胴体部
後、三話くらいで終わります。
「さすがに胴体は大きいなあ」
メグミは腕を組んだ。
フロートと翼は出来た。
操作部のワイヤリングも終わっている。
翼の上に胴体を乗せなければならない。
「おっ、面白そうなことしてんねえ」
後ろから声を掛けられた。
振り向くと、整備服を着た大柄な女性が立っている。
「キットプレーンだろう」
「乗せるくらいなら手伝ってあげるよ」
「ありがとうございます、お願いします」
メグミが頭を下げた。
「野郎どもっ」
「へいっ」
後ろにいた、むくつけき男が三人答えた。
「空母つきの整備士の腕、見せてやるよお」
「へいっ」
昼休み中なのだろう。
一時間くらいで胴体を乗せてくれた。
「助かりました、ありがとうございます」
全員に缶コーヒーを奢る。
「これ以上、手伝ったら楽しみが減るなあ」
がははは
豪快に笑って去って言った。
海軍の人なのだろう。
改造した整備服。
片目には黒い眼帯。
背中には、”ブラックオパール”と書かれていた。
「操縦席も作ろうか」
椅子をつけた。
漣月スーパーエイトは後進式だ。
後ろのエンジンが、機体を前に押して飛ぶ。
水平尾翼とエレベーターは、機首についていた。
操縦桿に、エルロンとエレベーターのワイヤーを繋ぐ。
フッドペダルに、ヨーイング用の垂直尾翼のラダーを繋いだ。
「うふふふ」
椅子に座って、操作する。
ぱたぱたと各部が動いた。
機械式の計器をつけた。
「高度計、に速度計。 姿勢指示器に、燃料計、電流計っと」
「それと、エンジンの回転計ね」
取説を見ながら、取り付ける。
「早く飛ばせたいなあ」
今日もいつの間にか、夕方になっていた。
職場のシャワーを借りる。
寮に帰らずここで、寝袋で寝ることにした。
小さめのオイルランタンを、翼の下に置いた。
ザザ――ン
整備場の外から、微かに波の音が聞こえてくる。
オイルランタンが、長い機体の影を作った。




