天使の飼い方 ~悪魔化しないようにしてね~
最近、天使を飼う人が多くなっている。天使は神が経営しているペットショップにいる。まあ、店にあるのは天使の卵だが。天使の卵はダチョウの卵くらいの大きさなのに膨らませた風船くらいの重さしかない。優しい心を持った人の温もりをある程度感じると孵化する。見た目は人間そっくりで性格や容姿は飼い主の行動や接し方によって変化するらしい。ただ、天使にひどいことをしようとするとすぐに悪魔化して飼い主を食い殺してしまうため飼うのは非常に困難である。そのことを知っていても購入してしまう人間が多くなっているのは彼ら彼女らがこの世のものとは思えないほどかわいいからだ。
「ご主人! 朝だよ! 早くしないと遅刻しちゃうよ!」
「うーん、あと五分」
「分かった! あと五分ね!!」
五分後。
「ご主人! 五分経ったよ!!」
「うーん、あと十分」
「分かった! あと十分ね!!」
十分後。
「ご主人! 十分経ったよ!」
「うーん、あと十五分」
「ご主人……いい加減にしないと私、悪魔になっちゃうよ」
「た、頼む! そ、それだけは勘弁してくれー!!」
「あっ! やっと起きたー。ご主人、朝ごはんできてるから早く食べてー」
「わ、分かった!!」
僕の家にいる天使『ミキ』の見た目は幼女である。僕はグラマラスな女性が好みなのだがミキはなぜか幼女である。ミキが生まれた日にペットショップの女神にそのことを伝えると「天使は主人が喜びそうなことしかしないから、それが最適だと思ったんだろうねー」と目を閉じたまま言っていた。
「ご主人! 天界行きのドラゴンもうすぐ家の前に来ちゃうよ!」
「分かった! すぐ行く!!」
僕が玄関で靴を履いているとミキがお弁当を持ってきてくれた。
「ご主人! お弁当忘れてるよ!!」
「あー、ありがとう。えーっと、他に忘れ物はないかな?」
「ご主人! いってきますのハグしてないよ!!」
「あー、本当だ。えーっと、じゃあ、おいで」
「はーい! あー、ご主人とのハグ気持ちいい。今日もいい一日になりそう」
「あー、えーっと、もういいかな?」
「あっ! ごめんなさい! もう時間だよね。いってらっしゃい! ご主人! 気をつけてね!!」
「ああ、分かった。それじゃあ、いってきます」
割烹着姿の天使『ミキ』の満面の笑顔を見ながら僕は家を出た。さぁ、今日も一日頑張るぞ!!