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14 迷惑な幼馴染

 私、アルカとダットとエリスは親が仲良かったために良く一緒に遊ばされていた。

 けれどダットとエリスは物心付いた頃から、いつも二人の世界を作っていて、私が入り込む隙はどこにもなかった。


 手を繋いでいるのもいつも二人だけで、その後ろを私が従者のように付いていくだけだった。


 母達が楽しそうにお茶を飲んでいる時、ダットとエリスはおままごとをしたり、追い掛けっ子をしたりして遊んでいたけど、おままごとでは二人が夫婦で、私は平民役だったり、従者の役だったりした。

 追い掛けっ子では追い掛けられるのは私一人で捕まるとその遊びは終わってしまう。


 いつの頃からか、私は二人の遊びには交ざらなくなり一人で本を読んでいるような子になった。

 もう少し大きくなると、母一人で行くように言って私は屋敷で留守番するようになった。


 二人に会わなくなって嫌な思いをしなくて済むようになったのに、母が変に気を回して我が家でお茶会をするようになった。

 もう親に付いて回るような年でもないだろうに、ダットとエリスは我が家にやってきて、私を無視して遊んでいたので私はお茶会の間、図書室へと籠もるようになった。


 自室に居ると、二人は部屋に乗り込んできて私の持ち物に難癖を付けていくのだ。

 私が自室にいないと入れないので図書室へ逃げ込むようになった。


 私は母にダットとエリスとは仲が悪いので連れてこないでくれと頼んだ。

 母は「私のお友達の子達と仲良く出来ないの?!」と怒ったが「気が合うかどうかはお母様のお友達の子供かどうかは関係ないわ」と言い返した。


 それから母は我が家で三人でのお茶会はしなくなった。

 規模の大きい時は誘っていたけれど、私がダットとエリスの三人だけになることはなかった。


 ダットとエリスはどこに居ても浮いていた。

 二人だけの世界で完結していて、他の誰とも仲良くしようとはしなかった。

 母親達もその異常性に気がついたらしく、二人を会わせないようにしていると母が私に言っていた。



 十歳になって学園に通う事になり、私は寮での生活を選んだ。

 私は学園生活を堪能していた。

 今まで会ったこともない人達とも、仲良くなりお友達も親友もたくさんできた。

 毎日楽しく学園生活を送っていると、色んな人が色んな噂をしていた。


 〇〇様とXX様が婚約されるそうよ。

 △△様が▢▢先生に叱られているところを見たわ。

 等など色々。

 本当か嘘かわからないそれらは聞いている分にはとても楽しいものだった。



 私が在学している期間には王家に携わる人は入学してこないのでのんびりとした雰囲気があった。

 授業の一環で王子、王女様は時折やってきて、王族への対応を教えられる事はあった。


 噂話だけれど、王子、王女様は気にいる子を見つけるために授業の一環と言って学園に足を運んでいるのだと聞いた。

 実際、成績優秀な子は王子、王女様に特別に声を掛けられているところを見たことがあるので、あながち嘘ではないのだと思った。


 入学して半年ほど気が付かなかったのだけど、ダットとエリスも入学していた。

 相変わらず二人はずっと一緒にいて、周りに人を寄せ付けない。 

 あの二人はあれで楽しいのだろうか?と疑問に思っていたけれど、二人に関わりたくなかったので母には手紙で現状を知らせた以外は関わらなかった。


 十四歳の学年になった頃、ダットとエリスの噂で持ちきりになった。

 二人が空き教室や、人が来ないと思われるような場所で友人以上の行為をしていると。〇〇様が見たらしい。と見た人の名前まで挙がっているので嘘ではないのだろうと思った。


 一応、母には私が見たことではないので本当か嘘か解りませんがと前置きをして噂を伝えた。


 ある日、学期末テストの勉強を一緒にしようということになって、私の部屋ですることになった。

 六人ほど集まっていて先頭を歩いていた子が「部屋の鍵貸して」というので後方にいた私は鍵を先頭の子に渡してもらった。


 私から見ると鍵を受け取った子が鍵を挿してドアノブを捻って扉を開くと、その子は鍵を落として口元を押さえて叫び声を上げた。

 周りにいた子も私の部屋を覗き込んで同様に悲鳴を上げる。

 私は最後尾から自分の部屋を覗き込んで、私も驚いて叫び声を上げた。


 私の部屋の周りは野次馬に取り囲まれて、寮監が慌てやってくる。

 人垣を分けて私の部屋の前まで来た寮監が私の部屋を見て「何をしているんですかっ!!」と怒鳴った。

「服を着なさいっ!!」

 寮監は私の部屋の中に入っていき、部屋の扉を締めた。


 私の部屋の中にはダットとエリスがいて何も着ていない格好でベッドで一つになっていた。

 私はパニックを起こした。

 どうして私の部屋で?!

 鍵は?!

 どうして?なんで?という思いが頭を占めていると部屋から寮監が二人を連れて出てきて「この部屋の持ち主は誰ですか?!」と悲鳴のような声で聞いてきた。


 私は手を上げて「私の部屋です」と答えた。

「一緒に来てください!!」

 私は先頭で部屋の鍵を開けた子の手をつかんで連れて行く。


 寮監室に入ると、私が部屋を貸したと思われていることが解って私は慌てて訂正した。

「二人とは子供の頃に一緒に遊んだことはありますが、友人でもありません!!部屋に勝手に入られていたんです!!貸していたなら友人にドアを開けるように鍵を渡したりしません!!」


 寮監は私のいうことに納得してくれて、ダットとエリスにどうやって部屋に入ったのか聞いていた。

 ダットは寮監の目の前でピッキングをして見せた。


「どうして私の部屋なのよっ!!」

「どこでも良かった」


 私と鍵を開けた子はすぐさま解放されたので、私の部屋へとなんとなく付いてきてくれた。

 一緒に勉強しようとしていた子達がベッドのシーツを剥がしてくれて、マットを裏返してくれていた。


「新しいシーツある?」

 聞かれて私はクローゼットから新しいシーツを出した。

 正直、この部屋で寝たくない・・・。


 私はその日、友だちの部屋に泊めてもらうことにした。

 翌日、寮監に部屋の交換を頼んだ。

 寮監は、溜息一つで了承してくれて、部屋の移動を認めてくれた。

 

 学園で雇っている下女達に荷物の移動を頼んでくれて、その日は授業を休んで私は引っ越しをした。

 寮監に「ピッキングが出来ない鍵に交換して欲しい」と頼むと、全室鍵の交換が行われることになった。


 私はあらましを母に手紙で送り、精神的苦痛でダットとエリスの親へ請求してくれと頼んだ。

 母は友人だからと渋って請求してくれなかったが、ダットとエリスの親の方から謝罪という名目で私にそれなりの額が支払われた。


 学園からも迷惑料としてささやかな謝罪を受け取って、私の事は終わった。


 事件の日からダットとエリスは登校していなかったらしい。

 数日経ってダットだけが学園に戻ってきた。

 これも本当か嘘かわからないけど、エリスは修道院へ入れられたらしい。

 学園の卒業資格がないと貴族にはなれないので、ダットは学園に戻されたそうだ。


 正直どうでもいい。

 私に関わらないでいてくれるなら。

 幼馴染ってもっとほんわかしたものだと思っていたけれど、私の幼馴染は最悪すぎた。

ダットはその後、婚約者が決められて学園を卒業と同時に結婚させられるが、エリスを修道院から身請けして愛人として囲うようになります。

ダットとエリスは変わらず閉じた世界にいて、ダットは離婚されて両親にも見限られて平民へとなります。

そこからの未来はいいものではありません。

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