第75話、開封、第三部
約三カ月の休暇が終わった。
科捜研のデータの分析と、北海道沖と四国沖に、同時期にスーパーハリケーンが発生したことにより”サニーデイズ”作戦は継続されることとなる。
予定通り、”第二次サニーデイズ作戦”が発動された。
古の言い伝えから、台風は赤道付近で発生して、北上してくるものだったらしい。
特に、”大異変”以前では、突然発生しなかったようだ。
「というわけで、今回、”呑竜”は南下してもらいます」
ヤスコ中佐だ。
帰投してきたときと同じように、全体会議を行っている。
「しかし、レインメーカーが対人兵器を装備している可能性が高いので、”吞竜”を改修しました」
”戦争放棄憲章”に調印しているため同盟国に、対人兵器の装備許可を得なければならない。
「対艦船用の三次元レーダーと、各種デコイの使用許可が出ました」
「ナンバ艦長」
「はい」
「”玄武”に、開封コードを取りに行ってもらいます」
「……了解しました」
◆
”四聖級空中要塞、玄武”
大戦中、日本軍が製造した、空中要塞。
四聖級と名付けられるように、四機あったが、他の三機は大戦中に墜とされている。
三機は、日本の西側に墜ちて、西側の土地がヒマラヤ山脈麓の高原まで水没して全く無くなった、間接的な原因にもなったといわれている。
無茶な土壌改良を繰り返していたのだが。
原子力発電所が爆発した地域も海の底だ。
人工知能(AI)制御で、日本上空の高高度を巡回している。
ここに、対人兵器の制御用プログラム一式を封印しているのだ。
完全スタンドアローンな為、直接プログラムを取りに行く必要がある。
◆
さらに、各艦には、”真名”という暗号化された隠し名が設定されている。
”真名”は、艦長とランクSの情報を閲覧出来なければ知ることは無理である。
ナンバは、”玄武”に直接行く必要があった。
機内が与圧され、固定燃料を用いたブースターを装備した”スーパー満月”が用意された。
水素酸素分離式のジェットでは、推力が足らず高高度まで飛行できない。
ナンバはパイロットに、メグミ中尉を指定した。
死ぬときは一緒という覚悟の表れだろう。
この時代の人間にとって高高度の空は、深海以上に未知なる領域なのである。
増加ブースターがつけられた”スーパー満月”が、垂直の発射台に設置されている。
「ごめんね、メグミ、つき合わせて」
高高度の空は怖い
ヘルメットと酸素マスクを着けているのでくぐもった声だ。
「ううん、逆に選んでくれてうれしいの」
各部のスイッチを忙しなく押していく。
「カウントダウンを始める。 よろしいか」
「了解~」
「始めてください」
「ファイブ、フォー、スリー、ツー、ワン」
「ゼロ」
「ロケットブースター点火っ」
ゴゴゴゴゴゴゴ
青空を、オレンジ色に染めながら、メグミたち空へ上った。
◆
「見えた」
”玄武”の形は、簡単に言えば巨大なエイだった。
むき出しの対空気銃や、砲台が表面を覆っている。
上空には、星空が見えた。
「IFFはきちんと認識されてるよ」
「着艦するよ~」
中央に飛行甲板のハッチがゆっくりと開きつつある。
ブースターをパージ。
”お松大権現”と同じように、移動式の下駄に固定されて着艦した。
「ようこそ、移動要塞”玄武”へ」
女性の声で、アナウンスが聞こえた。
「メグミは、機体で待ってて」
「何もないと思うけど、いつでも飛ばせるようにしていて」
巨大な何かの胃袋の中にいるような感じだ。
「分かった~、気を付けてね~」
ナンバは、PC室に移動する。
入るときに、網膜と指紋のチェックがあった。
四角い、ハードディスクを端末に繋ぐ。
「”呑竜”の”真名”を答えなさい」
男性とも女性ともとれる声だ。
「酒を呑み酔いしれる八首の竜」
「照合確認」
「歌ってください」
「くっ」
「歌ってください」
「この酒~~、呑竜~~♪」
「恋~、にょおうぼ~~♪」
他、5曲くらい、恥ずかしいような、微妙な、歌を歌わされた。
ちなみにこのやり取りは、地上でも監視、記録されている。
必要なプログラムがハードディスクにコピーされた。
「大丈夫だった」
心配そうにメグミが聞く。
「……何もなかったよ」
ナンバは、ニッコリメグミに笑いかけた。
「離艦準備完了。 また聞かせてください」
アナウンスが聞こえた。
「帰ろうっメグミッ」
「う、うん」
メグミは怪訝な顔で、”スーパー満月”を飛ばした。
”吞竜”の出港準備が整った。




