第1話 吸血鬼と非能力者
新シリーズ開幕!能力者系のものを書いてみました!
私が飽きるまでやれたらと思っています!
それはなんの変哲もない日に突然起きた。たちまち世界を謎の光が包む。その光がはれると、周りの人間達におかしなことが起こり始める。ある人は空を飛び、ある人はヒレを持ちある人は姿が消える。最初は皆混乱したが、後の研究で人間に「能力」ができたことが判明した。ただ、原因は何なのか、そもそもあの光は何なのか。謎は深まるのであった。
「と、これが昔から言われてる能力に関する話じゃよ。」
「へー、そんなのあったんだ。」
「咲、ちょっとこっち手伝ってー。」
「はーい。」
私の名前は柊咲。この能力者がいる世界で能力に恵まれなかった普通の中学3年せいだ。だが、能力のない人間は別に珍しくもない。この世界、能力者と非能力者の割合は半々である。まぁ最近のニュースを見ると、少しずつ能力者が増えているらしいが、私には関係の無いことだ。
「咲、野菜を着るのが上手くなったね。もう私より上手いよ。」
「そんなそんな。ベテラン主婦様には敵いません。」
「またそんなこと言って、うふふ。」
私は今の生活が好きだ。普通の人間として生き、普通の生活がある。それだけで幸せなのだ。
「うん。やっぱり咲の飯は上手い!」
「それは何より。」
「ところで、冬季くんとはどうなんだい?」
「ど、どうって何?別にやましいことは...」
「なんだ咲。隠し事はダメだぞ。どんな男か知らんが、咲は絶対に渡さん!」
「べ、別にそんなんじゃないからー!」
冬季とは、私の同級生だ。本名は斑目冬季。あいつは私と違い能力に恵まれた。どんな能力なのかは聞いたことがないが、本人は「大したことないよ」と、言っていた。小中と仲が良く、よく相談にものってくれる良い奴だ。
「あ、明日の朝ごはんなんにも買ってない。咲、ちょっと買ってきてくれない?」
「はーい。」
「雨降ってるから気をつけろよー。」
「わかってるよー。行ってきまーす。」
「....」
「親父?どうした。」
「いや何、少し胸騒ぎがしての。」
「明日の朝ごはんどうしようかなー。パンか米か。迷うなー。」
私は近くのスーパーに足を運んでいた。ここは夜遅くまでやっているため本当に助かる。
「ありがとうございました〜」
「結局パンにしたけど、米も...あーこれ絶対どっち選んでも後悔してたー。」
帰り道私がそんなことを言いながら歩いていると、道端に人がいるのが見えた。
「あれ?どうしたんだろう、あの人。」
フードを被っていて顔は見えなかったがよく見るとだいぶやつれている。あれはもしや、
「また『狩り』の被害者が出たのかな。」
狩り。能力者が出てきたこの世界では、能力者が非能力者をいたぶったり、金品を盗んだりすることを指す。恐らくあの人もその被害者なのだろう。
「...はぁ、仕方ない。」
私はその人に近づいて声をかける。
「あの、大丈夫ですか?」
「ああ、わざわざご親切にどうも。実はここ5日は何も飲み食いしてなくてね。」
やっぱり狩りの被害者だ。流石にここまで知って、みすみす帰るのも寝覚めが悪くなる。
「もし良かったらこれ」
私はさっき買ったパンの1つを渡した。
「え、いいんですか?」
「はい。そんな状況の人ほっとけませんよ。」
「あ、ありがとうございます!」
そういうとその人はそのパンを食べ始めた。
「美味い!こんな美味いもの初めてだ。」
そんなことも言っていた。そこら辺に売っている普通のパンだが、何かあったのだろうか。
「では、私はこれで...」
そうして私は再び帰路に着いた。やっぱりいいことをした後は気持ちがいいものだ。そんな風に思っていると、
「おい、そこの嬢ちゃん。なかなかいい身体してんじゃねえか。」
「え?」
後ろを見ると柄の悪い半グレがいた。ここら辺の様に治安の良くない地域は能力者、非能力者関係なく自分の私利私欲のために人を襲ったり、金品を盗んだりする輩がいる。こういう奴らみたいな。
「ちょっとこっち来ていいことしようよ。」
「こ、困ります。」
「いいじゃん、こっち来なよ」
なかば強引に連れていこうとする。私は抵抗するが人数差や、男女としての差もあり連れてかれそうになる。
「誰か、誰か!」
もう夜も遅い。こんなこと言っても来る人はいないとわかっていても、能力の無い私にはこうするしかなかった。
「ぐあ!」
その時、半グレの1人が急に倒れた。
「ど、どうした?!」
半グレが振り返るとさっきパンをあげた人がいた。
「なんじゃ?!お前は!」
「名乗る気もない」
そう言うとその人はそこにいた半グレを全員叩きのめした。かすり傷すら追わず、目で追えなかった。
「あ、ありがとうございます。」
「いえ、お気になさらず。」
「あなたは一体...」
「...そうですね。あなたならいいかも知れません。」
そう言ってその人は被ってたフードを外した。その人は赤みがかった白髪で、目は赤く顔も整っていた。いやそれよりも、彼には牙があった。
「え?え?!」
思わず声が出る。
「驚いかせてしまいましたか?私はべルザ。吸血鬼です。」
「吸血鬼?!」
なぜここに吸血鬼が?いやてか、何?へ?!
「まぁ驚きますよね?普通はこんなところにいないですもんね。」
「なんでこんなところに吸血鬼が?」
「私は魔界から来ました。」
「魔界?」
「はい。まぁそこで色々あって私はこっちの世界に来たのですが、右も左も分からず路頭に迷ってしまって」
「それであんなことに。」
「はい。ところで、さっきの奴らに抵抗しなかったのは理由があるのですか?」
「...私は非能力者なので。」
「そうだったのですか。でしたら、お礼も兼ねてひとつ提案が。」
「提案?」
「ええ。私と契約しませんか?」
「え?!」
何を言っているんだ彼は!?
「まぁ契約といっても難しいことはありません。私をあなたの心の中に住まわせて頂ければ、私はあなたに力をお貸しします。」
「力?」
「ええ、まぁ貸すといってもあなた次第ではあるのですが。」
こんなこときっと二度とない。というか非能力者が急に能力者になるなんて聞いたことがない。
「なぜ、心に住むことが条件なんですか?」
「私にとっても都合がいいんです。」
断れば、私は今まで通りの生活を送れる。でも、もし承諾したら...冬季と同じところに...
「わかりました。その契約させていただきます。」
「了解しました。では、私の血を飲んで頂けますか?」
「え?なんでです?」
「能力を渡す上で必要なんです。」
「わ、わかりました。」
大丈夫かと思いながら、私は血を飲んだ。
「う、ぐ、」
その瞬間、体が痛くなった。頭から足先まで全身にくまなく痛みが走る。
「契約成立。これからお願いいたします。」
そう言いながらベルザは黒いチリのように細かくなって消えた。
「(何が、どうなってんの?これから私どうなるの?)」
そう思いながら私は意識を手放した。
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