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邪悪ヤンデレ厄災系ペットオメガスライム  作者: maricaみかん
2章 水刃のユーリ

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16話 初依頼

 ぼくたちは初めての依頼を、アリシアとレティと共に行うことになった。

 アリシアとレティはこのまま待っているとここに来るらしい。会うのはキラータイガーの一件以来だし、楽しみだな。

 しばらく待っていると、アリシアとレティがやってきた。


「ユーリ君、カタリナさん、アクア。久しぶりだね。今日はどれだけ成長したのか、見せてもらおうかな」


「みんな久しぶり。元気だった? わたしたちは調子がいいよ」


 アリシアもレティもぼくたちの事をちゃんと覚えてくれているみたいだ。なら、しっかりぼくたちの成長を確認してもらおう。


「アリシアさん、レティさん、お久しぶりです。ぼくたちは、以前より確かに成長できたと思います」


「そうね。あたしたちがどれほどの実力か、見せてやろうじゃない」


「うん。ユーリ、カタリナ、やろう」


 ぼくたちの返答を聞いて、アリシアもレティも笑みを浮かべる。

 アリシアは余裕そうな感じの笑い方で、レティはとても明るい笑顔だ。前に会った時も思ったけど、この人たちとはとても接しやすい。


「うんうん。あなたたちもうまくやれてるみたいだね。アリシア、楽しみじゃない?」


「そうだね。じゃあ、サーシャさん。ユーリ君たちは任せておいて」


「お願いいたしますわ。ユーリ様たちが一流になれること、期待しておりますわ」


 そうしてアリシアたちと依頼に向かうことに。せっかくの機会だ。いっぱい勉強させてもらおう。

 今回向かう先は森のようで、道はしっかりしているけど、そこから外れると途端に木々に囲まれてしまいそうだ。うっかり道から逸れないように気を付けよう。


「そういえば、ユーリ君とアクアがつけている指輪。それ、ステラさんが昔、自分で使おうとしていたものなんだよ。

 ステラさんは結局モンスターを使役することはできなくて、それで、モンスターと契約している誰かに託すことにしたらしいよ。君たちはステラさんに信頼されているんだね」


 ステラさんはぼくたちに自分の目標を託してくれたのか。

 もともとこの指輪を使いこなすつもりだったけど、ますますそうしたくなってきた。

 ステラさんに恩返ししたいし、ステラさんが喜ぶ姿も見たい。冒険者として活躍することが目標だったけど、こっちも大事にしたいな。


 それから本格的に活動を開始する。

 アリシアたちはぼくたちの動きを確認するのかと思っていたけど、まずはいろいろと説明を受けることに。


「君たちがモンスターと戦う腕前は、前の段階でもそこらの冒険者より上だったからね。そこの確認より先にやりたいことは、君たちに私たちが考える心得を教えていくこと。それが終わったら、実践かな」


 なるほど。アリシアがそう言うのなら、ぼくたちは強い方の冒険者なのだろう。

 だけど、慢心は禁物だよね。アクアとカタリナに何かあるなんて絶対に許せないし、ステラさんを悲しませたくもない。


「分かりました。しっかり学びたいと思います」


「あたしたちをただのザコと一緒にされちゃ困るわよ。でも、今のところはアリシアたちの方が上なのは分かっているわ。今は従ってあげる」


「その意気だね。わたしたちの実力を見て、自信を無くさないようにね。そういう人たちばかりだったから」


 レティは当然のことを言っているという感じに見える。

 つまり、本当にみんな自信を無くすくらいにアリシアとレティは強いのだろう。

 でも、この2人がいくら強かったとしても、それが諦める理由にはならない。みんなと一緒なんだから、絶対に大丈夫だと信じよう。


「レティ、余計なことは言わない。そうだね。まずはモンスターとの戦い以外の依頼についてかな。君たちは薬草とかの自然でとれる採集物はどれくらいなら知っているかな?」


「基本中の基本くらいは。さすがにキノコを生で食べるような真似をするほどではありません」


「まあ、そうなるよね。君たちくらいの実力で、あまり採集依頼を受けることはないと思うけど、一応知っておくに越したことはないからね。たとえば食料が足りないときに、何を食べられるか知っているだけでも全然違う」


 薬草採集などは、駆け出しが受ける依頼として一般的なものだ。

 強いモンスターの縄張りに有用なものがあることは滅多にない。

 食べられるものなら食い尽くされてしまう事が多いし、食べられないものはどこでも縄張りにできるほど強いモンスターが執着することもない。

 危険なモンスターの縄張りだと、結局採集依頼より先に討伐依頼が出ることになる。

 ぼくたちはそれを意識して、強いモンスターの情報を優先的に調べていたが、アリシアほどの冒険者がそう言うなら、確かに勉強する価値はあるのだろう。

 アリシアが言っていることには納得できるし、今度からそれも勉強しよう。


「ただ、素人が適当に勉強するより、もっと効率よく知る手段もなくはない。一から手探りよりも、先人の知識をうまく生かした方が良い。君たちにそんなところで躓いてほしくないからね。これを見てごらん」


 そういうアリシアは、こちらに一冊の本を手渡す。図鑑のようなものかな。植物などの絵と、説明が書いてある。


「これは私が一番お勧めする資料だ。薬草と似た毒草は隣に並べてくれているし、危険なものは一覧になっているページもある。調べやすいように、名前から逆引きもできるようになっている。

 よくできた資料だよ。覚えれば役に立つことは間違いないし、頭に入っていなくても、分からないものがあるときにこれを見るだけでもいい。最低限死ぬようなことは避けられるだろう。

 これをユーリ君にあげるよ。せっかくだから、一冊もっておいて損はないよ。ユーリ君たちなら、これをうまく使ってくれると期待しているよ」


 説明を聞いているととても便利そうに聞こえる。

 実際、書いてある絵は本物とそっくりに見えるし、危ない物がこれ一冊でわかるなら便利なのは間違いないはずだ。


「ありがとうございます。さすがに今から読むことはできませんが、大切に読ませていただきますね」


「一応、サーシャさんに言えば、この資料を買うこともできるはずだ。

 もし何かあったときは、そこから入手するといい。燃えてしまった時とか、なくしてしまった時とかにね。安くはないけれど、この情報には見合う値段だと思うよ」


「そんなにいい物なんですか。本当にありがとうございます。さすがになくしてしまわないように気を付けますが、本当に大事にします」


「大事にしてくれるのは嬉しいけど、たとえばモンスターに襲われて、荷物が邪魔になったときなんかには捨ててしまってもいいよ。また手に入るものだから、そこまで気にしなくてもいいかな」


 アリシアは本当に僕たちにちゃんとアドバイスしてくれる。

 もっと雑に扱われたとしても、アリシアたちほどの冒険者なら、周りは納得するくらいだろう。心底ありがたいな。


「本当にぼくたちを気にしてくださっているみたいで、ありがとうございます。いつかお返ししたいと思います」


「あたしたちに期待するのは当然じゃない? ま、確かに思っていたより丁寧だけど」


「そこまで気にしなくてもいいんじゃないかな。わたしたちと肩を並べて冒険できるくらいになってくれれば、アリシアは喜ぶだろうけど。そこまで新人に期待するのは酷だよね」


「レティ、言い過ぎだよ。でも実際、私たちは君たちに期待しているんだ。

 少なくともこの街には私たちの足元にも及ばない冒険者しかいない。君たちがその状況に一石を投じてくれるかもしれない。そうなれるだけの才能は間違いなくあるんだ」


 アリシアたちがそこまで期待してくれていることは嬉しいけど、期待が重いようにも感じる。ただの一冒険者にそこまで期待するほどだろうか。


「君たちを間違った方向に進ませたり、君たちが途中で倒れてしまわないように気を付けることは、私たちにもメリットがあることなんだ。

 だから、君たちは遠慮なく私たちに頼ってくれていいよ。どうしても嫌なら断るけれど、それで君たちを邪険にするほどじゃない」


 あまり頼りたくない気もするけど、カタリナやアクアをしっかり守れるように、利用できるところは利用していこう。つまらない意地で2人が犠牲になることほど嫌なことはないのだから。


「私たちも、ステラさんも、サーシャさんも、それぞれ自分の思惑があって、君たちを手助けしているんだ。感謝は大切だとは思うけど、君たちもそれを利用してやるくらいの気持ちでいいよ」


 ぼくたちに期待してくれるのは本当に嬉しい。

 だから、よほど問題のある思惑でなければ、叶えてあげたいと思う。

 とはいえ、みんなは思っていた以上にぼくたちに目をかけてくれている。そこまでのことをしたのだろうか。よくわからない。


「分かりました。では、今回の依頼で、しっかり学ばせてもらいますね。そして、いつかアリシアさんたちを超える冒険者になって見せます」


「ふふっ。微笑ましいね。いかにも若いという感じだ。こんなことを言うと、私が老けているみたいだね。忘れてもらえるかな。

 それはさておき、ここからは別の話だ。カタリナさんは弓を使うから、地形に関する理解はある程度あると思うけれど、ユーリ君たちはどうだい?」


 どうだろう。森で手足を露出しないように気を付けるとか、山で迷ったときには上の方へ行くとか、それくらいの基本は知っているけど、そのレベルが聞きたいわけじゃないよね。


「当然よね。弓使いが射程や遮蔽物の扱いが分からないなんて事、あるわけないでしょ」


「逃げる時に地形を利用したことがある位でしょうか。そこまで詳しいと自信を持って言えるほどではありません」


「アクア、どんなところでもユーリについていくだけ」


「なるほど。では、ユーリ君を中心に説明することにしようか。カタリナさんには退屈になってしまうかもしれないけれど、よろしく頼むよ」


 ぼくは気合を入れて聞くことにする。

 アリシアほどの冒険者に教わる機会なんて、そうないはずなんだから、せっかくのチャンスを無駄にするわけにはいかない。


「よろしくお願いします」


「仕方ないわね。ま、たまには復習もいいでしょ。それでユーリが役に立ってくれるなら言うことはないわ」


 カタリナはそう言いながらもしっかり耳を傾けている様子だ。

 当然だよね。アリシアたちは本当にしっかりと教えてくれる。学園の授業よりよほどためになるから、聞いていてとても楽しい。


「ユーリ君、君の契約技は、たとえば高い方と低い方、どちらに動かす方が楽とかあるかな?」


「いえ、ありません。ただ、アクア水と一緒に別のものを動かしている時は、アクア水が離れると、落ちていきますし、アクア水の操作をやめてもアクア水が落ちていきます」


「なるほど。なら、普通にものを上に運ぶより、アクア水を使った方が楽になるわけだ。それは重い物でも変わらない?」


 アリシアは本当に契約技に慣れているのだろう。ぼくの答えに対してすぐに意見が出てくるあたりでそれが分かる。


「そうですね。なら、重い物を運ぶときにアクア水を使うことを優先したり、降りる時には逆にアクア水を使わないとかできそうですね」


「良い視点だ。自分の契約技を使う時、契約技だけに意識を向けるだけでなく、契約技の周辺への影響や、周囲の地形や物を利用できるようになると、選択肢が大幅に広がる。

 たとえば、そうだね。そこに池があるよね。ユーリ君は、池の水も操ることはできるかな?」


 それは分からない。アリシアの質問が来てはっとした。

 アクア水を操れるのなら、他の水はどうなのかという発想がなぜ浮かばないのか。


 アリシアに教わる機会を持てたことは、この質問だけでも十分な成果かもしれない。


「すみません。試したことがありません。今、実験しても大丈夫ですか?」


「かまわないよ。それでユーリ君が成長してくれるのは、ありがたい限りだ」


「ありがとうございます。試してみますね」


 まずは契約の証からのびる力を、池の水に向けてみる。

 動かそうと試してみてもびくともしない。

 次に、アクア水を池の中に入れてみる。アクア水を通してなら、水を操ることもできた。思っていたより少しのアクア水でも、結構な量の水を操ることができた。


「こんな感じです。何もなしでは水を操ることはできませんが、アクア水を通してなら、操ることができるみたいですね」


「うん、すばらしいね。たとえば私だったら、風を水の中に送り込んで、水を間接的に操ることもできる。他には、池の近くにいる相手を、突風でそこに落としたりもするね。

 君なら、水場を利用することで、もっといろんなことができるんじゃないかな」


 その通りだ。今だけでもいくつかの考えは浮かんだ。

 でも、アリシアたちを待たせるのもどうかと思うし、検証はまた今度にするつもりだ。


「そうですね。いくつか案はあります。モンスターが相手なら、いろいろ試せそうです。人が相手なら、危険なものもいくつかありますけど」


「そうだね。これからは、他の地形も利用できないか考えてみるといい。ユーリ君は筋がいいよ。本当に教え甲斐があるね」


 あのアリシアに褒められていると思うと嬉しいな。

 ただ、いつかはアリシアを超えるつもりなんだ。褒められて喜んでいるだけではだめだろう。ぼくは気を引き締めた。


「それじゃ、次の講義だ。それを生かして実践を行ってもらうつもりだから、覚悟してね」

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