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第8話、ソダーツX

「今回は、災難だったな~」


「もう夜も遅い。一旦本艦に乗艦しないか。報告書のこともあるし」

 気安い男性の声が、”文福茶釜”の無線から聞こえてくる。


「いいんですか?」


「歓迎するよ。お風呂もあるし」


「!!」

「寄らせていただきますっ」

(やった。翼の上で生暖かい簡易シャワーはもういいよ)


「左格納庫が空いてるから、そちらにどうぞ」


「ありがとうございます」


  ”文福茶釜”の艦の横の真ん中にある”飛空艇格納庫”の扉が上に開いた。

 前後に二本格納用のアームが下りてくる。

 ”水無月”の前後をアームが掴んで固定したのを確認して、主翼を上に折りたたんだ。

 そのまま、90度上の持ち上げられ、機体下部を外に向けた形で、格納庫に収容される。

 格納庫の扉が上から下に閉まった。

 コックピット横に延ばされた、タラップに這い出るように乗る。


「90度横転式の格納庫なんて、訓練学校以来だな~」


「ようこそ、”文福茶釜”へ」


「ありがとう」

 出迎えの乗組員の案内されて、ブリッジに向かった。


「戦艦”文福茶釜”艦長トウジョウだ。楽にしていいよ」

 50歳前半くらいの男性が艦長席から立ちながら言う。

 陸軍の茶色をした軍服の上着を着崩して、草臥れた艦長帽を被っていた。


(無線の人。艦長だった・・・)


「艦長っ」

 隣に立つ、黒い髪に、黒縁眼鏡をつけた生真面目そうな女性が声を上げる。

 年は20代前半か、茶色のタイトスカートの軍服が地味ながらも良く似合っている。 


「この艦の副長である、カオリ・セイカ大尉であります」

 ビシッと敬礼をしながら答えた。


「硬い。硬い~。陸軍が海上で肩ひじ張ってどうすんの」


「艦長っ」


「海軍気象部所属、メグミ・タチバナ中尉であります」

 敬礼を返した。


 ブリッジの壁かけ時計は、夜中の11時30分を指している。


「もう、夜も遅いよ。報告は明日にしよう」


 今回のような不測の事態には、海藻が原料の”紙”に記録された報告書の提出が義務付けられている。  


「カオリ君。あとは任せたよ」


  一旦、”水無月”に寄って着替えを取ってきた。

 その後、カオリ大尉に、個室に案内される。


「今日は、この部屋を使ってください」 

「私も、入浴はまだです。この部屋でお待ちください。案内します」


 一緒に、入浴することとなった。


  カオリ大尉は、165センチくらいで小柄だが、眼鏡を外すととても美人だった。

 着やせするのか、胸部装甲が半端なく立派である。


 思わず二度見したことを誤魔化すように、風呂場の壁の絵に目を向けると、


「本物の富士山は山頂まで段々畑なんですよね」


「肥料にしている魚の体内に残る”ソダーツX”の影響が、心配されてます」


 陸地の畑は陸軍の管轄だ。

 カオリが、髪を洗いながら言った。



 開発当時流行っていたナノマシンを使用した、成長促進薬”ソダーツX”。


  第4次世界大戦前の、深刻な食糧不足のために、”大国連合”が共同で開発した薬である。

 生物の巨大化を促進するが、成長速度は変わらないため、大戦の勃発を止めることは出来なかった。

 また、陸上の生物や植物に使用すると、体の巨大化に耐え切れず、自重で自死するため適さない。

 ”大異変”の時、製造工場と大量に保管していたタンクが海の底に沈み、現在の”海洋生物の巨大化”を引き起こしたと言われている。



「う~ん」

 メグミは、自分の胸に両手を当てて、大きさを確かめながら、改めてカオリの立派な二つの()をチラ見した。  

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