んだことを改めて感じてしまったのだ


 咲「私が....私が弱いから。」


 碧「咲....」


 湊「.....」


 三人は己の弱さを恨んだ。もっと強ければ。そんな言葉が何度も頭をよぎる。


 咲「ゔっ、あっ、がっ」


 その日咲が泣き止むことは無かった。













 ハスター「ぐっ、クソが。」


 ロキ「随分やられたね。そんなに強いやつがいたの?」


 ハスター「いや、そうでは無い。1人剣士を始末した途端、吸血鬼の小娘に異変が起きた。そしてそのまま謎の力によってここまで追い詰められた。」


 ロキ「剣士....(そっか。冬季くんをやっちゃったのか。)」


 ハスター「あやつの顔、決して忘れぬ。次に会う時は必ず殺す!」










 咲目を覚ましてから1週間が経った。


 湊「気分はどうだ。咲。」


 咲「おかげさまで、少し回復したよ。」


 湊「そっか。」


 あの後、隼司や先生方が駆け付け、咲を病院まで運んだのだ。そして、ロキが化けていた真鍋先生もロッカーの中に縛られた状態で閉じ込められていて無事に保護された。


 咲「それで、ベルザが出てきたんだよね。」


 湊「あぁ。暴走しているお前を簡単に制圧してたぞ。」


 咲「そっか。」


 あれ以降、咲はベルザとの会話ができなくなっていた。原因は不明だが、能力は問題なく使えるため体の中にはいるのだろう。


 咲「他のみんなはどう?」


 湊「あれから少し経ってはいるが、やっぱりまだ気持ちの整理はついていないようだ。」


 咲「そう。」


 咲も気持ちの整理はついていない。当たり前だが、大切な人を失ったときの心はそう簡単に治らないのだ。


 湊「.....くそ。」


 湊が悔しそうにそう呟く。その時、病室をノックする音が聞こえた。


 源「失礼する。」


 咲「先生。」


 入ってきたのは担任の源先生だった。


 源「すまない。一度ならずして二度までもお前たちをこんな目に合わせてしまった。私は教師失格だ。」


 そう言って先生が深く頭を下げた。


 咲「先生、顔を上げてください。先生の責任じゃないですよ。」


 源「しかし、現に私は1人の生徒の命を守れなかった。」


 先生のその姿に、二人は言葉をかけられなかった。


 源「それで、その事で冬季の家族へ伺ったんだ。そしたら...」


 先生は持ってきた紙袋の中から四角い箱を取り出した。


 源「これを咲に渡して欲しいと頼まれてな。」


 咲「私にですか?」


 源「あぁ。なんでも冬季が、


 冬季「もし俺に何かあったら、その中身を咲に渡して欲しい。」と、頼んでいたそうだ。」


 咲「そうですか。」


 それを聞いた咲が恐る恐る箱の中身を開けた。


 咲「え?これって。」


 そこには綺麗な雪の結晶がぶらさがったネックレスだった。


 湊「おお。綺麗だな。ん?なんか手紙が入ってるぞ。」


 湊にそう言われ、私は手紙に目をやる。そこには『咲へ』と書かれていた。


 咲「なんだろう。」


 咲は疑問を持ちながらその手紙を開き、読んだ。











 咲へ


 これを読んでるってことは俺が死んでしまったのだろうな。何が理由で死んだかは分からないが咲や他のみんなを悲しませることになるだろう。本当にすまない。


 そして、これは俺の遺書でもあり俺が残してやれる唯一のものだ。


 まず、俺の刀(残ってるかは分からないが)はお前らの誰かが持っていてくれ。使ってくれても構わない。俺の愛刀だ。切れ味は保証する。


 もう1つ。この箱の下に何個かコンタクトがあるだろう。それを付けると、俺の能力『神眼』が使えるようになるはずだ。ただ、試して見たが1日10分がいい所だ。ここぞと言う時に使ってくれ。


 最後に、そのネックレスだ。本当はお前の誕生日にでもあげようと思ってたんだがロキたちとの一件があってからいつ死ぬか分からなくなっちゃったからな。解決したら、遺書だけ抜いて渡すつもりだった。こんな形になってしまってすまない。


 でも、俺が間違えてなければ最後にこう言ってるはずだ。


「大丈夫、俺は死なない。仮に消えても、絶対に戻ってくる」ってな。


 お前がそのネックレスをつけている限り、俺は必ず戻る。だからそんな悲しむな。また会おう。絶対に。その時は笑顔でおかえりって言ってくれ。


 じゃあ、しばらくの別れだ。またな。









 その手紙を読み終えた頃には、三人の目からは涙が溢れ出ていた。


 咲「冬季.....」



 湊「くっ。すまねえ。冬季。」


 源「ぐっ、うっぐ。」


 咲が再び涙を流す。だが、それと同時に彼女の心で決心がついたようだった。


 咲「冬季...私、待ってる。いつまでも待ち続けるから。」


 咲は泣きながらそう心に誓った。『俺は絶対に戻ってくる』。手紙に書いてあるその言葉を信じて。

次回

2章最終話

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