第59話、博物館
「このJAXAの水中基地には、博物館が作られてるんだ」
「一緒に見に行かない?」
ナンバがメグミを、デートに誘っている。
「いいよ~、行こう行こう」
メグミが二つ返事で了承する。
”呑竜”はPCのデータのバックアップとメンテナンスに三日かかる。
クルーは三日の休暇になった。
基地は、ホテルや商業施設、博物館などもあり、観光地としても有名である。
海上とシャトルバスも充実していた。
二人は、所々透明の窓になっている、チューブ状の通路を歩いている。
博物館の入り口が見えてきた。
”JAXA宇宙博物館”と書かれている。
二人はそっと手を繋いだ。
入ってすぐに、この基地の現在の姿の模型が置かれている。
軌道エレベーターの基部を中心に、ドーナツ状に基地が広がっている。
その横に、出来た当時の軌道エレベーターの模型が並べられていた。
「すごいね~」
「うん」
「これは~」
月の表面に、基地と巨大な大砲のようなものが置かれている、模型がある。
「これはマスドライバーだね」
「月の低重力下で、特殊な鋼材を作っていたんだよ」
「例えば、ムーンチタニウムやスペシウムとかね」
その横に、南極の氷に何か巨大なものが落ちて、クレーターを作っている模型がある。
「弾丸の形をしたコンテナで、出来た鋼材を地球に打ち込んでたんだ」
「当然、安全な場所にだよ」
身振り手振りをつけて説明する。
「エイプリルフール?」
「そう」
エイプリルフールは、ナノマシンを利用した、モニター上の数字を1から5の範囲でランダムに書き換える、悪戯用グッズである。
今でも、世界中の空を漂い続けている。
「じゃあ」
「数値を間違えて撃ち込まれたコンテナは、南極に直撃」
「今、南極にはほとんど氷は残ってないよ」
海水面上昇。
ほとんどの陸地が水没する。
軌道エレベーターの基部をちぎった、大津波が来た。
”大異変”である。
二人が生まれる前の話だ。
「これは~?」
「小惑星探査機、”ホウセンカ”?」
5メートルくらいの大きさで、ヒマワリの種に翼を着けたような形をしていた。
◆
”小惑星探査機、ホウセンカ”
完全に自動で、小惑星を探査し帰還する探査機。
ピーク時には、週に一機のペースで打ち出され、”ウイークリー探査機”と揶揄された。
ペッぺ、ペッペと吐き出される様子から、”ホウセンカ”と名付けられる。
ほぼすべて帰還。
当時のJAXAの優秀さを嫌というほど示した。
◆
「帰還した”ホウセンカ”を他国に大量に奪われて、日本が世界から孤立する原因になったんだっけ……」
ナンバが肩をすくめた。
「何か、複雑だね~」
メグミが明るい表情で、笑いかけた。
「……ふふ、そうだね」
明るく笑いかけてくるメグミに、ナンバは同じように笑い返した。




