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邪悪ヤンデレ厄災系ペットオメガスライム  作者: maricaみかん
2章 水刃のユーリ

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裏 ユーリヤ

 ユーリヤなどという人間はそもそも存在しない。ユーリヤは、アクアが溶かし殺した死体から作成した肉の人形でしかなかった。

 アクアには、ステラやカタリナとしてユーリと接する中で、自分の思い描いたキャラクターでユーリと接してみたいという欲望ができた。

 ユーリヤという人格は、アクアがユーリと出来るだけ近づいてみたいという欲求から作り出したペルソナだった。だから、ユーリに対してユーリヤは強く距離を縮めていた。

 また同時に、人間としてユーリと同じものを見てみたいというアクアの欲望の形でもあった。そのために、モンスターとしてではなく人間としてユーリと接していた。


 ユーリとユーリヤの出会いは必然だった。アクアとしてユーリの動きを知っていたから、その動きに合わせてユーリヤを動かし、また、彼女に対して襲い掛かる、これもまたアクアが作り出した食虫植物型のモンスターも動かす。

 そのモンスターは、ユーリにユーリヤを助けさせてユーリヤに対する愛着を持たせると同時に、アクアがユーリヤを生み出すために出した犠牲をごまかすための便利な駒だった。

 実際に組合ではこのモンスターが行方不明事件の犯人であると結論付けたし、ユーリはユーリヤを受け入れていた。


 ユーリヤの顔は、アクアから見て恐らくユーリの好みだろう形にしたし、実際にユーリはユーリヤの顔を美人だと思っているようだった。

 ユーリヤという名前も、ユーリとそっくりであることからつけられた名前で、それによってアクアはユーリとお揃いになっているような感覚が得られた。

 ユーリヤがユーリに好意的なのは当然の事である。アクアはユーリのことを嫌いなキャラクターなど、とても演じる気になれなかったのだから。


 ユーリヤの戦闘スタイルは、ユーリたちのパーティに足りない役割を満たすために、遊撃という形をとれるようにしていたことが目的の1つ。

 ほかに、戦い方が特殊なことや過去が見つからないという点から、密偵や暗殺者といった警戒が必要な人間だという疑問を持たせること。

 それによってユーリヤがユーリのことを知り過ぎているという疑問や、ユーリヤのなにもかもが謎に包まれているという点から目をそらさせて、本命であるユーリヤがアクアのアバターであるという事実から目を背ける狙いもあった。


 ユーリヤという役割は、ユーリと過ごすうえでたくさんの喜びをアクアに与えてくれた。ユーリに襲い掛かる敵を足止めするという形でない、直接ユーリの動きをサポートする喜び。

 肉の体でユーリと触れ合う時の、アクアとしてのユーリの感じ方とは違うユーリの感触や体温に触れられるという喜び。

 自分の考えたキャラクターがユーリに受け入れられているという喜び。本当に様々な喜びがあった。ユーリヤを生み出してよかった。アクアはユーリヤとしてユーリに出会ってすぐにそう思っていた。


 ユーリはユーリヤの事を本当に信じていた。他の人たちはユーリヤの事を怪しんでいる様子だったにもかかわらず、それらの疑問をすべて気にすることなくユーリヤをチームに迎え入れた上で、ユーリヤのやろうとすることをほとんど受け入れていた。

 ユーリに受け入れられなかった行動も、ユーリの性格からは当然と言えることで、だから、やはり自分とユーリの絆は本当なんだ。だからユーリヤはここまで簡単に受け入れられた。アクアはそう信じていた。


 ユーリのことをユーリヤとして支える時間はアクアにとって本当に楽しいものだった。

 特にドリアードとの戦いは最高で、アクアなら気にしないと思われていることに気づいたり、ユーリの考えに口出ししたり、人型モンスターを倒して沈んだユーリの心を慰めようとしたり。

 ユーリヤとしては出会ったばかりなのに、アクアはどんどんユーリの心に入りこめているような気がしていた。


 ユーリヤとしてユーリとデートした時は、完璧としか言いようがなかった。後ろから目を隠してみた時は少し警戒されたようだが、声を聴いたとたんに警戒をゼロにしていた。

 ユーリヤは本当にユーリに受け入れられている。デートの初めからいきなり楽しいことがあった。ユーリはユーリヤの外見が本当に好きなようで、出会ってすぐにユーリヤに見とれている様子だった。わざわざユーリの好みの外見を考えて作っただけのことはある。アクアは自分の仕事に満足していた。


 ユーリとの食事に向かう時、ユーリがユーリヤのおすすめならと疑っていない様子を見て、人間の体を作った甲斐があったと思えた。

 アクアの体にとって、害になるものなどないに等しい。だからこそ、アクアの味覚は未熟だった。ユーリヤの体を作ったことで、ユーリと似たような味覚を持ったアクアは、ユーリとともに食事をすることに新たな形の喜びを覚えていた。

 ユーリに食事を勧めて、その味をユーリと共有する。今まで食事など単なる栄養補給の擬態でしかなかったアクアに、ユーリの美味しそうな顔を眺めるだけではない、別の形の楽しみが生まれた。ステラやカタリナはユーリと味覚が違うようなので、これもユーリヤの体を作ってできた良いことの一つだった。

 ユーリの食べかけを食べることで、ユーリの唾液を取り込んでいるという感覚も、アクアにとっては面白かった。

 アクアは人間にはそういう事に喜びを覚えるものもいると知っていたが、味覚があることならではの感覚だと、知見を広めた思いだった。

 ユーリが自分の言葉で、ユーリヤの味を意識しているらしいことも面白かった。アクアとユーリは明確に違うものを食べていたが、これからはスライムの体で同じことをしても、ユーリは照れてくれるだろうか。アクアはスライムとして、初めて食事に興味を持った。


 次の店でユーリの服を選んでいることもアクアにとっては案外楽しい時間だった。人間は服を着ることの何が楽しいのか疑問に思っていたが、相手を自分好みに着飾るというのは案外面白い。

 さらに、ユーリヤの服を真剣に決めたユーリの選んだ服を着るということもアクアは楽しんでいた。ユーリは明らかにユーリヤに見とれていたし、ユーリの視線をこのような形で感じるのもいい。

 アクアとしては服に全く興味を持っていなかったが、こんな楽しみがあるなら、アクアとしてもユーリと出かけて、ユーリに服を選んでもらうこともいいかもしれない。

 さすがにスライムの体に見とれるということはないだろうが、ユーリの好みの服を着せてもらったら、ユーリもきっと喜ぶだろう。今回の経験を経て、アクアはそう確信していた。


 ユーリにマッサージをしてもらうということも楽しんでいた。スライムの体なら感じなかったであろう心地よさがあり、ユーリの恥ずかしがっている様子も、ユーリが自分に性欲らしきものを感じている様子も面白かった。

 アクアに性欲はなかったが、人間の性欲がどういうものかは知っていたので、ユーリの性欲がユーリヤに刺激されているというのはなんとなく心地よかった。

 ユーリの性欲をいずれ満たすことも面白いかもしれない。アクアの体でか、ユーリヤの体でか、はたまたそれ以外でか。いろいろと考えていたが、どれも別の形で面白そうだ。その時のユーリの顔は、きっと可愛らしいのだろうな。アクアは想像を深めていた。


 レニア山で起こった件も、アクアにとっては面白かった。ユーリヤとしてユーリをかばった際、ユーリヤが死んだと勘違いした時のユーリの顔には、とても昂るものがあった。

 自分の一部の事でこんなに悲しんでくれている。ユーリを悲しませるということに対しては少しばかり罪悪感があったが、それ以上に、弱々しいユーリの姿と、ユーリヤが無事と分かったユーリの喜びの姿を見た時の興奮は大きかった。

 その上、ユーリが指輪を使いこなすために訓練までしてくれて、指輪の力をさらに開放していたのだから、本当にアクアの喜びは大きかった。ユーリとの絆が本当にいろいろな形で深められる。

 何度も感じていたことではあるが、本当にユーリヤを作ってよかった。アクアは改めてそう感じていた。


 次の日、ユーリがユーリヤを家族同然だと言ったことで、アクアにはとても大きい達成感があった。アクアはペットとしてユーリとの関係を深めていたが、ユーリヤとして別の形でユーリとの関係をとても深めることが出来た。

 ユーリヤとしてユーリといること、アクアとしてユーリといること、両方同時にユーリといること。それぞれ別の形でユーリを味わうことが出来る。ユーリはアクアの事もユーリヤの事も疑わないので、もっといろんな遊びをユーリと出来る。アクアの前途は明るい。彼女はそう疑っていなかった。


 ユーリヤとしてユーリと手をつなぐとき、アクアとしてユーリと手をつなぐ時とは別の感覚があった。

 アクアとしてユーリと手をつないだ時は、ユーリの事を自分の中に受け入れるような感覚だったが、ユーリヤとしてユーリと手をつないだ時は、ユーリの体温とユーリヤの体温が溶け合うような感覚になっていた。

 本当に人の体というのは面白い。結局人間の体を得ただけでは人間の心まで分かったわけでは無かった。ユーリと同じ心になることはできなかったが、それでも人間の体を作った甲斐はあった。こんな感覚は、スライムの体では得られなかったのだから。アクアは満足感を覚えていた。


 ユーリヤの心臓の鼓動をユーリに感じさせている時も、人間の体を作ったからこそできる遊びだと感じていた。ステラやカタリナはそんなことをするキャラクターではないので、ユーリヤを作ったからこそできた。

 やはりオリジナルというのはいい物だ。自分好みに調整できる。

 ユーリヤの次を作るか、今のままを楽しむか、アクアは楽しく悩んでいた。


 ユーリと恋愛ごっこを楽しんでみるのもいいかもしれない。そう考えたアクアは、人間の恋人がするような行為をまねていった。ユーリには恋愛経験はないようなので、ずっとどぎまぎしていた。

 ユーリの感情を揺さぶるということの面白さも知ったアクアは、少しずつ、ユーリとの距離を縮めていった。そのたびにユーリは動揺していて、本当に楽しい思いをしていた。

 ユーリヤの部屋にユーリを連れて行ったとき、アクアがそばに居ないから寂しがっているユーリを見て、アクアは本当に興奮した。結局アクアはユーリヤとしてユーリと一晩過ごしたが、アクアとしてもユーリのそばに行って、抱きしめてやりたいくらいでいた。


 ユーリヤを作ったことで、本当にユーリのいろんな一面を知るきっかけになった。アクアはとても大きい満足感に満たされていた。

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