第63部分、気泡
「先輩っ、”網走”から無線です」
強制更生艦”網走”所属のクロッサーから食料をもらった、次の日である。
同じところで引き続き、気象観測をしていた。
「出ますっ」
「あなた達が何してるかなんて、ち~とも気にならないんだけど~」
「スーパーハリケーンが、発生してるわよ」
「本当ですかっ」
「……信じてくれないのね……」
”水無月”のメインモニターに、かなりの量のスーパーハリケーンのデータがなだれ込む。
リアルタイムのデータだ。
「うわっ、信じます、信じますっ、ありがとうございますっ」
「「「別にあなた達のためにやってるんじゃないんだからねっ」」」
無線から、男女混合の大声が聞こえてきた。
「そのまま、”呑竜”にデータを流してっ」
メグミがヒイラギに言った。
「はいっ」
「こちら、一番機メグミです」
手振りでテントを畳む様に指示。
「こちら”呑竜”データを見ている」
「スーパーハリケーンの所に飛びます」
「位置確認だけで、近づきすぎないように」
人災の疑いが大きい。
「”呑竜”が到着するまで現地で待機」
「了解」
緊急離水の準備をする。
「気をつけて、メグミさんっ」
ナンバだ。
「はいっ」
ヒイラギの着席を待って、離水。
スーパーハリケーンに飛び立った。
◆
「スーパーハリケーンの位置を補足しました」
「”呑竜”高速巡行深度まで潜水」
「超伝導電磁推進装置、起動」
「スーパーキャビテーション航行準備」
◆
”スーパーキャビテーション航行”
艦首先端部から、大量の気泡を発生させ艦体を包むことにより、水の粘性抵抗から自由になり、水中ではあり得ない移動速度を得ることが出来る航行法。
水中でありながら、100ノット(時速150キロメートル)出すことが可能。
その性質上、気泡が剝がれてしまうため、キャビテーション航行は直進しかできない。
◆
「ルート選出」
可能な限り直線を維持する航路を取る。
「第一コーナーを、”杯1”」
「第二コーナーを、”返杯1”と呼称」
「気泡噴射口、開け」
「気泡発生」
「超伝導電磁推進装置、全開っ」
後ろ向きのG を感じる
ゴゴゴゴゴゴゴ
腹の底から響いてくるような重低音の中、”呑竜”は100キロ近い速度で水中を駆けた。




