第50話、ビッグシオマネキ
「ナンバ艦長、ネプチューンとコンゴウリキシの連携訓練を行いたい」
ネプチューンライダーの、ササギ中尉だ。
片目に黒い眼帯をしている。
後ろに、”コンゴウリキシ”のツナトリ(パイロット)である、キバ軍曹とウエダ一等兵もいる。
「確かに、連携訓練は必要だ」
今、”吞竜”は、千葉県から茨城に近づいている所だ。
「ここいらは、”ビッグシオマネキ”の生息地です」
ササギ中尉だ。
「……美味しいのか……」
「美味しい」
「うまい」
ササギと、いつの間にか後ろにいた、整備士のオリガが力強く言った。
二人とも、”蟹漁獲用装甲双胴空母、ブラックオパール号”出身だ。
「機関反転」
「”呑竜”停止~」
「こちら艦長。 全艦に告げる、これよりネプチューンとコンゴウリキシの連携訓練として、”ビッグシオマネキ狩り”を行う」
「特に、調理班は”蟹を料理する準備”をしておけ、以上」
「今夜は、カニパだ~」
「カニ鍋ですわ~」
「うおおおおお」
艦内が沸いた。
「”ビッグシオマネキ”は、大きさは、一メートルくらいの狩りやすい蟹だ」
「左手の、ハサミだけは気を付けてくれ」
「全体の指揮は私がとるが、コンゴウリキシの指揮はキバ軍曹にお願いする」
ササギ中尉が、眼帯を触った。
「「了解」」
”吞竜”の下部出撃庫だ。
ササギが、ネプチューンの首元から、コックピットである”耐圧球”に滑り込んだ。
肩の後ろに、足元まで届く長い、”超振動大太刀”を装備している。
キバは、四ツ目に見える小隊長仕様のコンゴウリキシにツルハシを装備。
ウエタのコンゴウリキシは、スコップを装備していた。
「行ってくる」
「行ってらっしゃいませ。 キバ様」
「気を付けてね。 ジローちゃん」
メグミの友人である、ヒビキだ。
ウエタ一等兵と付き合っている。
すかさず、ヒビキはウエタの頭を撫でる。
カチ、カチ
フランソワーズとヒビキは、”魔除け”の火打石を鳴らした後、格納庫から出て行った。
「……おおう……」
一連の”陸軍組”のやり取りを、ササギはネプチューンのモニター越しに見た。
「出撃準備完了」
「こちらも、オッケーだ」
「格納庫閉鎖確認」
「注水してくれ」
ザバザバと海水が入ってくる。
海水が、満たされた後、前半分の床のハッチが後ろにスライドした。
水深は深くない。
水没した民家が、うっすらと見えた。
「出撃する」
ネプチューンから、海底へ降りて行った。
「結構いるな」
パパパパ
ササギは、モニターにカニの居場所を表示させる。
モニター上に、カニに丸いロックオンマークがついた。
「コンゴウリキシ、情報を共有する」
「見えるか?」
「「見えた」」
コンゴウリキシのモニターにも、同じようにロックオンマークが着いた。
「動きはそれほど速くない、後ろからやってくれ」
「「了解」」
狩ったカニは、フロートを着けて海上の”呑竜”に送る。
増設されたクレーンが大活躍するだろう。
”吞竜”のクルーは、約50名くらい。
”ビッグシオマネキ”を5匹も狩れば十分だ。
「そろそろ十分だ。少し周りを調査してから、帰還しよう」
「「了解」




