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07 意外と押し切られてしまった侯爵様

 私には幼馴染どころか、年齢が近い子供が周りにいなかったので、その関係性はよく解らない。


 けれど、私の婚約者候補とその幼なじみの関係はおかしいのではないかと私は思う。

 おかしいと感じる私がおかしいのか、私には相談できる相手がいなかったのでストレートに口にしてしまった。



 私が十二歳になった時、爵位が我が家より二つも上なのに、どうしてだか私に婚約の申し込みがあり、我が家は断るすべを持ち合わせていなかった。


 侯爵様が我が家にやってきて「うちの息子と婚約してもらえるかなぁ〜?」と私を頭の天辺から足先、手の指にまで視線を這わせて申し込まれた。

 父も私も「ありがとうございます」としか答えられなかった。

 詳細は顔合わせで決めると侯爵様に言われ、父はそれを了承した。



 父がちょっと調べると侯爵家の隣の領地に貧乏男爵がいて、そこの男爵令嬢がまるで小姑のように侯爵令息の婚約者を貶したり、悪い噂を流したりするそうだ。


 そのためにどこの家も嫌がり断られて、もう後がないというところで、ちょっと貸しがあった我が家のことを思い出した侯爵が、私へと白羽の矢を立てたのだった。


 私は悪口を言って回るような男爵令嬢に会いたくなかったので、初めてお会いする時には、我が家へ来てもらうことにした。

 なのに、婚約者の男爵令嬢は我が家へと付いて来た。

 連れてきた侯爵が一体どういうつもりなのかも理解できなかった。

 

 男爵令嬢は我が物顔で居丈高に振る舞い、あまりの常識の無さに私も両親も驚いて侯爵一家に「帰ってください」とお願いした。


 その翌週には既に私の悪口が貴族社会に出回っていて、本気で驚いたが、私は言われるがままは嫌だったので「初顔合わせに婚約者候補がまさか幼馴染の男爵令嬢を連れてくる。そんな非常識をするとは思いませんでした。付いてくる男爵令嬢の常識の無さと連れてくる侯爵家に驚いて、開いた口が塞がりませんでした」と、声を大きくアチラコチラで話して回った。


 人の悪口は言い慣れていても、自分の悪口を言われ慣れていなかったのか、意外にも凹んだらしく次の婚約者候補との顔合わせには男爵令嬢は付いてこなかった。



 侯爵様もいらっしゃる前で私ははっきりと告げた。

「わたくしと婚約するよりも、幼馴染みの男爵令嬢と婚約されたほうがいいのではないですか?わたくしと男爵令嬢は絶対仲良く出来ませんし、はっきり言って悪口を言われたので大嫌いです。そんな中で、私が侯爵令息と婚約する意味が見つけられません」


 侯爵は私がここまではっきり言うとは思っていなかったのか、目を丸くした。

「息子と男爵令嬢は本当に単なる幼馴染という感情しかないんだよ」

 令息もうんうんと首を縦に振っている。


「なら、それ相応の態度を取らせるべきなのではありませんか?男爵令嬢なのですよね?侯爵様が何か気を使わねばならないことなどありますか?」

「いや・・何もないが・・・」

「ならなぜ好きにさせているのですか?」

 侯爵と令息は顔を合わせて首を傾げている。


「侯爵家には色々とあるのでしょうが、巻き込まれたくありません。取り敢えず私との婚約は、男爵令嬢を排除してから考えると言うことにしませんか?我が家に付いて来られても迷惑ですし、悪口を言われるのも我慢なりません。これから会う度に現れられても迷惑です。そちらの問題はそちらで片付けてきてください。それから婚約の話をいたしましょう。あぁ、侯爵家の問題が片付く前に、他の婚約者が出来てしまったら申し訳ありません」


「いやいやいや!!ちょっと待って、家ももう後がないんだよ!!」

「幼馴染の男爵令嬢を排除したら同格の侯爵家から話も出てくると思いますよ。問題は男爵令嬢なんですから。いえ、ご子息にも侯爵様にも問題ありますよね。常識知らずといいますか、男爵令嬢に好きにさせている時点で、侯爵家としてどうなんでしょうか?」


 侯爵がグッと詰まる。

「わたくし、結婚で幸せになりたいと思っております。そのためには努力しますが、婚約者の幼馴染のご機嫌など取れません。いい人なら友人になれることもあるでしょうが、男爵令嬢、いい人ではないでしょう?」


 今度は令息がグッと喉をつまらせた。

「侯爵家にはお世話になったことがありますし、私も侯爵家への嫁入りとなれば光栄な話ではありますが、取り敢えず、今の状況では婚約は出来ません」


 侯爵一家がすごすごと帰っていった。

「あんなにはっきり言ってよかったのかな?」

 父はオロオロして、母は私の頭を撫でて笑い飛ばした。


 それから半年後、侯爵令息は未だに男爵令嬢につきまとわれている。

 男爵令嬢一人片付けられない男には用はない。

 私は父に頼んで早々に婚約者を探してもらうことにした。

 何人かの人と会って、伯爵家の令息と互いに感触が良かったので、当人同士の決定で婚約することを決まった。



 一応、侯爵様には「幼馴染がつきまとわない素敵な方と出会えましたので、婚約することになりました。侯爵令息とは御縁がなかったようで残念です」

 とお手紙を送った。


 私は伯爵令息と婚約したので、もう侯爵も手の出しようがないだろう。

 私の悪口も聞かなくなった。


 侯爵様からのお話は絶対だと思っていたけれど、男爵令嬢すらどうにも出来ない侯爵様ならお断りしてもいいよね?

すいません。

これを幼馴染枠に入れていいのか悩みどころですね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公は爵位2つしたということは子爵令嬢なのに侯爵相手にきっぱり言って行動できること。 [一言] これ、男爵令嬢が。 恋愛感情あり→そのうち既成事実作って結婚 恋愛感情なし→本人結婚するま…
[良い点] ヒロインの言うことがいちいち尤もで、うんうんと頷きながら読みました。ここまで理路整然と明快に言えると気持ち良いですね✨
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