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邪悪ヤンデレ厄災系ペットオメガスライム  作者: maricaみかん
3章 頂へと歩むオーバースカイ

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55話 レティと

 ぼくは昨日のアリシアさんに続いて、今日はレティさんと出かけることになっていた。

 人と出かける時にはいつも相手が先に来ているので、今日はいつもより早めに来ていた。

 しばらく待っていると、レティさんがやってくる。


「ユーリ君、随分早いね。わたしも結構早く来たつもりだったのに」


「相手より後に待ち合わせ場所に来ることが多かったので、早めに来ることにしたんです」


「ユーリ君の事だから、時間には間に合ってるんでしょ? だったら、そこまで気にしなくてもいいんじゃない?」


「そういう物でしょうか。まあ、今回はレティさんをお待たせしなくて良かったです」


 そう言うと、レティさんはすぐにぼくに抱き着いてきた。

 レティさんに抱き着かれるのにも慣れてきたな。なんだか犬猫みたいに思われている気もするけど。


「ユーリ君ってば本当にいつも可愛いよね。お姉さんを待たせたくないなんて、男の子っぽいことを言ってみちゃって。うんうん。いっぱい褒めちゃう」


 そのまま頭を撫でまわされる。羽の先にはかぎ爪のような物がついているけど、そこは当たらないようにしてくれているので痛くない。

 レティさんのふわふわの羽根がしっかり感じられて、くすぐったさと気持ちよさを同時に感じた。


「気持ちよさそうな顔をしてくれてるね。ユーリ君は可愛がり甲斐があるなあ。わたしの事を信頼してるし大好きだって全身から伝わってくるもん。そりゃあ甘やかしもするって物だよね」


 そんなに顔や態度に出ているのだろうか。

 レティさんの事が大好きだということを否定する気はないけど、そこまであからさまだというのなら恥ずかしい。


「照れちゃうんだ。本当に癒されるなあ。つまらない嫉妬をしたり、すぐに逃げ出したりする人たちとは大違い。あー可愛い。うちの子にならない?」


「ありがたい話ですけど、オーバースカイやステラさんに不義理はいけませんから。でも、そこまで可愛いと思ってもらえるのなら嬉しいですね。できれば格好いいとも思われたいですけど」


「格好いいと思われたいのなら、もっと成長しないとね。実力って話じゃないよ。まだまだ子供にしか見えないよ、ユーリ君は」


 大人か子供かで言えばぼくは子供なのだろうけど、そう言われると少し悔しい。

 実力を認められていることは分かるから、そこは嬉しいけれど。


「いっぱい悩むといいよ、ユーリ君。大人の魅力をしっかり身に着けた君なら、女の人なんていくらでも寄ってくるんじゃないかな。ただでさえ有名な冒険者になりそうだし」


「いくらでもとかは別にいいです。レティさんもそうですけど、親しい人が魅力的だと思ってくれるなら。あ、いろんな女の人と付き合いたいわけじゃないですよ。ただ、親しい人にはすごい人だと思ってほしいだけです」


「そうだよね。ユーリ君がいろんな女の人と付き合ってる姿は全然イメージできないな。1人相手でも振り回されそうなのに、何人も相手をできる気がしないよ」


 レティさんの言うことが結構わかるような気がして、困ってしまう。

 色々と振り回されている感じがするよね。ステラさんとか、サーシャさんとか、ユーリヤとか、オリヴィエ様とか。

 それに、付き合うのならできれば結婚して、末長い関係でいたい。

 老後までずっと仲良しの夫婦とか、憧れるんだよね。


 結婚と言えば、アクアは女の人にカウントしなくていいよね、さすがに。結婚しても一緒に居るつもりではあるけど。

 モンスターと人間の間に子供はできないから、結ばれることに障害が多いし、何より本人がペットって言っているからね。


「あはは……まあ、それでいいと思います。やっぱり一生1人だけを愛する人って格好いいですからね。ぼくも出来ればそうなりたいです」


「うんうん。そう出来るならそれが良いよ。浮気者のユーリ君はあまり見たくないからね。まあでも、今日はお姉さんとデートだと思って、しっかり楽しんでいってね」


 レティさんとデートか。そう考えると緊張してしまう。

 レティさんはとっても親しみやすいけど、可愛らしい顔をした大人の女の人でもあるからね。

 まあ、レティさんも多分本気で言っているわけじゃないから、普通に楽しめばいいはずだ。


「改めて、今日はよろしくお願いします、レティさん。レティさんみたいな素敵な人とデートできるのは嬉しいです」


「うんうん。喜んでもらえないとお祝いの意味がないからね。お姉さんがユーリ君にとって魅力的なのは大事だよ」


「もちろんレティさんは魅力的ですよ。だから、弟子と認めてもらえた時は本当に嬉しくて」


「そういうのもいいけど、今日はお姉さんと大人な時間を過ごしたいか、だよ。お姉さんとの1日のアバンチュール、楽しんでみたくない?」


 いつもの優しい笑顔とは打って変わって、レティさんはぼくの顔のすぐ近くにまで寄ってきて、妖艶に微笑む。

 ドキドキが止まらなくて、思わずつばを飲み込んでしまう。


「ふふ。今日お姉さんをしっかり楽しませられたら、大人なご褒美をあげちゃう。それでどう?」


 大人なご褒美って何だろう。いや、そんなのに釣られちゃだめだ。

 レティさんもぼくも楽しめるようにすることは、ぼくがレティさんを大切に思っている証のようなもの。

 だから、報酬のためにレティさんを楽しませようとはしないぞ。


「ご褒美なんて無くても、レティさんを楽しませるために頑張ります。だって、ご褒美のために頑張るなんて、他の人でもいいように思えて嫌なんです」


「せっかくのチャンスなのに、勿体ないことをするね。でも、ユーリ君がわたしの事を大切にしていることはよく伝わったよ。レティさんポイント10点だよ。100点で、何にしようかな?」


「うんと褒めてくれると嬉しいです。レティさんに褒められるの、結構楽しいので」


「可愛いご褒美だ。また10ポイントあげちゃう。さ、楽しいお喋りはこのくらいにして、いろいろ遊んでみようか」


 レティさんはそう言ってぼくを手招きする。

 レティさんの中で遊びは決まっているみたいに見えたので、それを楽しみに待ちながらついていく。

 すると、草原のような場所にたどり着いた。


「ユーリ君はアクア水で空を飛べるから、こういう遊びなんてどうかな。じっとしててね」


 言われた通りじっとしていると、レティさんが後ろから足でぼくの事をぎゅっとつかんだ。

 おんぶに近いけど、ぼくは何もしていなくてレティさんがしっかりとしがみついている感じだ。

 胸のあたりが後頭部にくっついていて、ほんの少し柔らかさを感じて緊張してしまう。


「レ、レティさん、当たってます……」


「いつも抱きついても気にしないのに、変なの。でも、お姉さんをしっかり意識しているんだ。可愛いなあ」


「いつもはもう少し力が緩いじゃないですか。きっとそのせいです。それより、離れなくていいんですか」


「離れちゃったら危ないよ。わたしは準備できたから、もう始めちゃうね」


 そのままレティさんは空へと飛びあがる。

 羽を動かし始めたので胸のあたりは離れたけど、今度は太ももの柔らかさを強く感じてしまう。

 レティさんの足は、足首あたりは硬そうな雰囲気だけど、膝から上あたりはとても柔らかい。

 空を飛ぶ感覚の気持ちよさも感じていたけど、ぼくはレティさんに触れている部分を主に意識してしまっていた。


 少したって気が付いたけど、勢いよく飛びあがっていたのに全く負荷のようなものを感じなかった。

 空気抵抗があったり、しっかり掴まれているレティさんの足からぼくのお腹あたりに苦しさを感じたりもしていない。


「すごいですね。空を飛んでいるのに、全く負担がありません。これもレティさんの力なんですか?」


「そうだよ。ハーピーはどれだけ速く飛んでも自分に負担はかからないんだ。わたしは一緒に飛んでいる人にも同じ効果を与えられるんだよ」


 すごい力だ。これなら重さが許す限り何でも運べるんじゃないか?

 人の重さを運べることはぼくで証明されているし、いろいろと応用が利きそうな気がする。


「そのおかげでぼくも一緒に飛べているんですね。それにしても、いい景色ですね。こんなに高く飛んだことは無いので、新鮮な感じがします」


「うんうん。そう思ったから、ユーリ君を誘ってみたんだ。空を飛ぶことも楽しいでしょ。ユーリ君なら、万が一の時でも大丈夫そうだから、一緒に飛んでみたくて」


 アクア水があれば空を飛べるし防御もできるから、そのあたりを考えてくれたのだろう。

 これがレティさんがいつも見ている景色か。

 綺麗な景色も楽しいけど、レティさんと同じものを見られているという感動の方が大きかった。


 しばらくレティさんと一緒に飛んで回り、最後にアリシアさんたちの家まで飛んで連れて行ってもらった。


「昨日もここに来たことは知っているけど、今日はお姉さんの部屋を案内しちゃうね」


 レティさんの部屋に案内されると、そこにはいくつかの縫いぐるみがあった。

 それ以外には、特に物らしい物はなく、アリシアさんと似たような雰囲気の部屋だった。


「ぬいぐるみ、お好きなんですか?」


「そうだね。可愛い物は結構好きかな。だからユーリ君の事も大好き」


 ぼくは可愛い物のカテゴリーなのか。やっぱり犬猫みたいに思われてないかな。

 それでも、レティさんに大好きだと言われることはとても嬉しい。ぼくもレティさんの事が大好きだ。


「ありがとうございます。レティさんにいろいろお返ししたいですし、何かこういう物を買ってきましょうか?」


「別にいいかな。それより、わたしの毛づくろいを手伝ってくれないかな」


 レティさんにそう言いながらブラシを渡される。

 それを受け取ったぼくは、まず翼をブラッシングする。

 いきなり強くしては駄目そうだから、レティさんの反応を見ながらゆっくり強くしていくことに。


「うんうん。上手だよ、ユーリ君。翼だけじゃなくて、もっといろいろお願いね」


 そう言われてしまったので、太もものあたりもブラッシングする。

 頑張って無心で行おうとするけど、レティさんの声とか息遣いとかを聞いていると変な気分になりそうで困ってしまう。


 しばらくの間頑張ってブラッシングして、全部終わらせた。

 ぼくは疲れ切ってしまって、少し深呼吸していた。


「ありがとう、ユーリ君。これでレティさんポイント100点だから、うんと褒めちゃうね」


 そのままレティさんに頭を胸元に抱えられながら背中を撫でられる。

 レティさんの体温と柔らかさをしっかり感じてしまって、変な気分になりそうになるけど、がまんする。


「ユーリ君、いつも頑張っていて偉いね。それに、今日もお姉さんをしっかり楽しませてくれた。ユーリ君なら、少し位わたしにわがままを言ってくれてもいいからね。ユーリ君の事はいつでも見守っているから、安心して生活してね。わたしたちの可愛い弟子さん」


 レティさんの声色は本当に優しくて、とても落ち着いていた。

 しばらくそうした後、レティさんはゆっくりとぼくの事を離す。

 少しだけ名残惜しさを感じてしまって、レティさんの方をじっと見てしまう。


「ユーリ君、今日は楽しかったよ。これからもよろしくね。じゃあ、この辺でお別れかな」


 そのままレティさんにステラさんの家まで送って行ってもらった。

 レティさんはとっても優しい人だと改めて感じた。優しい師匠が2人もいて、本当にいい環境にいると思えた。今日もいい日だったな。

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