第86話、撃退
「こちら、空母型神社”大宰府八幡宮”所属、”神雷”」
「助けに参りました」
女性の声だ。
上空を、白と赤に塗られた飛行艇が飛んでいる。
”神雷”は打撃神社群が配備する、双発の高性能戦闘飛行艇である。
「戦艦型神社”霧島神宮”から、艦砲射撃が二発きます」
「着弾予想地点を、モニターに映しますが、航空機は高度を上げてください」
「た、助かった」
「神様っ」
メグミはお守りを握りしめた。
「全機上昇っ」
三機が急速上昇。
”神雷”より高度を取る。
「着弾まで、三、二、一、ナウ」
オレンジ色の塊が二個、ものすごい勢いで近づいてくる。
ドドオオオン
35,6センチ砲弾が二発、エルキャックの少し離れた所に着弾。
巨大な水柱が上がった。
メガシャークが一匹、空中に跳ね上げられる。
「着弾確認」
「もう二発、きます」
モニターの表示によると今度は、”エルキャック”と”呑竜”を飛び越えた地点に着弾しそうだ。
「二射目着弾まで、三、二、一、ナウ」
ゴウッ
機体の下をオレンジ色の砲弾が通り過ぎていく。
砲弾が通過するときの風圧で少し機体が揺れた。
ドドオオオン
「着弾、確認」
巨大な水柱と共に、二匹のメガシャークが宙に舞う。
大音量の爆音と水圧にメガシャークたちは目を回す。
メガシャークたちは、ふらふらと離れて行った。
ウオオオオオ
「Jesus,Thank you,アリガト」
「助かったあ」
歓声が上がった。
◆
その後、戦艦型神社”霧島神宮”と合流し、周囲にメガシャークがいないか確認した。
エルキャックは、バルーン部分を応急処置をした後、”吞竜”で、沖縄の方に曳航する予定になる。
”エルキャック”と”吞竜”をワイヤーでつないでいた時、
ビイイイイ、ビイイイイ
「艦長っ、対潜魚雷接近警報です」
「魚雷数、二、急速接近中、命中コースですっ」
「なっ、デコイ緊急射出っ、急げっ」
艦体横のハッチからデコイが射出される。
「魚雷のIFF確認、アメリカ軍の物です」
一発はデコイについて行ったが、一発はそのまま直進。
「くっ、全艦対ショック姿勢、命中するっ」
撃沈かっ
全員が目をつぶった瞬間、直前で魚雷が自爆した。
「……脅しのつもりか」
気が付くと巨大な空母二艦に挟まれるように囲まれていた。
艦の横には、”USS,Enterprise”と"USS,Independence"と書かれていた。
◆
”エンタープライズ級、原子力空母、エンタープライズとインディペンデンス”
大戦を生き残り、未だ強大な攻撃力を誇るアメリカ軍空母打撃群、主力空母二艦。
原子力発電と、海水酸素水素分離式エンジンと併用して、莫大な出力を得る。
艦載機搭載数、84機。
乗員、4600名。(吞竜の乗員が約50名)
小さな町が動いているに等しいのである。
◆
「艦長、打電です。 モニターに映します」
”呑竜”のブリッジ正面のモニターに、映した。
「ヘタな動きはしない方がイイ」
モニターに映った司令官とおぼしき白人の男が言った。




