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邪悪ヤンデレ厄災系ペットオメガスライム  作者: maricaみかん
3章 頂へと歩むオーバースカイ

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59話 師弟

 今日はアリシアさんとレティさんに会える日だ。

 なので、メルセデスを弟子にした事の報告と、その相談をするつもりだ。


 アリシアさん達がやってきたので、挨拶をした後にメルセデスたちの件を伝える。


「アリシアさん、レティさん。ぼくも弟子を取ることにしたんです。

 事前の相談もなく申し訳ありませんが、ちょっとアリシアさんたちの気持ちが分かったような気がします」


「そうなんだね。別に私たちに許可を取るようなことでもない気はするけど、その子は才能があるのかな?」


「多分そんなには無いと思います。それでも、いつかオーバースカイに入れるくらいに強くなって欲しいんですよね」


 アリシアさんはぼくの言葉を受けて考え込んでいるようだ。

 やっぱり、メルセデスたちをオーバースカイのメンバーにすることは無茶だろうか。

 でも、ぼくはメルセデスたちに本気で期待してしまっている。あの子たちと一緒に冒険したいと思ってしまう。


「まあ、私が君たちに期待していることも無理難題の類だから、あまり人の事は言えないけど、過剰な期待は相手にとって良くないよ。その子を潰してしまいかねない。

 だから、しっかり面倒を見て、おかしな事をしていないか、無理をしていないかをちゃんと見ていてあげるんだ。それが師匠の務めだと思う。私たちも完全にできているとは言い難いけどね」


「そうだね、アリシア。ユーリ君たちが潰れていないのは結構特別なことだから。同じことがその子にも出来るとは思わない方が良いかな。

 それでも、君が面倒を見たいと思ったのなら最後まで見捨てない事。相手がろくでも無い事をするなら別だけれど。お姉さんとの約束だよ」


 うん、よく分かる。アリシアさんは謙遜しているけど、アリシアさん達がものすごく良い教えをくれたからこそ、ぼくたちはここまで来られた。

 2人が自分の時間をしっかり使って面倒を見てくれたからこそだ。

 それと、アリシアさんたちの期待は嬉しかったけど、不安もあったから、そこにも気を付けてあげないといけないよね。

 ぼくたちに追いつけないからメルセデスたちが焦って潰れてしまうなんて、絶対に嫌だ。

 メルセデスたちには幸せになってほしい。オーバースカイのメンバーになってくれる事より大事なことだ。


「はい。あの子たちがオーバースカイのメンバーにならないとしても、冒険者としてやっていけるように頑張ります」


「うん。それでいい。ところで、君が弟子に取ると決めた子はどんな子なのかな?」


「メルセデスというスライム使いと、メーテルというハイスライムのコンビです。正直なところ今は弱いですけど、本気で強くなろうとしている事が伝わるから、応援したいんです」


「なるほど。君らしいというか、なんというか。時間が合いそうなら、私たちにも紹介してほしいな。君たちのサポートをする事は私たちの大切な仕事だ。君がしっかりと師匠ができているかも見てあげないとね」


「ユーリ君ってすぐに絆されちゃう所があるから、お姉さんは心配だよ。でも、あなたの周りにはいい人が多いから、案外見る目があるのかもね。しっかり私が判定しちゃう」


 2人はぼくのわがままにも付き合ってくれるようで、本当にありがたい。ぼくはこの人達への尊敬をさらに深めた。

 メルセデスたちがうっかり失礼な対応をしないように注意しておこうかな。

 いくら可愛い弟子だからといって、この人達を悪く言うことは許せない。気を付けてもらわなくちゃ。


 それから、いつものように冒険の様子を見てもらった。


 そしていくらか経って、メルセデスたちとアリシアさんたちを会わせる機会がやってきた。

 メルセデスたちをアリシアさんたちの所へ連れていく前に軽く注意をしておくことにする。


「メルセデス、メーテル。これからぼくの師匠をしてくれているアリシアさんとレティさんに会いに行くわけだけれど、失礼のないようにね。本人たちが許してもぼくが許せない事もあるから」


「了解っす! でも、さすがに風刃のアリシアさんとレティさんに失礼を働くほど愚かじゃないっすよ。あの人たちに再起不能にされた人は数えきれないらしいっすからね」


 あのアリシアさんたちが人を再起不能に? いや、オリアスみたいなろくでも無い奴がいっぱい居たのだろう。

 あの優しい姿からはとてもそんな乱暴な行為はイメージできないし。


「アリシアさんもレティさんも優しい人だから、そんなことはできれば言わないで欲しいな。まあ、会ったことのない人の噂でいろいろ考えるのは仕方のないことだけど」


「ユーリさんが優しいって言うなら大丈夫っすね。あたいはうっかり失礼を働いちゃう事もあるみたいなので、すぐに注意してくれたら次から直すっすよ」


「さすがにメルちゃんでも初対面の人に大変な無礼は働かないわ~。そこは安心して良いはずよ~」


 アリシアさんたちに失礼なことをされると困ってしまうけど、今のところはメルセデスたちを信じよう。

 アリシアさんたちもメルセデスたちもお互い大切な人たちだから、上手い関係を築いてほしいな。


 そしてアリシアさんにメルセデスたちを紹介することに。


「アリシアさんにレティさん、こちらがぼくが弟子にしたメルセデスとメーテルです。ほら、2人とも」


「メルセデスっす! ユーリさんの弟子をしています。有名なアリシアさんたちに会えてうれしいっす!」


「メーテルといいます~。ユーリちゃんにはとってもお世話になっているから、これからしっかり返していきたいわね~」


「アリシアだよ。ユーリ君たちオーバースカイの師匠ってところかな。ユーリ君たちは弟子を持つことは初めてだけど、きっといい師匠になってくれるはずだ。その関係を大切にするといいよ」


「レティさんだよ。ユーリ君ってば、こんなに可愛い子を弟子にしちゃって。モテモテだね」


 お互いににこやかな感じで自己紹介は進んでいる。

 うん、今のところは上手くいきそうだ。ぼくがモテモテみたいなことはメルセデスにも言われたけど、そんな風に見えるものなのかな。

 まあ、レティさんは結構からかってくるから、その類かもしれないけど。


「やっぱりユーリさんはモテモテっすよね。女の人にあんなに囲まれちゃう位なんですから。顔からは想像できないっすよね。あ、ユーリさんの顔が悪い訳じゃないっすよ。でも、可愛い顔っすからね」


「うんうん。ユーリ君は本当に可愛いよね。それがいつでも大好きですって顔をして来るんだから、もうとっても癒されるんだよ」


「あ、分かるっすよそれ。出会ったばかりなのに信頼されているのが顔に書いてあるっすから。だからこそ期待に応えたいと思うんっす」


 そんなにぼくは分かりやすいだろうか。

 レティさんにしろメルセデスにしろ大好きだというのは本当の事だけれど、顔を見れば分かるのは恥ずかしいよ。


「ほら、落ち着いて。ユーリ君が真っ赤になってしまっているよ。それはさておき、メルセデスさんたちの実力を見せてもらってもいいかな?」


 フォローしているようでぼくを追い詰めているんですけど、アリシアさん!?

 まあ、それはいい。メルセデスたちの実力ははっきり言って大したことはない。アリシアさんたちに見捨てられないかが心配だな。

 ぼくの面倒を見るきっかけだって、結局は実力なのだろうし。アクア水のおかげとはいえ、そこは疑いようがない。


 それから、メルセデスたちに軽くモンスターを倒している様子を見せてもらう。

 メルセデスたちの成長はとても早くて、ぼくが最初の依頼で倒した赤い犬を倒せていた。

 メルセデスがうまく契約技である水の膜で攻撃を抑えて、2人で攻撃を受けないように攻めかかっていた。

 結局危ない場面は無くて、水の膜でうまく攻撃をしのげていた。

 あれから何度かぼくたちも倒しているけど、ぼく1人で正面から戦うと契約技がないと厳しい位だ。

 最初のメルセデスたちなら手も足も出なかったはずだから、とても感心した。


「うん、悪くない。ユーリ君たちには遠いことは確かだけれど、才能を感じないって程じゃない。しっかり育てば、オーバースカイのメンバーになることは夢じゃないかもしれないね」


「びっくりしたよ、メルセデス、メーテル。本当にすっごく成長している。君たちの努力の凄さをしっかり感じたよ」


「成長? 以前はこれより弱かったと言う事かな? 君たちはこれまで、どれくらい訓練をしてきたのかな?」


 アリシアさんの質問は確かに気になるところだ。無理をして訓練をしているようなら止めないといけないし、一緒に訓練する機会を作ってもいいかな。


「あたいはずっと訓練なんて碌にしてこなかったっす。スライム使いが大成するなんて夢のまた夢ですから。でも、せっかくユーリさんが弟子にしてくれたから、これで本気にならなくちゃ嘘っすよ」


「そうね~。だけど、戦いって訓練するだけでも案外伸びるものなのね~。ずっとこの調子とはいかないでしょうけど、頑張りがいがあるわ~」


 スライム使いが弱いと思われていることはもう分かっている。

 ぼくの家にある資料からはもっと強さを感じたものだけれど、これまで出会ったスライムは大抵とても弱かった。

 アクアが特別なのかとも思ったけど、スライム使いというだけで諦めている人が多いからなのか?

 あるいは、ハイスライムでは無いのだろうか、メーテルは。


「なるほどね。ユーリ君、出会ったときのメルセデスさん達はどんなものだったのかな?」


「アクア水を抜いたキラータイガー討伐の時のぼく位ですかね。今の半分も無いかもしれない」


「そうなるか。うん。オーバースカイと一緒に、メルセデスたちも着いてくる機会を用意しよう。ユーリ君たちのチームが強化される可能性を感じるから、もう他人事ではないね」


 アリシアさんの目にもメルセデスがオーバースカイに入る可能性が映っている。

 だったら、ちゃんとメルセデスたちを大切にして、ぼくたちの仲間と同じ扱いが出来るようになってもらおう。


「風刃のアリシアさんにも認められたっすか? これはユーリさんと同じチームになれる日も遠くないかもしれないっすね!」


「だからこそ、安全を大切にしてね、メルセデス。きみたちに何かあったらぼくは悲しいだけじゃ済まないから。期待しているからね。メルセデス、メーテル」

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