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[画像付き] 気象観測員『メグミさん』。 地表のほとんどが海に沈んだ近未来の地球で、日々がんばってます。  作者: トウフキヌゴシ
第二章

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第56話、マグナムカジキ

 場所は、徳島県沖。


 ”航空母艦型神社、お松大権現”である。


「氏子の漁師から緊急入電」

「”マグナムカジキ”の群れが、紀伊水道沖から、住宅密集地に進入中」



 ”マグナムカジキ”


 成長促進薬”ソダーツX”によって、10メートル近くまで巨大化したカジキマグロ。

 水面近くを泳いでいると漁船に大穴を開けたりするが、あまり水面近くは泳がない。

 住宅密集地を泳がれると、海底から住宅を固定している鎖がズタズタにされ、大変危険。

 (家がどこに漂っていくかわからない)



「モニターに出せ」

 艦長帽を被り、艦長席に座った50代前の男性が言った。


☆「ニャゴニャゴ」

  艦長の膝には、太った老猫が眠っている。


 ブリッジの中央にある卓上の戦略モニターが、付近の地図を写している。

 元瀬戸内海の和歌山県と徳島県の間にある海の入口が、映し出されていた。


 モニター上には、”マグナムカジキ”と漁船と住宅密集地の位置が、表示されている。

 周りには副長も含めて参謀たちが、モニターを囲んでいた。


☆「にゃっ」 

  ノシッ

  一匹の虎猫が、見せるかっと言わんばかりに戦略モニターの上に大の字になった。


「あっ」

 新人の巫女なのだろう。

 びくびくしながら、ネコサマを抱こうとするが、艦長が片手で制する。


☆最終的には、参匹になっていた。


 いつものことなのだろう。

 何事も無かったように、天井から斜めに吊るされた、別のモニターに視線をうつす。


「まずいな……」

「第一種戦闘態勢」

「スクランブル機を上げろ」

 艦長が、膝のネコを落とさないように手で支える。


「トラネコ小隊及びキジネコ小隊、音響爆雷、ミケネコ小隊、誘導魚雷でよろしいか?」

 フライトチーフだ。


「了承する」

「艦を、”マグナムカジキ”の群れに向けろ」


「了解」

 操舵士が小さめの転輪を回す。


☆操舵士の前の窓際には、気持ちよさそうに寝ている猫が三匹いた。

 一匹が大あくびの後、大きく伸びをする。


「両舷全速前進」


「了解」

 機関室で巨大なエンジンが、重低音のうねりを発している。

 フライホイールなど危険な場所からは、神職や巫女がネコサマを回収している。



☆「ミィミィ」

 エンジンの熱で温かい床に、子猫の塊があった。

 ”コネコダルマ”である。


☆レーダー塔をキャットタワー代わりにしている猫は、神職や巫女が、懸垂下降ラぺリングで回収された。


 飛行機用エレベーターに乗せられて、白と赤に塗られた神社仕様の、”シーキャット弐”が甲板に運ばれていく。


☆「にゃーーん」

 甲板から一匹の雉猫が、上がってくる、”シーキャット弐”の翼に飛び降りた。

 翼の上にネコの足跡を付けながら、翼の横で両手を広げて待っている、巫女の胸に飛び込んだ。


「第一小隊、トラネコ1、トラネコ2、カタパルト接続完了」

 2機の”シーキャット弐”が並んでいる。


☆発進直前に、黒猫が前をよぎった。

 オフィサーが、黒猫を肩に担ぐ。


「トラ1、発艦」

 猫を肩に抱いたまま、体を前に倒し、腕を前におろした。


ドオオオン


 可変翼を広げた、トラネコ1が飛びたって言った。 


 トラネコ、キジネコ、ミケネコ小隊、計9機の”シーキャット弐”が編隊を組んでいる。


☆「ニャア、ニャア」

 キジネコ小隊二番機のパイロットの膝に三毛猫が登って来た。


「こちら、キジ2、”キャットストライク”を起こした」

「任務続行不能、帰還を希望する」


「こちら、オヤネコ、速やかに帰還せよ」


「了解」

 

”マグナムカジキ”は、音響爆雷に混乱させられた後、誘導魚雷を追いかけて、別の場所に行った。


 数ある”氏子防衛用打撃神社”の中でも、”お松大権現”の神職や巫女ほど、予測不能な事態に強い集団はいないと言われている。


 ここ5年ほど、老衰以外で、ネコサマを死なせていない。



「ナンバ君、ナンバ君、今度の休暇に、”お松大権現”ネコガミさんにお参りに行かない?」


 二人で一緒に大浴場に入りに来た。

 風呂上がりである。

 メグミの、上気した頬が色っぽい。


 メインモニターに、”お松大権現”のホームページを開いている。

 ☆のマークのついた場面の写真が、掲載されていた。


 ”ネコサマの春の季節の後に、コネコたちに埋まってみよう”

 

 神職及び巫女、急募。


 とある。

   

 風呂上がりのメグミに見とれていたナンバが、ホームページの写真を見る。  


「えっ」

(戦略モニターにネコ?)

(コネコダルマ?)

(エレベーターから飛び降りるの?)

(ラぺリング?)

(キャットストライク?)


 艦載機は、少ないとはいえ、”吞竜”も空母である。

 空母の運用の難しさは、想像できる。


 メグミは、驚愕してて固まってしまったナンバの顔を、心配そうに覗き込んだ。


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