第73話、ハイウエイ
良い天気だ。
絶好のツーリング日和である。
ツーリングに行く日の朝、全員が待ち合わせ場所に集まった。
各自お互いに自己紹介しあう。
「これから、陸地の方に向かいます~」
「今回は、エアバイク初心者のナンバ君がいますので、なるべく水面近くを飛んでいきましょう」
「はあい」
「”ハイウエイ”を西に向かって、富士山の麓を目指します」
「先行するのでついてきてくださいね~」
ユタカがエンジンをかける。
「タイチロウさん、腰に手を回して、荷物になってね」
「分かった」
◆
”ハイウエイ”
水没したとはいえ、内地に行くほど水深は浅くなる。
海上に突き出た、昔のビルや建物で迷路のようになっていた。
そのため、昔の高速道路の上に標識がつけられ、道路のように利用されている。
◆
メグミとナンバは、エアモトグッチV1100s
ユタカは、エアドゥカティMHRミッレ
アナスタシアは、ウエアウルフ
オリエは、エアロイヤルエンフィールド・ブレット
に乗っている。
オリエは、イギリス製の単気筒のクラッシックエアバイクである。
トコトコと回る楽しいエンジンだ。
昔の高速道路が、水面下に薄っすらと見える。
お互い日本軍式のハンドサインで合図を送りながら、ゆっくりと飛んだ。
途中、サービスエリアのような所でトイレ休憩する。
合成の缶コーヒーを飲みながら、一息ついた。
「タイチロウさん、腰とか痛くない~?」
メグミが聞く。
「大丈夫、船と違ってスピード感が違うね」
ナンバが言う。
「あ、ユタカさん、アナスタシアさん、つけます?」
オリエが、軍支給の”サンイーターパーフェクト”を取り出す。
「ナスチャでいいよ」
アナスタシアの愛称だ。
「ありがとう。 もらうよ」
「ん、ありがと~」
ユタカが、肌の露出している部分に塗った。
「この調子で行ったら、昼前には着くから~」
遠くの方に、陸地が見えてきた。
陸地には、検問所があり許可の無いものは近づけない。
「大丈夫だよ~」
検問所の前で一端止まる。
ユタカが身分証明書のカードを見せた。
「先に許可は取ってるはずだよ~」
「確認しました。 ユタカ中佐、休暇ですか」
「そう~」
通行用のゲートが開いた。
少し飛んで、陸地の駐機場に着いた。
”青木ヶ原樹海森林保護区”と看板に書いてある。
「今日は、トレツキングだよ~」
「すごいっ」
「ありがと~」
「いいのかい?」
アナスタシアだ。
「陸地なんて何年ぶりかしら」
オリエが腕を組んだ。
上陸許可は簡単には下りない。
植物の種や苗は、裏ルート高値で売られているし、植物の病気を持ち込む危険があるからだ。
「今回のレインメーカーの調査の評価もあって、許可が下りたんだよ~」
「一応、森の中では、私の指示にしたがってね~」
エアダスターや靴の汚れを吸着マットで落としてから、森に入った。
メグミとナンバが、手を繋いで歩く。
木漏れ日が気持ちいい。
鳥の鳴き声がする。
「メグミ、あれっ」
「あ、すごいっ、リスだ~」
30分ほど歩いて、森を見渡せるような高台の、ログハウスのレストランに着いた。
ユタカが、昼食を予約していた。
トリニクと森のキノコなどを使ったサンドイッチである。
森を見ながら食べるサンドイッチは、とてもおいしかった。
食べ終わった後、同じ道を帰った。
エアバイクに乗り、待ち合わせ場所に夕方着く。
「今日はありがと~」
「陸なんて久しぶりだよ」
「サンドイッチ、美味しかった」
ユタカと、アナスタシアと、オリエは、このまま飲みに行くらしい。
ナンバは、メグミのレントハウスに泊まる予定だ。
興奮冷めやらぬまま、解散となった。




