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ぷりん

作者: Taisei

これから僕が記すのは、僕にとって大切な家族、犬の「ぷりん」との想い出です。

15年、いや、それ以上の年月を僕らと一緒にいてくれているプリンのお話。僕や僕の家族が忘れないためのものです。

なんせ遠い記憶でもあるので、少しばかり盛っていたり、曖昧な表現で記すことはあると思いますが、どこがとか考えずに、ただ純粋にぷりんの可愛さが伝わればと思います。


2005年、某月。父親の会社の社宅に住んでいた僕ら4人家族。兄(当時小6)が両親に、「ペットを飼いたい」と懇願した。兄は昔から動物が大好きで、社宅に居着いている猫(3,4匹くらいだったかな)のために、お小遣いを使って餌を買ってきたり、自宅の冷蔵庫から母の許可無く魚肉ソーセージやハムなど、猫が好きであろうものを与えるほどだった。いくら餌を与えて懐いてくれても、結局は野良猫であるため、自宅で飼うことは叶わない。そんな現実的な話が、物心が付き出した兄には芽生えたのだろう。ある日の放課後に学校から帰ってきた兄が母に願った。しかし、我が家は社宅であるため、猫や犬などのペットは飼えない。父も含めて家族で話し合った結果、近所のペットショップの入っているスーパーに行くことになった。

4階建てスーパーの1テナントで、4階の片隅にポツンと存在していた某ペットショップ。そこは、犬や猫はもちろんのこと、家で買うには珍しい動物もいる。そこで出会ったのが、イタチ科の肉食性哺乳小動物、フェレットだった。

兄と母が店主からフェレットの飼育について話を聞く。「肉食動物のため、最初は噛むことも多いが躾をしていくことで減っていく」「しつけする際には、首根っこを掴むと噛めなくなるから大人しくなる」など、コツを教えてもらった。兄の強い願いということもあり、主に兄が躾をすることになった。自宅に連れて帰り、「パン」と名付けられた。

パンとの生活が始まった。肉食動物ということもあり、主にお肉を中心とした餌が多かった。躾の中で最初に苦戦したのはやはりトイレだった。飼育用のゲージも買い、ゲージの中にトイレを設置した。フェレット用のトイレは、猫砂に似たものだった。最初は至るところに糞をしてしまった。お風呂場、脱衣所、リビング、各部屋や玄関など、気づいたときには僕らが足で踏んでしまっていることもしばしばあった。その都度、だめであることを教えるなどしていた。一年ほどで、トイレを覚えたが、その頃に我が家の引っ越しが決まった。当時住んでいた社宅には、10年間という契約期間が設けられていて、僕が生まれて少しして入居した我が家は、ちょうど満了の時期だった。小学校中学校の区域の問題もあったため、我が家は社宅から徒歩10分ほどの土地を購入し、新築一戸建てでの生活となった。引っ越したことで、環境の変化を一番受けたのは他でもないパンだったようで、ゲージにたどり着けずに所定外の位置に排泄をすることもしばしば。ただ、悪いことばかりではない。一戸建てとなり部屋が広くなったことで、パンは走り回れるようになった。パンはボールや猫じゃらしのようなもので遊ぶのが好きだった。

しかしその生活にも少しずつ慣れ、引っ越しから一年が経過したある日、悲劇が起きた。

自宅に帰ってみると、パンの様子がおかしい。食欲もいつもより少なく、動きも少しトロい。心配に思った兄と母が、パンを近くの動物病院へと連れて行った。診察の結果、パンは「アリューシャン病」と告げられた。「アリューシャン病」とは、パルボウイルスの感染により発症すると言われている、命に関わる感染症の一つで、当時は愚か、現在でも具体的な治療法や、ワクチンが存在しない、謂わば不治の病とも言える。これを聞いたとき、当時小学校5年生だった僕でもわかった。もうパンは長くないんだ、と。それを思ったとき、約2年半という短い時間だが、僕の中のパンとの想い出が思い出された。

僕らがテレビを見たり、ご飯を食べたりしている間は、誰かに抱っこされていた。主に兄であったが、ときには母、父、そして僕にも。リビングの部屋にある大きなソファの裏側にある隙間から中に入り込み、そこを自らの寝床にしていた。しばらく見ないと家族でパンを探すときのだいたいはその寝床にいた。走り回り飛び回ったあと、その勢いでソファの上からさらに上の出窓に乗り移ろうとして、出窓の縁にぶら下がったまま動けなくなっていたこと、他にもたくさんだ。

病名を告げられてから数カ月後、パンが自宅で突然意識を失い、呼吸も浅かった。僕らは急いで動物病院に連れて行った。診察台の上で、呼吸器をつけて頑張ってくれているパンを見たとき、僕は初めて「命」というものを感じた。家族で回復を願って見守っている中、母が先生に言った。

「先生、もう良いです。もう、苦しそうで、可哀想で、、。」

先生が渋々呼吸器を外して少しすると、パンは安らかに眠りについた。初めて命を感じた直後に、その命が消える瞬間を見た。動かなくなったパンを抱きかかえた僕の手は、今までにないくらいに震えていた。パンを自宅に連れて帰って、僕は泣きつかれて眠ったらしい。うたた寝半分で見た景色の中に、僕に聞こえないように声を押し殺して泣く兄と母の姿があった。

翌日、ペット用の火葬場へと向かい、パンの骨を受け取った。自宅にはパンのお墓を作った。パンが、僕らの家族であった証や軌跡をそこに残しておくために。


これで終わり?と思ったそこのあなた。

すみません、終わりではないです。今回は、ちょっとお試し感覚で、本編の前だけ書いてみました。

ぷりんは、このあとに出てきます。

ただ、ぷりんとの想い出に向き合いながらじっくりと書いているので、気長にお待ちいただければと思います。

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