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第三話❀
ぐらり!
「ちょっと、蒼! オール手から離れそうよ!」
「え? わわっと!」
僕は突如戻った感覚に驚いた
ガシッとボートのオールもちゃんと掴む
「しっかりしてよね~。彼氏さん」
はにかんだ顔で彼女が言った
そう
僕は初恋の彼女と此処・桜ヶ池にデートに来てた筈
筈、なんだけれど……
「どうしたの?」
彼女が怪訝そうに僕の顔を窺う
「僕、ボートじゃなくて、筏に乗ってたような……」
「筏! 古いなぁ~!」
彼女がけらけらと笑った
「だ、だよな」
僕も汗を搔きつつ笑う
春の陽気にでも当てられたのかもしれない
その時
桜吹雪がざあっと舞う
水面に輪が出来た
ふとそちらを見た時
水面にはっきりと
筏に乗る和服の僕と
着物姿で和傘を差した女性が見えた
瞬きをした次の瞬間
それらは消えた
「どうしたのよ~、もう」
彼女の不満そうな声が
どこか遠くからかの様に聞こえたのだった……
訳が分からないながらも、お付き合いいただき誠にありがとうございました。
どうか、桜の幻惑に惑わされないように……。
お読みくださり、本当にありがとうございました……❀




