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邪悪ヤンデレ厄災系ペットオメガスライム  作者: maricaみかん
3章 頂へと歩むオーバースカイ

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裏 感情

 ミアとユーリの出会いは、アクアが意図したものではなかった。

 さっきまでどころか、今でも敵としか思えない相手を助けようとするユーリのお人好しぶりにアクアは呆れる。

 同時に、そんなユーリだからこそ今でも自分と一緒に居てくれるのだという考えが浮かんだ。


 ユーリは覚えていないだろうが、ユーリの両親とユーリが離れ離れになるきっかけはアクアだったのだ。

 それでも、ユーリはアクアを恨むどころか、それまでよりずっと大切にしていた。ユーリのその姿勢がきっかけで、自分に感情が生まれたのだとアクアは認識していた。

 ユーリは今も昔もアクアにとって大切な飼い主で、ユーリにとってアクアは同じように大切なペットに違いない。アクアはユーリを守るとの誓いを再び確認した。


 ユーリが自分を大切にしてくれている事はミアの契約者とユーリの問答にも表れている。モンスターと人との関係を重要視していることからも明らかだ。

 アクアはユーリに惚れ直したような心地で、ユーリの一言一言を楽しんだ。


 だが、ミアがユーリに対して特別な契約を交わしたことはアクアにとってとても大きい不満になる。

 それでも、アクアはユーリとミアの契約を妨害しなかった。

 その理由として、ミアの姿にユーリと出会えなかった自分の姿を見たことが大きい。ユーリと出会えなかった自分にはきっと何もなかった。

 ミアには今も何もないはず。ミアはそんな状況の中でユーリに一筋の希望を抱いたのであろう。

 だから、ミアは自分の命をユーリに捧げてもいいと感じたに違いない。

 アクアはミアにはっきりと同情していて、それゆえにユーリにミアの力をしっかり使うように言った。


 それから、ミアの力が身体強化の力だとはっきりしたことで、アクアはユーリに対してさらなる強化を施すことに決めた。

 これまでは、契約技を持っていない人間として違和感のない範囲でユーリを強化することしかできなかった。これからは、もっと強くユーリを強化することができる。

 そうすることで、いままでより格好いいユーリの姿を見られるはずだ。アクアは強くなったユーリを妄想しながら、ユーリの体をさらに調整した。


 アクアの狙い通り、ユーリはとても強くなった。

 しかし、それによってオーバースカイの連携が乱れていることは問題だった。

 ユーリが強くなって活躍していることはとてもいいことだ。アクアはそう感じながら、ユーリを直接支えたいという欲求の行き先を失いかけていることを危惧していた。

 アクア自身がユーリに並ぶほど強くなってしまうと、誰かに違和感を持たれかねない。


 アクアにとって、ユーリの全力でさえ自身の1割程度にすら遥かに及ばないことははっきりしていた。

 その全力をいかんなく発揮してしまった未来で、ユーリと離れ離れになるかもしれない。

 アクアはその恐怖と、ユーリの隣でユーリを支えたいという思いの間で板挟みになっていた。


 そんな中で、アクアは自分が操作している人物を強化するという考えを思いつく。

 カタリナを強化する手段はすでに構築していて、後は時間を待つだけとなっていた。

 ユーリヤを強化する手段もアクアの頭の中には有ったが、アクアの中に有るほんのわずかな良心がそれの実行を止めていた。

 ユーリの親しい人を新しく利用することはやめておく。今のアクアはそうすることに決めた。

 フィーナはすでにユーリの役に十分たっていると判断できたので、強化を検討はしないでいた。


 ユーリの周りの人間の強化を検討していく中で、アクアは本当の自分をユーリにさらけ出してしまいたいという思いを感じていた。

 ユーリの周りの人間を操っていることだけは、絶対に知られてはならないとの思いは変わっていない。

 だが、オメガスライムの性能を存分に発揮した姿をユーリに見せてみたいという考えがアクアにはあった。


 ユーリはオメガスライムであるはずの自分を可愛がってくれるだろうか。頼ってくれるだろうか。

 考えたくないことではあるが、恐れてしまうだろうか。嫌われてしまうだろうか。

 アクアはとても悩みながら、ユーリとオメガスライムの性能を生かした遊びをしたいという願望と向き合っていた。

 

 それからしばらくたって、アクアとユーリが二人きりで過ごす日がまた訪れた。

 アクアはユーリともっと距離を近づけたいと考え、積極的に自分から近づいていった。ユーリはアクアのなすがままになっていて、アクアはユーリの信頼を感じて満足していた。

 そんななか、ユーリに対してアクアが冗談で言った、ユーリを食べるというセリフを受けて、ユーリは真剣に考えていた。

 アクアはユーリを食べてしまう気など全くなく、本当にユーリをからかっていただけであったが、ユーリのその姿を見て、少しだけユーリを食べることを考えてしまう。

 結局、ユーリと離れ離れになることの方が、ユーリと1つになることのメリットを上回るとアクアは結論づけた。

 だが、ユーリの台詞である意識を残したまま1つになるという案を聞いて、アクアはその未来も魅力的だと感じた。


 ユーリの考えていることをずっと感じて、ユーリの望みを叶えたり、ちょっと裏切ってみたり。

 ユーリに自分の感情を送り込んで、ユーリを大好きだということを直接伝えたり、ユーリの感情を受け取ってユーリの大好きを感じたり。

 それなら、他の人たちを一緒に食べてしまってもいい。カタリナも、ユーリと1つになることをきっと喜ぶ。

 ユーリヤに本当の人格を作ってみることもいい。フィーナの本当の感情を伝えさせるのもいい。

 とてもたくさんのアイデアが思いついて、アクアは幸せな妄想に浸った。


 それでも、ユーリを食べてしまうことはきっとない。ユーリと別々の存在だからこそできる触れ合いを、目いっぱい楽しむのだ。アクアはそう決めた。

 だけど、ユーリが死んでユーリと離れ離れになる未来の避け方は分かった。

 いつかユーリが生きていられなくなった時には、ユーリを食べて永遠にユーリと1つになる。そんな未来は来ないに越したことはないけれど。アクアはずっとユーリと触れ合っていられるように願った。


 それから、ユーリが自分のことが大好きだと言った。最近のユーリは好きだと積極的に伝えてくれるから嬉しい。アクアはユーリの好意が本当に喜ばしいと感じていた。

 ユーリは本当にいろいろと変わった。これからも変わっていくだろう。

 それでも、ユーリがアクアの事を好きでいてくれることには変わりない。アクアはそう信じていた。


 それからアクアは、ユーリに対してどの程度力をさらけ出すか考えるために、ユーリに少しづつ探りを入れていった。

 ユーリは本当に自分の事を受け入れてくれているということが分かったアクアだが、どこまで力を発揮するかの考えはまとまらなかった。

 ただ、ユーリに対して積極的に迫っても、ユーリを完全に拘束してもユーリは苦しそうにするどころか、心地よさすら感じている様子だ。

 自分の体を心地よいと感じるようにユーリの体を調整しているが、それでユーリの感情を操作しているわけでは無い。

 つまり、ユーリの恐怖を消し去れるわけでも、ユーリの好意を生み出せるわけでもない。

 そんな中でも、ユーリは自分に何をされても受け入れている。アクアは頭の中で何かがはじけそうな感覚になっていた。


 その日にユーリが発した言葉、アクアが世界を滅ぼす怪物だとしても離れられない。

 その言葉を聞いたアクアは途轍もない歓喜に襲われていた。

 ユーリの前でははしたない姿を見せられないと考えて、動きや表情を抑えていたアクアだが、それからずっとユーリとの未来について考えていた。

 本当に世界を支配して、ユーリと自分だけの楽園を作ってしまおうか。そんな欲求すら芽生えていたが、ユーリの周囲に対する好意を台無しにすることは避けようと思いなおした。


 それから、アクアはユーリの周りにいる人たちについて考えていた。


 カタリナは、ユーリにとって大切な幼馴染で、ユーリをこれまでとても助けてきた存在。

 アクアにとっても今でも大切だから、いつか和解できないかという希望が消せないでいた。

 カタリナに体を返して、ユーリとカタリナと一緒に過ごす。そうできたらどれだけ幸せだろう。

 でも、カタリナはきっと許してくれない。怖さと罪悪感からカタリナの感情を読んでいないアクアだが、カタリナに嫌われてしまっていると確信していた。


 ステラは、ユーリの尊敬する先生で、今は帰るべき場所を守る人。

 アクアはステラに恨みがあったわけでは無いから、必ずしも支配しなければいけない人ではなかったのではないかと考えた。

 ステラは今でも眠っているだけのような状態だから、体を返すことはできる。

 問題は、その間の記憶の齟齬をどう埋めるかということだった。

 アクアの持っている記憶をステラに植え付けるということも選択肢としてあったが、実験が足りないからうまくいくとは限らない。

 アクアは少なくとも今はステラに体を返さないと決めた。


 アリシアとレティは、ユーリの尊敬する師匠。

 アクアはアリシアとレティを取り込まなくて済む未来が来てほしいと考えていた。

 2人がユーリを傷つけようとしたら、自分は必ず2人を支配する。それを確信していたからこそ、ユーリの尊敬を損なわない2人でいてほしいとアクアは願った。


 ユーリヤは、ユーリの大切なパーティメンバーで、守るべき相手の1人。

 ユーリヤというキャラクターを作ったことは正解だったと考えているアクア。

 だが、ユーリの好意を受け入れる器としてのユーリヤは、アクアほど気に入られていない。

 人間としての感情を学べなかった以上、ユーリヤを単なる人間では無くしても良いかもしれない。

 アクアはユーリヤとユーリが結ばれる未来が来ないと予想していた。

 だから、ユーリヤに人間としての役割を求めることをやめるか検討を始めた。


 サーシャは、ユーリにとってよく支えてくれる人。

 サーシャがユーリに仕掛けた謀略は許せないアクアだが、サーシャを憎んでいるわけでは無い。

 だから、サーシャの人格を完全に消し去ろうとはしなかった。

 サーシャが悪辣さを捨て去ることができたなら。アクアはほんの少しの期待を抱いた。


 ミーナは、ユーリにとってのよきライバル。ヴァネアは、今のところミーナのおまけ。

 アクアはユーリの格好いい姿を見るきっかけになったミーナに相応の感謝をしていた。

 またユーリとミーナが出会って、お互いに高めあう姿はきっと楽しい。アクアは未来に期待していた。


 オリヴィエは、ユーリもまだよく分かっていないはず。

 ユーリの事をおもちゃのように扱っているオリヴィエだが、ユーリは嫌がっていないし、ユーリを傷つける行動もしていない。

 また出会うことがあったとして、ユーリの事を大切にしてほしいとアクアは期待した。


 ノーラは、ユーリの新しいペットでとてもかわいい存在。

 出会いは偶然ではないにしろ、ユーリにとって大切な存在であることは間違いない。これからオーバースカイにとっても大切な存在になる。

 アクアはこれからのノーラを想像することを楽しんでいた。


 フィーナは、ユーリはきっとまだ同情半分で接している。

 とても役に立つ力を持っているフィーナだが、想像以上に大きな役に立っている。

 だから、フィーナに自分の幸福をおすそ分けしてもいいかもしれない。

 ミアとの出会いを経て、アクアはフィーナへの感情をはっきりとさせていた。きっと寂しかったはずだから、少しくらい幸せでいていい。自分の邪魔をしないなら。

 アクアは他者への共感の味を知った。悪くないが、ユーリといる喜びほどじゃない。そう感じたアクアだが、ユーリ以外の他者を見ることが、単なる退屈な作業ではなくなっていた。


 アクアはユーリ以外の他者について考えて、ほんの少しユーリ以外の事での喜びを理解した。

 ユーリが一番であることに変わりはないが、ユーリを幸せにしてくれて、自分の邪魔をしないのなら、必ずしも排除するべき存在ではない。

 そう考えるアクアには、わずかではあるが善性らしきものが生まれたのかもしれない。

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