if カタリナとの未来
冒険者を目指してぼくの故郷であるミストの町の学園で過ごしていたある日、カタリナにパーティの解散を告げられてしまった。
それから、1日たってもぼくたちは仲直りできず、その次の日。
今日はカタリナと別々の授業を受ける日だけど、授業が始まるより先にカタリナを探し出した。
カタリナは、ぼくの姿を見ると逆方向へといこうとしたが、ぼくはカタリナに先回りして、何とか呼び止めた。
そして、ぼくはカタリナに対して、仲直りしたいという思いを伝えることにした。
「カタリナ、ぼくは今でも、カタリナをなぜ怒らせてしまったのか、分からない。本当にごめん。でも、ぼくはカタリナと離れ離れになりたくない。ずっと一緒に居たいんだ。許してほしいとは言わないから、またぼくとパーティを組んでください。お願いします……」
そう言うと、カタリナはあきれた様子になってため息を吐く。ダメだったか。諦めそうになると、カタリナは少しだけ微笑んだ。
「見苦しいから、そんな卑屈な態度はやめなさい。ほんと、あんたってどうしようもないわね。でも、いいわ。またパーティを組んであげる。だから、そんなざまを見せるのはやめて。はぁ、仕方のないやつね、あんたは。あんた、ほっといたら勝手に変なところで死にそうだもの。これじゃあたしが面倒見てやるしかないじゃない」
「カタリナ……! ありがとう。また、これからよろしくね。良かった。カタリナと仲直りできないんじゃないかって、ずっと不安だったんだ」
「別にあんたを許したわけじゃないわ。でも、あんたに勝手に死なれちゃ、寝覚めが悪いってだけよ。あたしに着いてくることだけは許してあげるんだから、感謝しなさいよね」
「もちろんだよ。カタリナにはずっと感謝してる。ぼくはカタリナのおかげで生きていられるんだから」
「大げさなやつね。でも、それならいいわ。しっかりあたしの後ろに着いてくること。いいわね?」
カタリナとパーティをまた組むことができるようになって、本当に良かった。
カタリナは大げさだと言ったけど、ぼくは本当にカタリナに命を助けられていると思う。幼いころから、カタリナは何度もほとんど戦えないぼくの代わりにモンスターを倒してくれた。
ぼくがモンスターに攻撃されて動けなかったときに助けてくれたり、ぼくだけじゃ倒せないモンスターに遭遇した時に倒してくれたり、本当に何度も助けられてきたんだ。
だから、ぼくはカタリナに本当に感謝していたし、カタリナの事が大好きだった。これまで助けられてきた分、アクアと一緒に返していきたいと思っていた。
「ユーリ、カタリナと仲直りできてよかった。アクアもカタリナがいないと困る」
「そうだね。ぼくたちにとって、欠かせない存在だもんね、カタリナは」
「そ、そう。ま、そこまでいうなら、これからもユーリたちの面倒見てやってもいいわ。でも、授業には遅れちゃうわね。はぁ。遅刻の方が欠席より面倒なのよね、あの先生。さぼっちゃいましょうか」
カタリナに誘われて、ぼくたちは授業をさぼっていろいろと話していた。すると、学園で騒ぎが起き始める。ステラ先生がここにやってきて、カタリナの姿を確認して安心したような顔になる。
「カタリナさん、ここにいましたか。実は、モンスターが異常発生してしまって、カタリナさんの受けている授業で、参加した人たちの安否を確認していたんです。既に犠牲者も出ているので、カタリナさんの無事が確認できてよかったです。私は忙しくなりそうなので、これで失礼しますね」
急いだ様子のステラ先生はそのまま去って行く。ぼくはカタリナと顔を見合わせていた。
「あの授業、さぼって良かったみたいね。あんたのおかげで命を救われたって言っていいのかしら。ユーリ、あんたのおかげね。あんたも、たまには役に立つのよね」
「そうだね。でも、本当に良かった。カタリナに何かあったら、ぼくは生きていけなかったよ。犠牲者が出たのは残念だったけど、それがカタリナじゃなくて良かった。カタリナとけんかしている間、ずっとつらかったけど、今回の事があったなら、それでよかったと思えるよ」
「うん。カタリナ、無事でよかった。カタリナはこれからもアクアとユーリと一緒に居るべき。カタリナの事も、アクアが守る。もちろん、ユーリも守る」
「あんたたちはほんと大げさね。でも、命を助けられたんだから、これから一緒に居るくらい、どうってことないわ。これまでずっと一緒に居たのが、これからも続くだけだもの」
カタリナとアクアとこれからも一緒に居られると思うと、本当に嬉しくなってくる。
カタリナにはずっと守られるだけだったけど、カタリナにも危ないことがあるかもしれないことはよく分かったし、カタリナの事を守れるくらいに強くなってみせる。そう誓った。
それから、ステラ先生に誘われて、カーレルの街で冒険者として活動することになった。
ぼくたちは順調に活躍することができて、結構有名な冒険者になった。
新たな仲間も加わり、カタリナもモンスターと契約することになってからは、ぼくたちに敵はいないんじゃないかと思えるほどだった。
そんな中、ぼくはカタリナに告白することにした。
ぼくが結婚するならば、カタリナ以外ありえないと考えていた。
アクアにも相談して、ぼくからカタリナに告白することに決めた。アクアが言うには、ユーリなら大丈夫とのことだった。
ぼくたちが冒険者として活動する中で、ぼくはカタリナに助けられたり、カタリナを助けたり、いろいろな形で絆を深めてきた。
ぼくはカタリナが隣にいると安心したし、これからもずっとそばに居てほしいと考えていた。きっと、カタリナもぼくの事を好きでいてくれていると感じていた。
だけど、いざ告白するとなると不安もあった。カタリナとは冒険者としていいパートナーになれていると思うし、お互いがお互いの理解者であるとも思えていた。
でも、それが勘違いだったらどうしよう。それで、カタリナとの距離が離れてしまったら。
そんな考えが浮かんできたが、それを察したアクアに励まされて、ぼくは告白を決意した。カタリナを呼び出して、告白する。
「カタリナ、ぼくはカタリナの事が好きだ。これからもずっと一緒に居てほしいし、できれば結婚したい。カタリナ、ぼくと付き合ってくれないかな?」
カタリナはぼくの言葉を受けて、あきれたような顔になる。少し不安になったが、すぐに笑顔を向けてくれた。
「……はぁ。本当に今更だわ。遅いのよ、ユーリ。でも、答えは決まってる。……一度しか言わないから、よく聞いておきなさいよね」
そう言ってカタリナはぼくの耳元に口を寄せて、ささやいてきた。
「あたしも大好きよ、ユーリ。ずっと一緒に居ましょうね」
そのままカタリナはぼくにキスをした。カタリナと付き合うことになった喜びで、ぼくの中はいっぱいだった。
それから、ぼくたちどちらにとっても大切な存在のアクアに、ぼくたちが付き合うことになったと報告した。
「ユーリ、カタリナ、おめでとう。いちゃいちゃしてもいいけど、アクアを仲間外れにしないで」
「アクア、ありがとう。あたしたちのこと、祝ってくれて。もちろん、仲間はずれにはしないつもりよ。アクアは、あたしにとっても、ユーリにとっても、大切な家族よ。でも、2人きりの時間は作らせてね?」
「わかってる。人間にはいろいろあるって知ってる。ユーリとカタリナの子供、楽しみ」
「さすがにそれは気が早いわよ。でも、いずれ、ね。ユーリ、それまでに、しっかりお金をためなくちゃね」
「そうだね。アクアも、ぼくたちの事を支えてほしい。もちろん、ぼくたちもアクアの事を大切にするから」
アクアは本当に嬉しそうで、ありがたかった。ぼくたちを繋ぐきっかけの一つだったアクアにお祝いしてもらえて、本当に嬉しかった。
それから、他の人たちにも報告して、祝いの言葉をもらった。ぼくたちは付き合うことになっても、大きく生活が変わったわけでは無かったが、少しだけ、ぼくたちの距離が近いことが増えた。
それからしばらくの間冒険者として活動していたが、結婚しても十分な資金がたまったと判断したぼくたちは、パーティを解散して、ミストの街に帰ることにした。
パーティは解散したのに、仲間たちはミストの町へ着いてきていた。ステラさんと呼ぶようになったステラ先生も、ぼくたちと一緒にミストの町へきて、教師へと戻った。ぼくたちも学園で働くことになり、またステラ先生と呼ぶことになった。
ミストの町へ帰って、カタリナの両親にぼくたちが結婚することを伝えると、とても喜んでくれた。ぼくたちが結婚するときのために貯めておいたお金があるそうで、それを渡してくれた。
それから、ミストの町で教師として働きながら、カタリナとアクアと一緒に過ごしていた。ぼくたちの間に子供もできて、アクアがとてもかわいがっていた。
「カタリナ、今まで本当にありがとう。カタリナがいてくれるおかげで、ぼくは幸せになれたんだ」
「何よ急に。でも、当然よね。あんたにはあたししかいないんだから。もちろん、アクアは別にして、ね。でも、あたしも幸せよ。ユーリ、あたしの事を好きになってくれてありがとう。これからも、ずっと一緒に居ましょうね」
アクアにとって、ユーリが最も大切な存在であることは揺るぎなかったが、カタリナもアクアにとって大切な存在だった。その2人と一緒に冒険者になって、アクアはとても楽しく過ごしていた。
ユーリもカタリナもアクアの事を大切にしてくれて、アクアは前よりずっと2人の事が好きになっていって、この2人とずっと一緒に居たいという思いが強くなっていった。
ユーリにカタリナと付き合いたいと相談されたとき、アクアにはやっとかという呆れすらあった。ユーリとカタリナがお互いに想いあっていることなど、明らかだったのに。
ユーリはそれでも不安そうだったので、アクアは背中を押してやった。当然のように2人は付き合い始め、アクアもその中に混ざっていた。
それから、ユーリとカタリナが結婚することになって、ミストの町へと帰ることになったとき、ユーリたちの生活に問題が起きないよう、邪魔な存在を事前に処理していた。結婚に反対しようとしていたメンバーの事も操り、問題なくユーリとカタリナが結婚できるようにした。
ユーリとカタリナの間に子供ができた時、アクアは初めどうでもいいと考えていたが、ユーリとカタリナと一緒に子供を世話していく中で、その子供も大切な存在になっていった。ユーリにもカタリナにも似ているところがあったことが大きかった。
アクアがずっと思い描いていた通りの生活が続き、アクアは本当に幸せだった。アクアがユーリとカタリナの間に混ざりたいと思った時、2人は必ず混ぜてくれていた。アクアは、ユーリとカタリナに出会えて本当に良かったと、運命に感謝していた。




