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邪悪ヤンデレ厄災系ペットオメガスライム  作者: maricaみかん
2章 水刃のユーリ

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21話 襲撃

 ぼくたちは、前にサーシャさんから受けた依頼をマナナの森でこなしていた。

 ビッグスライムの群れが現れたという件は、ぼくたちが思っていた以上にたくさんのビッグスライムに襲われることになったが、その割に特に苦戦はしなかった。

 前に絡んできたあの妙な男のビッグスライムが弱いのかと思っていたが、ビッグスライムというのは本当に弱いモンスターのようだった。スライムってもっと強いと思っていたんだけど、案外そうでもない。


 ぼくがアクアと契約できたのは本当に幸運だったんだな。改めてそう思えた。

 アクアといると楽しいし、落ち着くし、冒険者として活動していてもアクアはとても活躍してくれている。アクアが足止めをしてくれたモンスターは、絶対にぼくたちの方へ抜けてこないし、防御力が低いモンスターなら、アクアだけでも倒してくれる。

 それに、アクア水は本当に便利だ。戦いにも、生活においても、ものすごく役に立ってくれている。アクアのことはもともと大好きだけど、もっと感謝するべきだし、もっと好きになるべきだ。そう感じた。


 それから、マナナの森のモンスターの間引きを行っていた。突然発生したようなモンスターを除き、基本的にいつも発生しているようなモンスターは狩りつくしてしまっても、いつの間にか増えている。

 だから、依頼内容にあるモンスターは何も考えずに倒すことができた。他のモンスターは特に見つからなかったので、初心者でも倒せるようなモンスターが多く、間引くこと自体はかなり楽だった。


 しばらく間引いていると、人らしき気配が近寄ってくる。

 こんなところにぼくたちに用がある人がいるとは思えなかったので警戒していると、その人たちは剣を抜いていた。

 いつでも攻撃できるよう、態勢を整えていると、その2人組に話しかけられる。


「よう。最近随分儲けてるらしいじゃねえか。お前たちのような若造に、そんな大金、もったいねえ。俺たちがもらって、もっとうまく使ってやるぜ、なあ、兄弟?」


「そうだな。それに、お前の横にいる女、随分美人じゃねえか。お前も、俺たちについてきたほうが、もっといい目を見せてやるぜ。どうだ?」


「あなたたちみたいな品性のかけらもなさそうな男、お断りよ。それに、あなたたちなんて、ただのザコにしか見えないわよ。せいぜい格下相手に粋がっているのがお似合いよ」


 カタリナがつまらなさそうにそう返すと、男たちは明らかに怒ったという顔になる。この程度でそこまで顔に出すのか。我慢が弱い人たちだな。


「随分言ってくれるじゃねえか。おとなしくついてくるなら、優しくしてやっても良かったが、気が変わった。使いつぶした後、売り飛ばしてやるぜ。なあ、兄弟?」


「そうだな。そこのハイスライムも、おかしな趣味をした連中なら、見世物くらいにはしてくれるだろ。好みじゃねえが、ついでに貰っておいてやるとしようぜ、兄弟」


 こいつら、カタリナやアクアに手出しするつもりらしい。なら、最悪殺してしまってもいいか。

 手加減する気が失せたぼくは、アクア水を2人の顔に出現させる。少し苦しそうにしていたが、それなりにすぐに振り切ってきた。まあ、ここで終わるなら憂さ晴らしにもならないか。


「お前の手の内は、あのビッグスライム使いのおかげで知ってんだよ。お前じゃ俺たちの相手にはならねえ。さっさと諦めたほうが、すぐに楽になれるぜ」


 そう言って2人は剣を振ってくる。片方は右利きで、片方は左利きのようだ。剣の振り方からして、前の闘技大会のアーノルドやスタンよりいくらか強いくらいに見える。2対1でも、ミーナに勝てるとは思えないくらいだ。

 でも、カタリナに殺しをさせるわけにもいかないし、カタリナは当てにしない方が良いよね。手加減できる矢も持っていないことだし。

 そう考えたぼくは、1人の剣を受けながら、もう1人の剣をアクア水でずらした。今のうちに!


「アクア、片方の足止めお願い!」


「わかった。すぐに片付ける」


 アクアはすぐに左利きの方の足止めをしてくれる。何度もアクアに剣をたたきつけているが、アクアはまるで意に介していない。別の方に向かおうとするけど、それはアクアがすべて阻止してくれている。


 その間にぼくは右利きの方の相手をしていた。

 アクア水を使わず、剣で相手していたが、特に苦戦することはなかった。

 そのうち、相手が剣だけに意識を向けるようになったので、相手が剣を振るタイミングで、後ろからアクア水をぶつけ、態勢を崩させた。

 そこに思い切り剣の面をたたきつける。一応殺さないようにと考えてのことだったが、相手は気絶したようだ。


 その後のもう1人はアクアに気を取られている間に、後ろから攻撃するだけで済んだ。随分自信満々だったみたいだけど、この程度か。


 戦いが終わったので、相手をどうするか考えていたが、人を拘束できる道具がない。

 そこで、相手が意識を取り戻しても抵抗が難しくなるように、相手の両腕をアクア水で包み、物体を移動させる要領で2方向に力をかけ、両腕を折っておいた。

 2人ともその痛みで目が覚めたようで、叫び声をあげている。


「何てことしやがんだ。お前ら、覚えておけよ」


「あなたたちと問答する気はありません。首元、何があるか分かりますか?」


 ぼくはアクア水に刃物を入れ、相手の首筋に添えていた。首元を見た2人は諦めたように話し出す。


「わかったわかった! 抵抗はしねえから、これをどけてくれよ。お前らだって、人殺しになりたいわけじゃないだろう」


「ここで助けてくれたら、その恩は忘れねえよ。だから、さっさと解放してくれ」


 何を言っているんだろう、こいつらは。ぼくがカタリナやアクアに手を出そうとした人に手心を加えようと思うものか。

 殺していないことだって、こいつらのことを考えたわけではなく、サーシャさんのためでしかないのに。


「あなたたちを信用するとでも? ほら、ぼくたちの前を歩いていてください。妙なことをしたら、分かりますよね?」


 そう言うと2人はうなだれて歩き始める。

 それからぼくたちは冒険者組合へ向かっていた。すると、周りの人たちが何か話し始めた。


「おい、あいつら、ブレンダン兄弟じゃねえか。やられたのか?」


「あんな手の付けられないやつを倒せるってのかよ? だれだ、あいつらは」


「オーバースカイだよ、ほら、アリシアたちの金魚の糞ってやつだ」


「どこがアリシアたちの金魚の糞だよ。それがブレンダン兄弟を倒せるってのか?」


「どうせいつものようにケンカを売りに行ったんだろうぜ。それでああなったわけか」


「おいおい、なんてやつらだ。どこの馬鹿だよ、あいつらはいいカモになりそうだとか言ってたのは」


 話を聞く感じだと、こいつらはある程度名の知れたやつららしい。そこまで強いようには思えなかったけど、こんなやつらにも頭の上がらない程度の冒険者もいるのか。

 そのまま進んでいると、人を連れたサーシャさんがこちらにやってくる。


「あら、オーバースカイの皆様方。一体何がございましたの?」


「こいつらに急に襲われて。返り討ちにしたところです」


「そうでしたか。でしたら、そのお2方はこちらで処罰しておきますわ。それにしても、オーバースカイの皆様に襲い掛かるなんて、身の程知らずですわね」


 ぼくが状況を報告すると、サーシャさんが、周りの人たちに男たちをとらえるように指示する。それを見た男たちが、急にわめきだす。


「何を言ってやがる。俺たちは被害者なんだぜ。見てみろよ、この両腕を。こいつに折られちまったんだ。それに、俺の首元には刃物が添えられているんだぜ。どちらが悪者かなんてすぐにわかるだろ。なあ、兄弟?」


「そうだぜ。こいつらは俺たちから手柄を奪おうとして、急に襲い掛かってきやがったんだ。モンスターを退治した後でなきゃ、こんな奴らにやられはしなかっただろうぜ」


 つまらない言い訳をする奴らだ。ぼくたちが依頼を受けていたことくらい、サーシャさんなら知っている。それに、依頼で集めたものもあるのだ。どちらが正しいかなど、すぐにわかるだろう。


「見苦しいですわね。あなた方の普段の素行と、オーバースカイの皆様の普段の素行を見比べて、あなた方をかばうものがいれば見てみたいものですわ」


「あいつはこの前もビッグスライム使いを痛めつけていたじゃねえか。それが素行がいいやつの態度だってのかよ。なあ、兄弟?」


「そうだぜ、兄弟。それに、証拠はあるってのかよ。こいつらが俺たちに襲い掛かったわけじゃねえってどうして言えるんだ?」


 ため息を吐いたサーシャさんは、珍しく怒ったらしい様子で話し出す。


「証拠、ですわね。調べたらすぐに出てくるでしょうが、それは些細な問題ですわ。あなた方は知らないようですので、ここで言っておきますわ。

 この街において、エルフィール家が絶対のルール。この街で生まれたものならば、幼子でも知っていることですわ。あなた方の主張が本当かどうかになど、興味ありませんわ。

 大事なことは、私が目をかけているオーバースカイの皆様方に、あなた方は敵対した。つまり、エルフィール家にケンカを売ったということですわね」


 サーシャさんは虫けらでも見るような目でブレンダン兄弟を見ながら、ため息を吐く。それからさらに彼女は話を続ける。


「あなた方は本当に愚かなことをしましたわ。いくら普段私が冒険者の皆様に寄り添っているからと言って、エルフィール家の面子をつぶすような真似をされて、おとなしくしているとお思いでしたか?

 そうだというのなら、エルフィール家も随分舐められたものでございますわね。あなた方の末路は決まっていますが、何か言いたいことがございましたら、最後に聞いて差し上げますわ」


「お前……この俺たちにここまでして……ただで済むと……」


「これ以上は時間の無駄ですわね。さっさと連れて行きなさい」


 そして男たちは連れていかれた。殴る蹴るを受けながらだったので、汚い悲鳴を上げていたが、ぼくの留飲は下がった。

 サーシャさんはその様子を無表情で見送っていたが、直後に笑顔に変わって話しかけられる。


「先ほどはああ言いましたが、あなた方のようなきちんとした冒険者の方に、強権を振るうつもりはエルフィール家にはございませんわ。所詮さっきの男たちはつまらないゴロツキでしたもの。安心して、あなた方は普段通りにわたくしに接してくださいませ。

 そうですわ。今度の食事会、楽しみにしておりますわ。あなた方となら楽しい時間を過ごせそうですし、お楽しみにしていてくださいまし。美味しい物をご用意しておりますわ」


 それからしばらくサーシャさんと雑談した後、ぼくたちは家に帰った。

 ビッグスライム使いといい、ブレンダン兄弟といい、面等でしかなかった。これからはこんな事が無いといいけど。

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