第61話、仙台沖海戦跡
抜けるような晴天を、飛行艇”水無月”は飛んでいる。
「ここいらに着水させましょうか~」
メグミが、ヒイラギに言った。
「ここは?」
周りには、海上に傾いて沈んでいる、空母や艦船が沢山ある。
日本軍のだけではなく、外国の艦も多数あった。
”水無月”を適当な所に着水させる。
「”仙台沖海戦跡”よ」
◆
”仙台沖海戦”
過去の世界大戦中期、北海道は、”帝政ソレント”に占領されていた。
さらに”帝政ソレント”軍は南下して来る。
当時の日本軍は、これに全艦体を指し向け抵抗する。
両軍の艦隊は仙台沖で衝突した。
”仙台沖海戦”である。
◆
メグミはキャノピーを横に開け、翼の上に移動する。
「現在、打撃神社群のほうが空母の数が多いのは、日本軍の艦船の大半が、ここに沈んでいるかららしいわ」
メグミが周りをくるりと見渡した。
「そうなんですかっ」
ヒイラギが、翼の上に来た。
「結局、北海道は、”エイプリルフール”が世界にばらまかれ、”大異変”が起きるまで日本に帰ってこなかったのよね~」
メグミが、翼の一部を持ち上げ、二人用のテントを組み立てる。
「”ペレレストロイカ”で”帝政ソレント”が”ロシア連邦”になったんですよね」
ヒイラギが、手伝った。
「そうよ~」
そのどさくさに取り返したのだ。
テントの設営が終わる。
夕方まで、定時の気象観測をして過ごした。
「寒くなって来たわね~」
風はないが、しんしんと冷え込んできた。
「そうですね」
二人ともコートに手袋で身を固めている。
「テントに入ろうか~」
「はいっ」
テントの真ん中に設置された、小型のダルマストーブに、魚の骨を原料とした薪を入れる。
持ってきていた、カニと簡単な具材で鍋を作った。
「飲める~?」
「少しだけ」
二人で鍋をつつきながら、”日本酒もどき”を飲んだ。
「ここいらはね、夜、面白いのよ~」
「しばらく待ちましょう~」
二人はテントの入口を閉めてしばらく、ゆっくりとお酒を楽しむ。
「ふふ、そろそろね~」
メグミが、腕時計で時間を確認する。
「何ですか」
「外に出ましょうか~」
テントを開けると、海の中に”星空”があった。
沈んだ艦船の隙間の水平線から本物の星空が、続いているように見える。
”水無月”や艦船が、星空に浮かんでいるようだ。
「うわああああああああ」
「いいでしょう~」
「ここいらはね、周りの沈んだ船に囲まれて、”ビッグウミボタル”が海面に集まるの」
「すごいですうう」
ヒイラギが、”水無月”の翼の端まで行った。
「ふふっ」
(また、ナンバ君と来ないとね~)
100年以上前、沢山の戦死者が出た戦場跡である。
”ウミボタル”達は鎮魂のために集まっているかもしれない。
メグミは、”日本酒もどき”をお供えのつもりで、少し海に流した。




