if カタリナとの未来・偽
カタリナと買い出しに出かけた日、カタリナにかけられた言葉がぼくの運命を変えた。
「あんたはあたしもデートしたいって言ったら、連れて行ってくれる……?」
ぼくはその言葉に大してすぐにカタリナとのデートを想像した。
とても魅力的に思えたので、すぐにうなずいてしまった。
「したいよ、カタリナとデート。どこに出かけるのが良いかな。どこでも楽しいだろうけどね」
「そう、そうね。なら、今度デートしましょう? 2人っきりで出かけるのよ」
ぼくはカタリナと予定を詰めてから帰っていく。
それからずっとカタリナとのデートが待ち遠しかった。
そして訪れたカタリナとのデート当日。
買い物をしたり、食事をしたり、色々と回った後に人気のない公園で2人きりになっていた。
カタリナと手を繋いでのんびりとしていると、カタリナは柔らかく微笑みながら話しかけてくる。
「今日は楽しかったわ。あんたにしては悪くなかった。……これはそのお礼よ」
カタリナはちょっと背伸びをしてぼくにキスをしてくる。
ぼくはカタリナの唇の感触や温かさにドキドキしていた。
しばらくしてカタリナが離れていき、名残惜しさを感じて。
ぼくはカタリナの事が好きなんだとその時はっきりと実感できた。
「カタリナ、ぼくはカタリナが好きだ。これからもずっとデートをしたりしながら一緒に過ごそう」
「ほんと、遅いのよ。あたしがここまでする前に自分から言いなさいよね。でも、あたしだってあんたが好きよ。ずっと、一緒に居ましょうね」
それからぼくはカタリナと付き合う事になり、休日は大体カタリナと一緒に過ごすことになった。
外出したり、同じ部屋で過ごしたり、色々なことを一緒にしていた。
そうする中で、ぼくたちは同じ部屋で過ごすことになった。
アクアも一緒だけど、気を使って2人きりにしてくれることも多い。
そんなある日、カタリナに一緒の布団で寝ようと誘われて、それからは同じ布団で隣同士で寝ることになった。
しばらくして、カタリナとゆっくり過ごしていると、カタリナからある提案を受ける。
「……ねえ、ユーリ。あたしたちもこれまで色々としてきたけど、まだしてない事があるわよね……?」
カタリナはそう言ってぼくにキスをしてきて、舌まで入れてくる。
それでカタリナが何をしたいか察したぼくは、カタリナと関係を持つことになった。
「ふふ。あんたとこうする事になるなんてね。でも、あたしは幸せよ。あんたはどう?」
「もちろん幸せだよ。カタリナが隣にいてくれることが、とっても嬉しい」
それからもずっとカタリナと過ごしていると、ぼくたちの間に子供ができる事になった。
しばらく冒険者としての活動を休んでもいいくらいの貯蓄があったので、子育てのために冒険者として過ごすことはいったんやめた。
アクアも子供を育てることをしっかりと手伝ってくれて、子供はぼくたちよりアクアに懐いているくらいだった。
子供がある程度大きくなると、サーシャさんやステラさんに子供を預けて冒険者としての活動を再開した。
勘を取り戻すために少しの期間を要したけど、ぼくたちは順調に生活する事ができていた。
それから、カタリナと結婚してカーレルの街で冒険者としてずっと過ごすことになった。
オーバースカイに新しい仲間が増えることもあったし、新しい子供ができることもあった。
それでも、大きな問題は起こることなく生活できていて、ぼくたちはずっと幸せだった。
アクアはカタリナとしてユーリにデートを持ちかけた時、カタリナに対してわずかな罪悪感があった。
だが、ユーリとともに過ごせる喜びの中で、いつしかカタリナの事を忘れ去っていくことになる。
ユーリとデートをしたり、色々とふれあったりする楽しみを味わいながら、カタリナの姿でユーリと徐々に関係を深めていった。
そしてカタリナとユーリの子供ができた時、アクアは自分とユーリの子供のように感じていた。
だから、子供が健やかに育つように、カーレルの街の大勢の人間を支配していく。
そうしてユーリと過ごす日々は穏やかで、暖かくて、アクアはとても幸せだった。
カタリナはアクアに操られる自分の体がユーリとデートをしている姿を見て、ほんの少しの喜びと
大きな苦しみの中に居た。
(ユーリがあたしの事を好きなのは間違いない。それだけは信じていい。でも、ユーリはあたしがどうなっているか気づいてくれない。ユーリが気づいたところであたしに体は帰ってこない。分かっているのよ、そんなことは。
でも、あたしの言葉でユーリと話したい。あたしとしてユーリにふれあいたい。アクア、あたしに体を返してよ……)
それからアクアが操る自分がユーリにキスをしたとき、カタリナはとても深く傷ついていた。
自分の事を好きなはずのユーリと、自分の体を操っているアクアが結ばれる姿は、カタリナが望んでいたユーリとの未来とは程遠かった。
(ユーリの唇の感触はあたしも感じる。ユーリの温かさも。ユーリとキスする瞬間を待ち望んでいたはずなのに、こんな形であたしの初めてのキスが奪われるなんて……ユーリはあたしの顔が好きだったの?
いや、顔だけならもっといい態度の相手になびくわよね……ユーリはあたしの何を好きになってくれたのよ?)
それからもカタリナは勝手に動く自分の体とユーリが距離を近づける姿をずっと見続けていた。
カタリナが理想とするようなユーリとの生活を、自分とは全く関係のない形で行われている。
その事実がカタリナを徐々に追い詰めていった。
(あたしとユーリがしたかった事がだんだんアクアに奪われていく。あたしが体を取り戻しても、あたしがすることはユーリにとっては新鮮味のない行動でしかない。どうして、こんな事になってしまったのよ……)
ユーリとカタリナの体が結ばれている瞬間は、カタリナにとっては快感と苦痛で訳の分からない瞬間となっていた。
ユーリに求められることは嬉しい。でも、ユーリが見ているのは本当の自分ではない。
いくつもの思いが混ざり合ってカタリナの感情はぐちゃぐちゃになっていった。
(ユーリはあたしの体に夢中になっている。あたしの体はユーリの好みなのね。それとも、好きな人なら何でもいいのかしら? ユーリの味も匂いもいっぱい感じるのに、あたしはそれを本当の意味では受け止められていない。
ユーリ、あたしにどうして気づいてくれないの? あたしの事なんてほんとはどうでもよかった? アクアが本当の好みで、だから夢中になっているの?)
ユーリとカタリナの間にできた子供は、ユーリとカタリナそれぞれの特徴を受け継いでいた。
まさに2人の子供のはずなのに、そこに自分は全くかかわっていない。カタリナは喜べばいいのか、悲しめばいいのか、何も分からなくなっていた。
(アクアもユーリの子供を育てることに夢中になっている。それはそうよね。2人の子供みたいなものなんだから。まさか、子供を作るためにあたしの体を? モンスターと人の間に子供は出来ないけど、まさかそこまで? ……ユーリとあたしの子供なのに、あたしからその子を奪わないでよ、アクア……)
カタリナはそれからもユーリの幸せな生活を見続けていた。
ユーリが幸せそうなことは嬉しい。自分の事を好きだと感じるのも嬉しい。
そう考えて自分の感情をごまかそうとするカタリナだったが、いつしか苦しさしか感じなくなっていった。
(あたしのいるはずの場所に、あたしじゃない誰かがいる。ユーリの隣にいるのはあたしのはずなのに、どうして奪われてしまったの……アクア、あたしの居場所を返してよ……)




