第90話、救出
メグミとヒイラギは、コウテイダイオウイカから逃れ海上に浮上していた。
”水無月”の機体は、浸水が激しく緊急用の救命ボートに乗り移っていた。
連絡用のメインモニターも機体と共に沈み、救助を待つだけの状態になっている。
「もって一週間か」
「イカに襲われて、かなり移動してるのに気づいてくれるかな」
「大丈夫ですよ、きっと」
「……そうだね」
メグミは、台風一過、青く晴れ渡った空を見上げた。
◆
疾風怒濤が通りすぎた次の日、”呑竜”はメグミたちと最後に通信した地点に来ていた。
全艦載機を飛ばし、ソナー等全ての探知機を使って探索する。
「どこに行ったんだ……」
”呑竜”のブリッジの奥にある戦略会議室だ。
部屋の真ん中の机状の戦略モニターには、付近の地図と活動している艦載機の位置が表示されている。
「艦長、アメリカ軍が一番機の探索のために協力してくれるそうです」
戦略モニターに近づいてくるアメリカ軍の空母が一隻映る。
エンタープライズと表示された。
「協力感謝する」
ナンバは、無電に映ったアイゼンハウアーに礼を言った。
「You are welcame, キニするな」
アメリカ軍の空母から、次々と艦載機が上がって行く。
最終的には10機近くの数になった。
それでも発見できず日が暮れてきたので、探索は次の日になった。
◆
”救命ボート”
円形をしており、上部はテント状になっていて、ある程度の雨風は防げる。
一週間分の非常食とサバイバルセット、海水から飲み水を作れる整水器、簡易コンロ、釣り道具一式が装備されていた。
とは言え、メガシャークや危険生物、異常気象など素早く救出されることが望ましい。
◆
「夜になりましたね」
「うん、取り合えず体力の温存を優先しましょう」
簡易コンロで湯を沸かしてホットコーヒーを作った。
「大丈夫、嵐が過ぎたばかりだから、天気はしばらく荒れないわ」
メグミが、満天の星空を見上げながら言った。
夜が明けた。
早朝から必死の探索が続いている。
「どこなんだ……メグミ」
ナンバが、戦略ミニターの前で頭を抱えている。
「……付近の海流を出してください」
ナンバが顔を上げた。
ミヤビが、二匹のネコサマを腕に立っていた。
「海流をモニターに重ねてくれ」
ここ二日間の海流の動きが表示される。
じっとミヤビが潮の動きを見つめた後、
「ここです」
そっとコネコサマをモニターに下ろした。
子猫がその位置をペシペシとネコパンチする。
「……コネコサマがここだと……」
「!?、この地点に艦載機を急行させろっ」
「本艦も移動するぞ」
ナンバがブリッジに走り込んだ。
指定された地点に救命ボートはいた。
波間にオレンジ色のボートが見える。
近づいて来た飛行艇、”満月”に気付いたのか、中からメグミとヒイラギが顔を出して手を振った。
「こちら、”満月”オリエです」
「発見しましたっ」
「二人とも元気そうです」
オオオオオ
無線から歓声があふれた。
「救助します」
救命ボートの近くに”満月”を着水させ、二人を救助。
”呑竜”に帰投した。
「メグミ中尉、ヒイラギ少尉」
「無事かっ」
「良かった」
二人は、”呑竜”の格納庫に帰ってきた。
クルーが集まって来る。
ナンバが、ブリッジから走り込んできた。
「……メグミ……」
「……タイチロウ……」
ナンバは、メグミを痛いくらい抱きしめる。
二人は、しばらくお互いの体温を確かめ合った。
”呑竜”は探索に協力してくれたアメリカ軍にお礼を言った後、日本軍基地に帰投した。




