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邪悪ヤンデレ厄災系ペットオメガスライム  作者: maricaみかん
3章 頂へと歩むオーバースカイ

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46話 異能

 ぼくたちは、いつものようにマナナの森でモンスター退治を行っていた。今日はモンスターが少なくて、予定と違うので、警戒を強めていた。


 しばらくマナナの森を探索していたが、特に何もなかったので、帰る準備を始めようとしたとき、突然モンスターが周囲に大量に現れた。ぼくたちはモンスターに完全に囲まれてしまっていた。

 どういうことだ。索敵は常にしていたし、出会ったモンスターもすべて倒していた。何より、これほどのモンスターがどうやって隠れていたというんだ。

 まさか、本当にモンスターというのは何もないところから発生するのか?

 いや、考察より先に、何とか退路を確保しないと。


「みんな、カーレルの街の方を突破しよう!」


 隙間なく囲まれていたので、とにかく一方向に集中して、どうにか囲まれている状況から出たかった。囲まれてさえいなければ、倒せない数ではなかったから、一度脱出してしまえば、逃げるにしろ、倒すにしろ、うまく出来ると考えていた。

 けれど、ある程度進んだころ、他の方向から寄ってくるモンスターが来る前に突破しきれない速度だと感じて、ぼくはとても焦っていた。

 アリシアさんたちがいればどうとでもなるだろう状況だったが、今はいない。1対1体は強いモンスターではないため、倒すこと自体は出来ているが、手数が足りない。

 アリシアさんたちほどとは言わないまでも、ぼくたちの足手まといにならない人があと1人いれば足りるのに!

 でも、そんな奇跡に賭けるわけにもいかず、何か手がないか考えながらモンスターを倒し続けていた。

 ぼく1人で逃げるだけなら簡単なことだが、そんなことができるわけがない。ぼく1人だけ生き残って何になるというんだ。ぼくは必死にモンスターを倒し続けるけど、状況は悪くなるばかりであった。


「あんた、1人で逃げなさい! あんたが助けを呼んでくれれば、みんな助かるのよ!」


「そうです! ユーリさん、急いでください! わたしたちなら、何とか耐えて見せますから!」


「カタリナもユーリヤもアクアが守る。ユーリ、心配しなくていい」


 みんながぼくを逃がすために嘘をついているというのはすぐに分かった。逃げるのがアリシアさんだったとしても、カーレルの街に着くまで耐えられるかすら怪しい状況なのに、ぼくが間に合うはずがなかった。

 みんなを見捨てて逃げるわけにはいかない。でも、この状況をどうやったら切り抜けられる。

 ぼくは必死に考えながら、何とかアクア水でみんなに攻撃が当たらないよう防御していた。

 時間稼ぎだけならなんとかできると思う。でも、どうにかして誰かに伝える手段がないと、じり貧になって終わるだけだ。

 他の誰かがここに来るという期待などできないし、来たとして戦力になる人かどうかは怪しい。

 ぼくは戦い方を時間稼ぎに切り替え、何か思いつくまで耐えるつもりでいた。


「そこの方、手助けします……! そこからあまり動かないでください……」


 突然女の人のような声が聞こえた。何か攻撃してくることはすぐに分かったので、巻き込まれないように、指示を守ることにした。

 すると、モンスターの1部が吹き飛ばされて、ぼくたちが頑張れば脱出できそうな隙ができた。ぼくたちはそれに合わせてモンスターの群れから脱出し、1方向にモンスターがいるという状況になったので、アクア水で壁を張り、動きを制限してから、正面の敵から順に倒していった。


 先ほどの女の人も手伝ってくれていたので、ずいぶん楽にモンスターを倒しきることが出来た。

 お礼を言おうと、その人に向かい合う。戦っていた時から思っていたが、契約技らしきものを使っているのに、モンスターを連れていない。どういう事だろう。

 それに、こんな人はカーレルの街にいるのだろうか。他の街からこのマナナの森に?

 いや、そんなことはどうでもいい。助けてくれたんだから、まずはお礼だ。


「あの、先ほどはありがとうございました。おかげで命拾いしました。あなたはぼくたちの恩人です。できる範囲にはなりますが、何かお礼をしたいと思いますから、何かあれば言ってくださいね。あ、ぼくはユーリと言います。繰り返しになりますが、本当にありがとうございました」


「ええ。あたしたちみんな、あなたに助けられちゃったわね。ありがとう。あたしはカタリナ。よろしくね」


「あ、ありがとうございましたっ。親切な方なんですねっ。わたしはユーリヤと言います。ユーリさんを助けてくれて、本当にありがとうございましたっ」


「うん。ユーリを助けてくれてありがとう。アクアはアクア。ユーリのペット。よろしく」


「みなさん、お礼を言ってくださるんですね……お礼ですが、まずは近くの街へ連れて行っていただけませんか……あ、わたしはフィーナと言います……みなさん、よろしくお願いします……」


 フィーナさんは腰まである茶髪の、物静かそうな雰囲気の女の人だった。ぼくたちと近い年に見える。

 ノーラはフィーナさんの方をあまり見ず、ぼくにずっとひっついていた。

 フィーナさんの契約技らしきものは気になったが、今聞くようなことでもないと判断し、フィーナさんをカーレルの街へと連れていくことにする。


「フィーナさん、ぼくたちが拠点にしているカーレルの街という街が近くにあります。案内しますから、一緒に来てください」


「わかりました……ユーリさん、よろしくお願いします……」


「フィーナさん、すみませんが、冒険者組合への報告に付き合ってもらえませんか。フィーナさんがいれば、スムーズに進むと思いますので」


「かまいません、ユーリさん……わたしでお役に立てるなら、何でも言ってください……」


「それはこちらのセリフですよ。フィーナさんには今回助けられましたからね。その恩の分くらいは働きますよ」


「そうね。あたしたちは恩知らずじゃないから、滅茶苦茶言わない限りは、あなたの力になるわよ」


「そうですっ。みなさん、あなたに助けられたんですからっ。フィーナさん、ユーリさんは頼りになる方ですから、安心してくださいっ」


 ぼくたちに向き合うフィーナさんの表情は暗い物だ。恩人がこんな顔をしていると心配になる。何か悩み事があるのなら、できる限り解決してあげたい。


「わかりました……ですが、わたしはあまり人と関わるつもりはありませんから……みんな、わたしを恐れていってしまうだけなんですから……」


「ぼくがフィーナさんを恐れることなんてありませんよ。ぼくたちに攻撃してきたり、何かひどい犯罪を犯しているなら話は別ですけど。関わるのが嫌なら無理は言いませんけど、ぼくはフィーナさんと、もっと仲良くなりたいです」


「ユーリさん……わたしの力が、おかしなものだと知ってもですか……?」


 やっぱり、あの力は契約技じゃないのか。

 でも、フィーナさんは人と関わりたくないといいながら、ぼくたちを助けてくれた人だ。何か人から外れた力を持っているくらいの事なら、フィーナさんを恐れる理由にはならなかった。


「契約技じゃないんですね、その力。でも、関係ありませんよ。フィーナさんはぼくたちを助けてくれた優しい人です。だから、仲良くしたいんです。あなたが何者であれ、その気持ちは変わりませんよ」


「そうですか……今は、その言葉を信じます……ユーリさん、短い間かもしれませんが、よろしくお願いします……他の皆さんも……」


「よろしくね、フィーナさん」


「ええ、よろしく」


「よ、よろしくお願いしますっ、フィーナさん」


「フィーナ、よろしく」


 ノーラも鳴き声であいさつしている感じだった。

 それからぼくたちはフィーナさんを連れて組合へと戻り、今回の件をサーシャさんに説明する。


「なるほど、モンスターが突然、ということですわね。良かったですわ。皆様がご無事で。ユーリ様、わたくしを残していなくなるようなこと、しないでくださいまし……」


 サーシャさんはすがるような顔をこちらに向けてくる。この人を悲しませないためにも、もっと強くなってみんなを守ってぼくも生き残れるようにしないと。


「今回はちょっと危なかったですけど、今回みたいな事態には対応できるようにしておくつもりです。ぼくに力を貸してくれるみんなのためにも、ぼくはみんなと絶対生き延びて見せますから」


「そうしてくださいまし、ユーリ様。フィーナ様とおっしゃいましたわね。ユーリ様方を助けて下さり、大変感謝しておりますわ。何でもとはいきませんけど、それなりに便宜を図ることは可能ですわ。何かありましたら、言ってくださいまし」


 その言葉を受けて、フィーナさんは少しの間思案する。先ほどよりは明るいけど、まだ暗い顔をしている。悩み事なら解決して、フィーナさんの笑顔が見られるといいな。


「そうですね……ユーリさんたちと、チームを組むことは可能でしょうか。ユーリさん、今回のお礼は、それでどうでしょう……」


「ぼくは構いませんけど。そんなことで良いんですか?」


「はい……ユーリさんが、わたしを受け入れてくれる人ならば、ユーリさんの力になることが望みです。ですから、一度私と組んでいただけないでしょうか……」


「ぼくは歓迎しますよ。でも、みんなにも確認しておかないと。どうかな?」


 ぼくはみんなに確認する。みんなの表情は明るいから、きっと受け入れてくれると思う。


「あたしは別にいいわよ。それなら、ステラさんの家に住めるかどうかも、確認しておかなくちゃね」


「わ、わたしも歓迎しますっ。ユーリさんの力になってくれる人は、何人いてもいいと思いますっ」


「アクアも構わない。ユーリをちゃんと助けてくれるなら」


「ここで断ったら、わたくしが悪者ですわね。構いませんわ。アリシア様とレティ様にも、このことは伝えておきますわ」


「そういう事だから、フィーナさん、よろしくね。頼りにしているし、頼りにしてくれたら嬉しいな」


「みなさん、ありがとうございます……これから、よろしくお願いします……」


 それから、ステラさんの家に住ませる許可も得て、フィーナさんと親睦を深めるために2人で話をすることにした。


「フィーナさん、男と2人で悪いとは思うけど、いきなりみんなと話すのも難しそうだったから、まずはぼくと話してほしい。フィーナさんをチームに加えるうえで聞いておきたいんだけど、フィーナさんはどんなことが出来るの?」


「いえ、配慮してくれてありがとうございます……わたしのできる事は、衝撃を飛ばすことです。上手くやれば、固いモンスターでも一撃で葬ることが出来るんです……」


 話を聞く限りだと、とても強い能力に思える。アクア水で防御することはできるだろうか。それが出来ると出来ないとでは、運用の仕方が変わってくるだろうから、1度試してもらおう。


「とても強い能力なんですね。だったら、フィーナさんに頼る機会も多いかもしれませんね。他に、運動なんかは、どれくらい出来ますか?」


「普通の人よりはかなり出来る方だと思います……衝撃の技で、大抵の敵は倒せるので、敵と距離を取ることが主ですが……」


 今の説明でははっきりとは分からないけど、顔を見る感じだと身体能力の方も嫌っているように見えるから、あまり突っ込んだ質問をすることは気が引ける。


「なるほど。自分で敵と距離を取れるなら、だいぶ戦術の幅が広がります。連携の練習はしておきたいですけど、フィーナさんはぼくたちにとって、とてもいい仲間になってくれる気がします」


「ありがとうございます……ユーリさん、これからよろしくお願いします……きっと、あなたの力になってみせますから、わたしの事、化け物だと思わないでください……」


 フィーナさんはとても必死そうな顔をしている。ぼくはフィーナさんがこれまでに何度も化け物扱いされているのだろうと感じて、絶対にこの人を受け入れると決めた。


「大丈夫です。フィーナさんみたいな優しい人を化け物だなんて、思いません。

 それに、仮に化け物だったとしても、それでフィーナさんを敵だと思うようなこと、絶対にしないって約束します。

 だから、ぼくたちと仲間になってください。そして、ぼくにフィーナさんの力にならせてください」


「ユーリさん……その言葉、絶対に嘘にしないでください。そうである限り、どんなことをしてでも、あなたの力になりますから……よろしくお願いします……」


「はい。フィーナさん、これからよろしくお願いします。ぼくたちの仲間として、末永い関係にしましょうね」


 そう言ってぼくはフィーナさんに握手を求める。フィーナさんはぼくの手を握り返してくれた。


「人の手って、暖かいんですね……ユーリさん、また何度でも、この手を繋ぎましょうね」


「もちろん。フィーナさんが望むなら、何度だって、いつだって構いませんよ。あ、でも、戦闘中は勘弁してほしいかもしれませんね」


「ふふ……ユーリさん。わたしはあなたを信じます。信じたいです。だから、きっと、わたしをずっと必要としてください……」


「はい。ぼくもフィーナさんを信じます。フィーナさんを頼りにするし、頼りにされるように頑張りますから」


 フィーナさんはぼくと出会ってから初めて微笑んでくれた。またこんな顔が見られるように頑張ろう。

 フィーナさんと言う新たな仲間も加わったことだから、ぼくたちはもっと強くなれるはずだ。

 みんなを失わなくて済むように、強くなるんだ。そして、みんなとずっと一緒にいてみせる。

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