第67話、ショッガンッ
”呑竜”は一路、日本軍基地に向かっている。
メグミとナンバは、出会うとお互いに顔を赤く染めた。
「艦長、漂流船を発見。 どうしますか?」
遠くの方に大型のタンカーが漂っているのが見える。
漂流者が乗っていたり、航海日誌など貴重なデータが残っている場合が多い。
「乗り移って調査しよう、艦を近づけて」
ナンバが指示を出した。
大型のタンカーは大体、”呑竜”の倍くらいの大きさだ。
乗り移るのは、
短距離ジャンプユニット装備のネプチューン
ラぺリング仕様のコンゴウリキシ、二機
「乗せてってあげるよ」
アナスタシアとエアバイク”ウエアウルフ”
”ウエアウルフ”の後ろにメグミ
と決まった。
「気を付けて行って来てね」
「……うん、分かった~」
ナンバとメグミが二人の世界を作る。
「ふふっ」
アナスタシアが肩をすくめた。
エアバイク状態の”ウエアウルフ”の後ろにメグミを乗せて、垂直に飛行させた。
カンッ、カンッ
腕に装備された、ワイヤー付きのフックをタンカーに打ち込む。
スルスルとコンゴウリキシ二機が、乗り移っていく。
シュパアアアアアア
両肩の外側と太ももの外側についた、ホバーユニットを軽く吹かした。
ネプチューンが、ふわりとタンカーの四角いブリッジの前に乗り移る。
メグミは、ブリッジ に通ずる建物の扉を開けようとしている。
チャカチャカと音を立て、アナスタシアが”ウエアウルフ”を着た。
ガサリ、
「んっ」
ガサガサ
開けた。
「ひっ」
「ッ、БЛЯДЬ!(キャ―)、БЛИН!(イヤー)」
パンパンパンパンパン
リロード
パンパンパンパンパン
メグミが、リボルバーの弾をを打ち切った。
壁、床、天井を埋め尽くす、シール―スの群れだ。
◆
”ビッグ、シール―ス”
30センチ大のフナ虫。
肉食。
これ以上の説明は、やめておきます。
◆
「メッ、メグミイ~、虫だけはダメェ~」
アナスタシアが、両ひざをそろえてしゃがみ込んでいる。
「たっ、弾っ、弾っ」
「こっ、これえ~」
アナスタシアが、ドラムマガジン式の20連装ショットガンを、メグミに投げる。
「どうしたあ」
キバが駆け付けようとする。
ドガッ、ドガッ、ドガッ、ドガッ、……
メグミが鬼の形相で、ショットガンのトリガーをガク引きした。
「ウガアアアア」
目を見開いて、焦点が合っていない。
「こ、怖ええ」
メグミを見て、ガタガタ震えながらウエダが言った。
結局、メグミは、二マガジン分、40発のショットガンを撃ち込んだ。
ガチッ、ガチッ
「だっ、大丈夫か?」
キバが、メグミから弾の無くなったショットガンを奪い取るという”益荒男”っぷりを見せた。
ちなみに、キバは、”函館”で、フランソワーズにプロポーズしている。
フランソワーズは、二つ返事で了承した。
サイズが少し大きい婚約指輪をつけて、幸せそうにクルクルと回っている彼女が、艦内の各所で見られた。
未亡人にしてしまうかと思った
キバは後に、この時の心境をこう語っている。
「はっ、一体私は何をっ?」
メグミが我に返る。
キバは、チラリとミキサーの中のようになった、廊下を見て静かにトビラを閉じた。
「……廊下は駄目だ……」
アナスタシアは腰が抜けて動けない。
決局、コンゴウリキシはラぺリングで、メグミはブリッジ横のウイングデッキに、ネプチューンの腕に乗って移動した。
外部からブリッジに侵入して、無事データを回収する。
「大丈夫ですか?」
「あ、ありがとう」
ネプチューンが、ウエアウルフを着たアナスタシアを、横抱きで抱え、”吞竜”まで運んだ。
メグミとアナスタシアは、SF小説『宇宙の戦士』の中で、主人公たちが甲殻類を食べられなくなるというのはこういうことかと、しみじみ話た。
回収したデータには、北海道沖でレインメーカーと接触していた同じ時間に、四国沖でスーパーハリケーンが発生していたということが残されている。




