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[画像付き] 気象観測員『メグミさん』。 地表のほとんどが海に沈んだ近未来の地球で、日々がんばってます。  作者: トウフキヌゴシ
第三章

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第77話、F装備

「F装備を試したい」

 キバが、ナンバに言った。

 筋肉が内側からあふれそうだ。


 ”呑竜”は、名古屋から出港している。

 現在、名古屋沖を航行中だ。


「潜水空母のF装備の運用は初めてのはずだ」


「初めてのはずですわ」

 175センチくらいの身長、日本人とフランス人のハーフ、金髪、たてがみロール。

 フランソワーズ・オリガミ大尉である。

 キバから送られた婚約指輪は、サイズを直されて左手の薬指にはめられている。

 ”呑竜”の副長だ。


「ふ~む、……分かった、艦の進路は変えられないぞ」


「了解だ」


「そうだな、オリガミ大尉、キバ軍曹をサポート」

「”吞竜”でのF装備の運用試験を許可する」

 ナンバは、膝の上のネコサマを撫でた。



 ”コンゴウリキシ、フィッシング装備”

 

 コンゴウリキシの背中に、固定用のアームをつけ、太い釣り竿を装備したフィッシング装備である。

 陸軍の、”漁業部”から借りている。

 陸軍の装備であるため、空軍所属の”潜水空母、吞竜”では初めての運用となる。



「全艦に告げる、こちら艦長」

「今日は、コンゴウリキシのF装備の運用試験を行う」

「休暇もしくは、準勤務のものは、F装備の使用を許可する」

「厨房は、魚の料理の準備をせよ」


 一日、釣り大会に決まった。  


 キバは、コンゴウリキシを着て、艦の後部飛行甲板の端にいた。

 飛行甲板のフックに背中のアームを固定。

 椅子に座るような体勢で、トローリングをしている。

 コンゴウリキシの胸部ハッチを開いて、サングラスをした顔が見えていた。

 時々、フランソワーズが、タオルでキバの顔の汗を拭いた。

 

「きたっ」

 竿がしなる。

 ムーンチタニウム製の疑似餌が見えなくなる。


「ヒットですわ~、減速してくださいまし~」

 フランソワーズが無線でブリッジに指示する。

 タイトスカートの軍服姿に、瀟洒な白い日傘をさしていた。


「了解、両舷反転、減速」


「減速よ~し」


 大型のウインチ状のリールが、単分子ワイヤーのテグスを巻き上げる。


「大きいっ」

「フランッ離れてっ」


「了解です。 ショウさま」

 キバの名前は、ショウヘイである。


 一時間くらいの格闘の後、釣り上げた。


 二メートル近いカツヲだった。


 最後は、テグスに高圧電流を流してしめる。

 収納式のクレーンで飛行甲板に引き上げた。


 その後隣で、同じ装備で釣っていたウエダ機は、一メートル近いオオアジを釣った。

 準勤務だったヒビキが、サポートしていた。

 二人とも頭を撫でることは忘れなかった。


 相変わらずの陸軍組を横目で見ながら、ササギが

「羨ましくないからなっ」 

 ぼそりとつぶやく。


「ミイ」


「なぐさめてくれるのか?」


「ミイ」

 ササギは、そっと子猫を抱きあげた。


「……」

 巫女であるミヤビが後ろから、静かに見つめていた。



「あ、あの装備欲しいっ」

 アナスタシアが、F装備を見て言った。

 近い将来、自分で作って装備することだろう。


 夕食は、甲板で、”カツオのたたき”を作った。

 釣った魚で、なし崩し的に宴会になる。

 星空の下、夜遅くまで宴会は続いた。

 翌日は、休暇日となる。


 ちなみに、休暇だったメグミさんはボウズだった。


「釣れなかった~」 


「よしよし」

 ナンバが、メグミの頭を撫でて慰めていた。

 


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