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邪悪ヤンデレ厄災系ペットオメガスライム  作者: maricaみかん
2章 水刃のユーリ

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裏 愉悦

 アクアはユーリと冒険者としての活動を進める中で、アクアとして、ステラとして、カタリナとして。それぞれの立場から、ユーリのサポートをすると決めていた。

 カタリナを解放することに未練はあったが、どうせカタリナとの関係は修復できないのだからと諦めていた。

 カタリナに対して罪悪感が浮かばなくはなかったが、ユーリに嫌われることの方が怖かった。ユーリに嫌われたら生きていけない。アクアにとって、それだけは絶対だった。カタリナに対する情は、それに優先するほどではなかった。


 冒険者としてユーリが活動を始める前に、アリシアとレティ、それにサーシャがサポートすることをステラとして取りまとめておいたアクアは、その3者を乗っ取るか考えていたが、カタリナに対する罪悪感が思い返されて、今のところは取りやめることに決めていた。

 念のために自身の端末で監視することにしていたが、アリシアとレティにしろ、サーシャにしろ、目的からすると、今すぐにでもどうにかするほどではないだろうという計算もあった。

 なにせ、アリシアとレティも、サーシャも、ユーリに冒険者として大成してほしいのは事実なのだ。ユーリに対して危害を加えて、それを遠ざけるほど愚かではあるまい。

 ステラとして接する中で、その程度には信用していた。万が一そんな愚かなことをするならば、即座に排除するつもりでもあったが。


 幸い、アリシアとレティは先達として良いユーリの手本になれそうだった。

 ユーリに何もかもをアドバイスするだけでなく、ユーリの仕事を奪うでもなく、ユーリの尊敬する冒険者としての立ち位置を確保していた。

 キラータイガーが大勢現れた時は、キラータイガーの排除の仕方について少し悩んだが、アリシアとレティのおかげで、その懸念は取り除かれた。

 これならば、少なくとも今すぐアリシアとレティをどうにかしなければならないなんてことはない。アリシアとレティは自身がオメガスライムであると疑っている様子もない。ユーリがこの2人を慕っていることもあり、そのままアリシアとレティに良き指導者でいてもらおうと思っていた。

 サーシャについても、ユーリたちにおかしなことをする様子はなかったので、今のところは様子見でいいと判断していた。

 サーシャはカーレルの街に滞在してほしい様子ではあったが、アクアにとって、ユーリと一緒であるならば場所は問題ではない。多少カーレルの街に縛り付けようとした位では、排除しようとまでは思えなかった。


 問題はユーリに対して因縁をつけたビッグスライム使いだった。ビッグスライムの弱さに、ユーリが違和感を抱いていることはすぐに分かった。

 今ほど知性を持っていないときの行動がここにきて響いている。アクアに少しの焦りと、それ以上のビッグスライム使いに対しての怒りが浮かんだ。

 幸い、ユーリはアクアに対して感謝の念を深めているだけだったが、それでアクアの怒りが消えるはずもなかった。どうやってビッグスライム使いを殺そうか、ずっと考えていた。

 ユーリとの関係が悪くなるかもしれないと考える時間は本当に苦痛だった。それを考えると、ただでビッグスライム使いを殺す気はなかった。どうすればより苦しめながら殺すことが出来るだろう。アクアはそのことばかりを考えていた。

 他にもアクアの機嫌を悪くする出来事があった。ブレンダン兄弟とかいうどうしようもない小物だ。つまらない考えでユーリを傷つけようとする愚か者だったが、ユーリはそれを殺すことはなかった。

 ユーリならそうするだろうとは思っていたが、だからといって自分まで見逃してやるつもりはなかった。ユーリを傷つけようとした罪は、死くらいで贖えるものではない。

 競技として高めあう中でいくらかの傷がつくくらいなら、見逃す度量がアクアにもあった。だが、明確に悪意を持ってユーリを傷つけようとしたなら別だ。

 どのみちアクアが手を下さずとも死にそうではあったが、それくらいの事でアクアの怒りは収まりはしなかった。


 結局、すぐにビッグスライム使いも、ブレンダン兄弟も始末することにした。


 ビッグスライム使いは意識を残したまま操り、魔物の群れの中へと体を操作した。ビッグスライム使いの痛覚を残したまま、魔物たちに自分が何もできず殺されていく様子を、普通の人間が死ぬような状態になった後でも味わわせた。

 ゆっくりと、しかしながら着実に、なにもできないまま自分が死に向かっていく様はさぞ苦しかった事であろう。完全にではないものの、アクアの留飲は下がっていた。

 

 ブレンダン兄弟には、アクアが脳を操作することで、お互いがお互いを裏切る様子を何度も何度も幻覚として見せていた。

 結局、兄弟だなんだといいながらお互いを信じられなくなったブレンダン兄弟は、お互いを敵として殺しあう事となった。死ぬ寸前にはお互い躊躇していたが、アクアは最後の一押しとしてお互いの体を操ってやった。

 結局ブレンダン兄弟は、最も信頼する相方が裏切ったという絶望の中で死ぬことになった。


 それから、アクアはユーリの事を傷つけるかもしれなくて、世間の評判が低い存在を次々に始末していった。

 ただ殺すだけではもったいないと考えたアクアは、死体も装備も溶かしつくして、何らかの形で再利用できないか考えていた。

 アクアの中にある考えが思い浮かんだので、その考えの検証に幾つかの死体を使った。検証の結果、何をするかはすぐに決まった。アクアはその計画を実行した時のことを考え、ひそかに興奮していた。


 その後、サーシャの提案した食事会で、サーシャが契約技使いであるとユーリが知り、アクアはサーシャを安易に殺すことはできないと考えた。

 契約技使いは、モンスターと契約者のどちらが死んでも契約は解除される。ユーリがサーシャの契約技を知った以上、殺す形で何かをすると違和感に感づかれかねない。サーシャがユーリに対して何かを仕掛けたとしても、迂闊に殺すことは出来なくなった。

 殺さなくともサーシャをどうにかする方法はすでにアクアの手の中にはいくつもあったが、面倒ごとが増えた心地であった。

 それから、サーシャがアクアの犠牲者について話している時、アクアは何食わぬ顔で過ごしていた。どうせサーシャには気づくことはできない。気づいたところでどうとでもなる。それよりも、ユーリとこれからどう過ごすかの方が圧倒的に大切だった。


 それからの休日。アクアは常にだれかの顔でユーリのそばに居た。ステラとしてはユーリにマッサージをした。

 ステラがモンスターと契約したかったことも、そのためにマッサージを覚えたことも、指輪を誰かに託したかったことも事実であった。

 ユーリがステラにとって指輪を渡す第一候補で、それ故にユーリに特に目をかけていたことを知っていたアクアは、ステラにとっても本望であろうと、指輪をユーリが使いこなせるように誘導していた。

 指輪を使いこなすためには、契約者とモンスターのお互いの信頼関係が大切であるとも知っていたアクアは、ステラの想いと自分の想い、どちらも叶える一石二鳥の策であると思っていた。

 ユーリに対してマッサージする際、わざとステラの体をユーリに触れさせていた。

 ユーリの疲れをとりたいということも事実だったので、ステラの記憶通りにしっかりとマッサージを行いながら、ステラに対して照れているユーリの事も味わっていた。

 アクアの姿ではユーリはあまり照れたりしないので、またこういう機会を設けてもいいとアクアは思っていた。

 ユーリのペットとしてのアクアに不満があるわけでは無いが、ペット扱いでは楽しめないユーリの姿もある。アクアはあらためてステラの体のありがたさを感じていた。


 次はカタリナとしてユーリと会話していた。カタリナが弓の腕を高めるためにどれほどの努力をしていたのか、アクアはカタリナを乗っ取ったことにより改めて感じていた。

 いつも憎まれ口を言ってばかりのカタリナだが、ユーリが困ったときにはほとんど必ずと言っていいほど助けに入っていた。カタリナはその弓の腕で、ユーリが倒せなかった多くのモンスターをユーリの代わりに倒していた。

 カタリナのユーリに対する好意はきっと本物だと、ユーリ以外の情などどうでもいいと感じているアクアでさえ信じていた。

 カタリナとしてユーリと接する中で、ユーリのカタリナに対する信頼を感じ取ったアクアは、カタリナだけでなく、ユーリに対しても悪いことをしているのではないかとほんの少しだけ思った。

 だけど、アクアからカタリナを解放するだけの勇気は出てこなかった。

 ユーリのカタリナに対する信頼は本物だ。ユーリにカタリナが真実を告げれば、きっと嫌われてしまう。そんなことになるくらいなら、死んだほうがましだ。ただの他人なら、アクアの方を信じてくれる。

 でも、カタリナなら? アクアはカタリナの魅力を理解して、ユーリがその魅力を知っていることも感じて、だから、本当のハッピーエンドから遠ざかっているだけだと薄々思いながらも、アクアは今のまま進むことをやめられなかった。


 その次にアクアとしてユーリに接している時、ユーリの腕を自分の中に入れた時、妙な興奮がアクアを襲った。

 ユーリの体を食べているみたい。ユーリがもとは自分の一部であるアクア水を飲んでいる時、ユーリと一つになっているような感覚を味わっていたが、それとは別種の悦びがあった。

 アクアは自分でも興奮を抑えきれず、ユーリの全身を自分の体の中に入れることを望んだ。

 ユーリの全身を取り込んだ時、ユーリの生殺与奪を握っているような感覚になった。ユーリを殺すなど、アクアは何があってもするつもりはないが、ユーリの命が手のひらの上にあるような感覚は、ユーリが自分を信じているという実感とともに、アクアを大いに高揚させた。

 ユーリが自分の中にいるという感覚を、ゆっくりじっくり味わったアクアは、カタリナに関する罪悪感などすっかり忘れ去っていた。スライムの体でこういう感覚なら、人間の体ならどういう感覚なんだろう。アクアは好奇心でいっぱいだった。

 またユーリとの新しい関係の可能性を思いついた。アクアは最後にはとても上機嫌だった。

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