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邪悪ヤンデレ厄災系ペットオメガスライム  作者: maricaみかん
3章 頂へと歩むオーバースカイ

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80話 最強

 今日はぼくだけが王都に呼び出されていた。しばらくカーレルの街には戻れないようなので、オーバースカイなどの人と会うこともできない。

 できればすぐに帰りたいくらいだったけど、オリヴィエ様の要件が何かは気になるし、オリヴィエ様たちに会いたいという思いもあった。


 オリヴィエ様に会いに行くと、モンスターを倒しに行くという事になった。なんでも、相当強いモンスターが出現したらしい。

 人型モンスターでは無いようなので、知性の面での厄介さが薄れているみたいなのは助かる。

 けど、もしかしたらこの前のブラックドラゴンより強いかも知れないと言われてびっくりしていた。

 人型モンスターでもないのに強いモンスターが増え過ぎじゃないかな。一体どんな異変があってそんな事になっているのだろう。

 オリヴィエ様が言うには自分がいるのだから心配は無用とのことだけれど、それでも仲間を連れてきたほうが良かったのでは?

 リディさんとイーリスは着いて来るとはいえ、他の人は戦力ではなく野営などの準備担当らしいので、ブラックドラゴンより強い相手に勝てるのか不安だった。


 道中では人型モンスターと何回か戦うことになったが、どれもオリヴィエ様がすぐに片付けてしまった。

 気づいたら事切れているという様子で、これが生命力を吸収する力なのかと感心していた。


「どうだ、ユーリ。余の力は偉大だろう。これがアードラの頂点に立つ者の力だ」


 オリヴィエ様の自信も納得するくらいの強さを感じたが、何故かぼくには不安があった。

 人型モンスターが10体くらい同時に現れても圧倒していたので、オーバースカイ全員を合わせたよりもオリヴィエ様は強いかもしれない。でも、不安はなくならない。

 今感じている不安が杞憂であるようにと祈りながら目的地への道中を過ごしていた。


 しばらくの期間を移動に費やして、目的のモンスターが住む地域にやってきた。

 じめっとした空気に鬱蒼とした木々があって、出来ればあまりいたくない所だ。

 オリヴィエ様はこれから強大に挑むというのに全く余裕を崩していなくて、ちょっと見習いたいような、真似をしてはいけないような。


「ユーリ、今回は余の強大さを存分に見ておくといい。貴様の支配者となる者がどれだけ偉大か知るいい機会だ」


 オリヴィエ様はとっても自信満々だ。強いモンスターだという事くらいしか分かっていない相手によくもこんな態度をとれるものだ。

 見た目は大きな亀って感じらしいけど、強い冒険者や騎士に討伐を依頼しても逃げ帰ってくる者がほとんどだというのにね。

 どんな攻撃も全然通じなくて、ちょっと傷を与えてもすぐに再生されてしまうらしい。

 対応策はいくつか考えているけれど、それが通じる相手なのかの情報が足りていないのが怖いんだよね。


「ユーリ殿、安心していただいて構いませんよ。そこらの冒険者で傷を与える事ができるのですから、殿下の能力で十分なはずです」


「リディはいつもオリヴィエ様に注意しているけど、オリヴィエ様が戦って負けるとは思っていねえからな。俺だってオリヴィエ様には絶対に勝てねえよ」


 この2人がそう言う位なのだから、オリヴィエ様はぼくが見ていたよりも強いのだろう。でも、能力が通じないことを考えたりはしないのかな。

 ぼくが分かっているだけでも強い力だと思う。生命力の操作という能力は汎用性も高いし、単純に生き物のだいたいは弱点と言っていい能力だろう。

 でも、使うのが人間である以上どこかに限界があるはずだ。ぼくだってアクア水の操作にはぼくの頭のできが大きく関わっているからね。

 全くイメージできない動きは絶対にできないし、思考のスピードの影響でアクア水を動かせる数に限界がある。

 オリヴィエ様の能力にもそういう欠点があるはずだけど、これまでは表面化しなかったのだろう。

 いざという時には3人だけでも連れて逃げられるように準備しておいた方が良いかもしれない。


「オリヴィエ様だけに任せて見ているというのは性に合いませんから、邪魔にならない範囲で戦いたいですね」


「くくっ、悪くない思想ではあるが、余が戦う時に周りの人間など必要ないさ。ゆっくりと余の強さを眺めていればよい」


 オリヴィエ様が嘘を言っている感じはしないから、本当に周りの人が邪魔なのかもしれない。

 なら、念のために戦う準備をしておいて、オリヴィエ様が危ないなら介入するのが良いかな。

 ぼくの心配し過ぎだとは思うのだけど、オリヴィエ様に万が一の事があってほしくない。

 いざという時はオリヴィエ様もリディさんもイーリスも守ってみせる。

 オリヴィエ様の強さはきっと本物だから、むしろぼくが守られる側なのかもしれないけどね。


 そのまま目的地に近づくと、明らかに大きさがおかしい亀がいた。これが恐らく目的のモンスターだろう。

 大きな家より大きいのではないかという位で、これに踏まれてしまってはおしまいだろうと感じた。

 オリヴィエ様はぼくに手のひらを向けて待てと指示した後、モンスターに近づいていく。

 モンスターは気づいているみたいだけど、何も反応を返してこない。


「さあ、余の力をとくと見ておけよ、ユーリ」


 オリヴィエ様はアリシアさんに匹敵するくらいのスピードで亀に接近して亀を殴りつける。

 亀は大きくのけぞっていたが、あまり気にした様子はない。こぶし型にへこんでいる部分があったけど、すぐに元通りになっていった。

 あの巨体をのけぞらせるだけで相当な力だと思うんだけど、その強い殴りを受けても亀は気にしていない。これはちょっと危ないかもしれない。

 ぼくはいつでもオリヴィエ様を助けに行けるように備えていた。


「くくっ、情報通りに頑丈なようだな。だが、この力に耐えられるものか!」


 オリヴィエ様は手を亀に向けて何かをしている様子だ。恐らく生命力の吸収だろう。

 ぼくが受けたらひとたまりもないオリヴィエ様の力だけど、亀はそれを受けても平然としていた。

 本当にまずいのではないかと考えたぼくはオリヴィエ様を注視しつつ、ミア強化を発動したうえでアクア水を体にまとった。

 これでいつでも最大の速度を出せる。何かあったらオリヴィエ様を連れて逃げよう。


 しばらくオリヴィエ様は生命力を吸収している様子だったが、亀はまるで弱った姿を見せない。ぼくは本格的に不安になっていた。

 すると、オリヴィエ様が苦しそうな顔をして膝をつく。何があったかは分からないけど、オリヴィエ様が危ない。

 急いでオリヴィエ様のもとへ移動すると、亀が水のようなものを吹き出してきた。

 オリヴィエ様を狙っているものだったので、ぼくはオリヴィエ様を抱えて逃げる。

 リディとイーリスが慌ててこちらに向かってきて、亀に攻撃を仕掛けているが、亀は意に介していない。


 オリヴィエ様をすぐに安全な場所へと逃がして、リディさんとイーリスを助けに向かう。

 きっとオリヴィエ様は生命力の吸収が限界に達したのだろう。その証拠に、リディさんたちが攻撃して傷を与えても、オリヴィエ様が殴ったときより治癒が遅かった。亀の生命力が減っている証だ。

 リディさんが炎で亀に攻撃を仕掛け、イーリスは全力で殴ったり蹴ったりしている。

 亀は手足をゆっくりと上げてから下に振り下ろす。すると、地面がすごく揺れてリディさんはバランスを崩す。

 慌ててリディさんを救出して撤退しようとすると、リディさんに止められる。


「ユーリ殿、限界まで小生は炎を撃ちますから、それを見てあのモンスターへの対策を考えてください。もうユーリ殿しかあのモンスターを倒せないのです」


 ぼくはリディさんを抱えて逃げられるようにしつつ、リディさんが炎を撃つのを支える。

 リディさんは何発も炎を撃っていて、亀の皮膚がひび割れている瞬間があった。すぐに再生されてしまうが、わずかに血が流れていた。

 それを見てあの亀を攻撃するための手段が思い浮かぶ。一か八かでしかないけど、やるしかない。

 3人とも連れて逃げることが現実的ではない以上、ぼくがここであの亀を倒さなくちゃいけない。

 オリヴィエ様はぐったりしているし、リディさんは息も絶え絶えだ。イーリスはまだ無事だけど、傷だらけになっている。

 ぼくはリディさんを後ろへと運んだ後にイーリスを助けに向かう。


「イーリス、代わって! 後はぼくがどうにかする! オリヴィエさんたちを守っていて!」


「ユーリ、任せたぜ! 俺たちの命運はお前にかかっている! 力になれなくて悪いな……」


 そのままイーリスは下がっていく。

 亀はこちらに向かって足で攻撃を仕掛けてくるが、速さは大したことがないので、空中に浮かんでしまえば簡単に対応できた。

 アリシアさんと模擬戦をしてからちゃんと空を飛べるようにしておいて良かった。地面が揺れることで足を取られることが無いから、のろい亀に攻撃を受けなくて済む。


 ぼくは亀の攻撃をよけながら亀の表面にアクア水を張りつかせる。肌から水を奪い取ると同時に一気にアクア水を蒸発させて亀を冷やした。

 すると、亀の肌が裂けて血が吹き出す。ぼくは亀の傷が治る前にアクア水を亀の傷口に放りこんだ。

 傷口から体内に入ったアクア水を通じて、亀の血を操っていく。血を凍らせて心臓を攻撃してみたが、すぐに治ってしまった。

 体内からの攻撃じゃダメか。いや、まだ手はある。これが通じなかったらぼくはこいつに勝てない。頼む、通じてくれ。


 ぼくはもう一度亀の表面に傷を作った後、傷口からアクア水で操った亀の血を全力で外に出す。

 亀は大きく暴れるけど、ぼくは亀の攻撃をよけながら何度も何度もそれを繰り返した。

 ぼくの限界が来そうになったころ、亀の動きが鈍くなっていく。それによって亀の血を出すスピードが上げられて、何とか亀の血をすべて奪うことに成功した。

 これを癒されてしまってはもう勝てない。祈りながら亀を見つめていると、亀はそのまま動かなくなった。

 確認するために剣で首を切り落とすと、そこから再生はしなかった。首を落とすことも楽だったから、亀の防御力は恐らく膨大な生命力に支えられていたのだろう。

 それで、オリヴィエ様は生命力を吸収しきれなかった。亀が死んだことにより、生命力を防御に回せなくなった。そんなところかな。


 亀の死を確認してからオリヴィエ様のもとへ向かう。オリヴィエ様は横になっていたので、オリヴィエ様のもとに座る。


「オリヴィエ様、あの亀はもう倒しました。オリヴィエ様がいてくれたからこそ倒せたんだと思います。ありがとうございます。もう安心してくれて大丈夫ですよ」


 オリヴィエ様はしばらくぼーっとしていたが、こちらの目を見て真っ赤になるとともに表情を大きく変えた。

 なんというか、物語のヒロインがする顔って感じかな。いつものオリヴィエ様とは違うけど、可愛いかもしれない。

 すぐにオリヴィエ様はぼくとは反対の方を向いて、恥ずかしそうな声を出す。


「み、見るな……このような顔、貴様には見せられぬ……」


「わかりました。では、後ろを向いていますね」


 ぼくは言葉通りオリヴィエ様とは反対の方を向く。オリヴィエ様がこちらを向いたような気配がした。


「ユーリ、貴様には助けられてしまったな。このような経験を余がする事になるとはな……感謝するぞ」


「いえ、オリヴィエ様を助けられてよかった。オリヴィエ様が膝をついたとき、ぼくは気が気じゃなかったですよ」


「そうなのだな……ユーリ、この例は改めて別の機会でしよう。まずは王都へ帰るとしようぞ」


 オリヴィエ様はそのまま眠っていった。リディさんとイーリスにその場を任せて、ぼくはオリヴィエ様から離れていった。

 今日は本当に大変だった。でも、オリヴィエ様と一緒に来る事ができてよかった。そうじゃなかったら、ぼくは親しい人を3人失っていたのかもしれない。

 あらためて、ぼくの周りのみんなが無事でいられることは得難い幸運なのだと感じた。

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