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邪悪ヤンデレ厄災系ペットオメガスライム  作者: maricaみかん
2章 水刃のユーリ

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41話 新たなペット

 ぼくは王都から離れてカーレルの街へと向かっていた。

 カタリナにユーリヤやアリシアさんとレティさん、サーシャさん。カーレルの街で再会するのが楽しみだった。ぼくにも大切な人がこんなにできたんだと思うと嬉しかったし、王都でミーナと再会できた他に新しい出会いもあった。

 ミーナとまた戦うのは楽しみだし、ヴァネアがどんなモンスターなのかもっと知ってみたい。オリヴィエ様との出会いも、悪い物ではなかった。

 改めて、王都での大会に出てよかった。そう思い直していた。


 ぼくが考え事をしていると、近くに猫のようなものが寄ってきた。黒い毛並みをしたその猫の尻尾は2つに分かれていて、耳もそれぞれ2つあるような形だった。

 モンスターだと判断したぼくは戦闘態勢に入ったが、モンスターはすぐにひっくり返ってお腹を見せてきた。

 念のためにステラさんをアクアに守ってもらいながら、いつでもアクア水を出せるようにしておく。

 そして、そのモンスターに近寄ると、そのモンスターはゆっくりとボクに近づいてきて、ぼくに舐めかかってきた。

 ちょっと警戒したが、痛みやかゆみは無い。なのでもう少し様子を見ていると、ぼくの足に頭をこすりつけてきていた。

 かわいらしいと感じたぼくは、そのモンスターを撫でまわしていたが、心地よさそうな表情で猫なで声を出していた。

 ぼくの様子を見たアクアが近寄ってくると、そのモンスターはまた、ひっくり返ってお腹を見せていた。


「ユーリ、そのモンスターはもう上下関係が分かってるみたい。アクアには逆らえない。ユーリ、気に入ったのなら、連れて帰るといい」


 上下関係って、アクアが上でこのモンスターが下ってこと? アクアのイメージとは一致しないけど、アクアが大丈夫というなら、ぼくはこのモンスターを連れて帰りたかった。


「ねえ、ぼくについてくる気はある? 言葉が分かるなら、うなずいてほしいな」


 そうぼくが言うと、モンスターはうなずいてくれた。またぼくに寄ってきて、ゴロゴロと声を出しながら、ぼくに全身をこすりつけていた。

 この子はぼくに着いてくるつもりらしいし、名前を付けてあげるのもいいかな。


「ねえ、きみの名前を付けようと思うんだけど、ノーラで良いかな?」


 モンスターはすぐにうなずいた。これからこの子はノーラだ。

 ノーラはぼくの体を器用に登って、ぼくの頭の上に座り込んだ。ちょっと重いような気もするけど、これくらいなら大丈夫かな。

 ステラさんの近くへノーラと一緒に行き、ノーラを紹介する。


「猫型モンスターですか。モンスターの中では、人と一緒に居ることが多い種類です。ですが、そんな姿の猫型モンスターは初めて見ましたね。新種でしょうか。いえ、考察は後でもいいですね。ノーラちゃん、よろしくお願いしますね」


 ノーラは鳴き声で返事をした。返事で良いんだよね。言葉は通じているみたいだし。

 ステラさんが手を近づけると、ノーラは素直にそれを受け入れていた。

 猫ってよく引っかいたりしてくるみたいだけど、ノーラはおとなしいな。見た目も可愛らしいし、ぼくには既にノーラがとてもかわいく思えていた。


「ユーリ、ノーラをペットにするのはいいけど、アクアが1番。それは忘れないで」


「ノーラにはかわいそうだけど、それは当たり前だよ。アクアとノーラなら、アクアを優先するかな」


「ならいい。ノーラ、分かった?」


 ノーラは震えあがりながらうなずいていた。アクアってそんなに怖いのかな? ぼくにはいつものアクアにしか見えない。

 ぼくの知り合いでは他のみんなも特に怖がっている様子はないし、モンスターがアクアにおびえているところも見たことがない。何かノーラにしか分からないことがあるのだろうか。

 まあいいか。アクアが妙なことをしているわけでもないだろうし。


 ノーラを新しく仲間に加えてしばらく。ぼくたちは、帰った後ノーラをどうするのかを相談していた。

 モンスターであるノーラだけど、戦えるのかはよくわからないし、ノーラがどうしたいかにもよる。ノーラには言葉が通じているみたいなので、ノーラに確認してみるのもいいかもしれない。


「ノーラはステラさんの家に連れて行ってもいいですか? アクアの時は特にしつけとかに困った記憶はないですけど、モンスター相手だと、気を付けないといけないものでしょうか」


「ノーラちゃんはとても賢いと思いますよ。ですから、先に説明しておけば、家を汚されたりする心配は少ないのではないのでしょうか。トイレとか、家でのルールを先に考えておきましょうか。あ、ノーラちゃんを家につれてくることは構いません。外に放り出すのは、さすがにどうかと思いますし」


「カタリナ、猫が好きだから喜ぶかも。ユーリヤはどうかな」


 カタリナは確かに猫が好きだけど、モンスター相手でも大丈夫なのだろうか。

 それに、猫の外見が好きなのであって、猫を飼いたいという雰囲気ではなかったからな。

 まあ、ぼくがちゃんと世話をすれば済む話か。それより、ルールをどうするかだな。


「ノーラ、トイレは家の中にいる時と街の中では、決められた場所じゃないとだめだからね」


 ノーラは軽くうなずいた。まあ、今もトイレに行くときは、ちゃんと処理しやすいようにしてくれているし、大丈夫だろう。少なくとも、馬車の中でとか、道で粗相をしたことはない。

 ノーラは大体いつも僕のそばに居るが、トイレの時はちゃんと合図してからするし、食事も好き嫌いをすることはない。本当に手がかからなくて、ぼくはノーラを信頼しても大丈夫だと思い始めていた。


 カーレルの街への道中のある日。ぼくたちは複数のモンスターに襲われていた。すると、ノーラがモンスターの前に飛び出していった。


「ノーラ、危ないよ!」


 ノーラを心配していたぼくだったが、ノーラはとても素早い動きでモンスターたちを仕留めていく。

 ぼくたちの援護が全く必要なさそうなくらいで、なぜあの日いきなり降参したのかわからないくらいだった。キラータイガーより数段強いんじゃないかな。

 まだ余裕もある雰囲気だし、もしかしたら人型モンスター相手でも勝ててしまうかもしれない。

 ノーラのあまりの強さに驚いていたぼくだったが、モンスターを倒した後、ぼくに甘えてきている姿を見て、ノーラを疑う気が失せてしまう。


「ノーラ、ぼくたちを守ろうとしてくれたんだよね。本当にありがとう。ノーラをペットにできて、ぼくは幸せだよ」


 ノーラは自慢げな顔をする。ぼくはノーラの表情がなんとなくわかるようになっていた。

 ノーラはぼくが離れた後にぼくを見つけるととてもうれしそうな顔をするし、何かあるたびにぼくに体をこすりつけてくる。そういう時は大体いつも楽しそうだ。

 ノーラを撫でまわしていると、アクアも横に寄ってきて撫でることをねだってくることがよくあった。

 でも、今は状況を分かっているみたいで、ノーラを撫でまわしていても、アクアはねだってこなかった。


「ノーラ、ユーリに褒めてもらってうれしそう。ノーラ、撫でられた分はちゃんとユーリの役に立って」


 ノーラは即座に肯定の鳴き声を上げる。ノーラはアクアに対してはまるで舎弟のようだ。ぼくの知らない縄張り争いでもあるのだろうか。アクアにそういうイメージは全然ないんだけどな。

 それより、せっかく今は我慢してくれたんだから、アクアを後でちゃんとかまってあげないと。

 アクアはぼくがすることなら何でも嬉しそうだけど、アクアが言い出す前にぼくから始めたほうが嬉しそうだから、こういう機会でしっかり喜ばせてあげたい。

 それは後のことにして、ノーラはとても強いみたいだけど、ぼくたちが冒険者活動する間、家で待っているよりついてくる方が良いかもしれないな。確かめてみよう。


「ノーラ、そんなに戦えるのなら、ぼくたちが戦うために出かける時もついてくる? 嫌なら、家で待ってくれていいよ」


 ノーラは全部言い終わる前くらいから肯定の返事をしていた。だったら、ノーラと一緒に戦う訓練をしないとな。カタリナもユーリヤも、しっかり慣れてもらわないと。


「ノーラちゃんは本当に強いですね。やはり新種でしょうか。これほど強いなら、何か情報があってもおかしくないはずですし」


 ノーラが新種かそうでないかは、ノーラを信頼するかどうかには全く影響はないけど、新種じゃないとしたら、好みとかすでに分かっているかもしれないからな。

 ぼくはすでにノーラの事が大好きになっていたから、できるだけ喜ばせてあげたかった。1回カーレルの街に帰ったら調べてみようかな。


 その後、ノーラがトイレで離れている間に、アクアの事を思う存分撫でていた。アクアはとても満足気で、ぼくまで嬉しくなった。


「ユーリ、ノーラをペットにしても、ちゃんとアクアの事を可愛がってくれてる。少し不安だったけど、やっぱりユーリは最高」


 アクア、少し不安だったのか。気づかなかったな。

 でも、せっかく言葉にしてくれたんだから、しっかりアクアに返したかった。

 アクアに感謝を伝えるための具体的な行動を考えた結果、頬へのキスになった。

 これまでにも撫でたり抱きしめたりはしていたから、新しい行動をと考えた結果だ。

 少し恥ずかしかったけど、決意を込めてアクアの頬にキスをした後、アクアにいつも一緒に居てくれている事への感謝を伝えた。


「アクア、ぼくのペットになってくれてありがとう。アクアがいたから、ぼくは頑張ろうって思えたんだ。戦闘でも、生活でも、アクアにはいつも支えられているよ。アクアとの契約でもらったアクア水も最高だよ。あれがあったから、ぼくはここまで強くなれたし、誰かを守ることもできたんだ。アクアはぼくにとって、最高のペットだよ」


「ユーリ! ユーリもアクアにとって、最高の飼い主。ノーラにとってもきっとそうだから、ノーラの事も大切にしてあげて。もちろん、アクアが1番だけど。ユーリ、大好き!」


 そう言ってアクアはぼくに抱きついて頬にキスを返してくる。ぼくもアクアの事を抱き返して、しばらくアクアとくっついていた。

 ノーラが帰ってきても、アクアはずっと僕に抱き着いていた。ノーラはアクアの邪魔をしないように僕に体をこすりつけてきていた。


 ノーラはとてもかわいいし、良い出会いだったのは間違いない。

 でも、アクアとの絆を再確認して、ぼくにとって、アクアとの出会いが1番だったという思いを確かにしていた。

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