第49話、夢の国
今、”吞竜”は水没した東京の海上を、15ノット(時速27km)で航行中である。
メグミは、飛行艇格納庫の上の、第二甲板にいる。
足元の飛行艇格納庫のハッチが、全開にされていた。
下に、第一甲板にある電磁カタパルトのレールが見える。
メグミは、メインモニターを繋いだ、観測用の双眼鏡で気象観測中だ。
「だいじょうぶ?」
左舷側には、ヒイラギ准尉が、慣れない双眼鏡を使いながら気象を観測している。
風もなくいい天気だ。
第一甲板も第二甲板も、シーツなどの洗濯物がひるがえっている。
”休暇”の者が干しているのだ。
第二甲板のさらに上に、外部指揮所があり、ナンバが周りを双眼鏡で見まわしていた。
「周囲に異常なし」
「両舷そのまま」
ナンバが、伝声管に向かって、簡単な指示を出している。
「ん、メグミさん?」
ナンバが下にいるメグミに気付いた。
メグミを手招きする。
「ナンバ君」
指揮所に上がってナンバの横に並ぶ。
「いい天気だね~」
「うん」
「あ、メグミさん、”ユメノクニ”が見えるよ」
指さした先には、白い西洋風のお城が見えた。
◆
対メガシャーク用要塞併設型、巨大遊園地、ユメノクニ、”デスティニーランド”
大戦がはじまる前に、この地にあったと言われる、あるカートゥーンを主題とした巨大遊園地を完全再現したもの。
洋上に作られた、積層建築物の上に建てられている。
しかし、できた当初から、周りの海流が少しづつ変わった。
その結果、周りの海が”メガシャーク”の群生地となってしまう。
メガシャークに対抗するために、遊園地の周りに武装エリアをつけ足していった。
今では、武装エリアは、遊園地と同じくらいの広さになっている。
特徴的なのは、八方向に設置されている、”46センチ大和型主砲塔”八門である。
これは、いかなる”メガシャーク”も寄せ付けない。
その他、多数の武装が設置されている。
丸みを帯びた重量級の機動甲冑、”ドワーフ”を装備する傭兵部隊”七人の小人”。
機動甲冑”ウェアウルフ”を操り、”メガシャーク”に飲み込まれ、腹を切り裂いて出てきたという傭兵、レッドキャップ。
防御戦のプロ部隊、”イ・トレ・ポルチェリーニ”(三匹の子豚)。
など、
頭に”黒いマウスの耳”の飾りをつけた傭兵部隊は、周りの兵を震え上がらせるという。
また、航空戦力として、機体を真っ白に染めあげた、”対メガシャーク”用急降下爆撃隊”スノウホワイト”を有する。
遊園地内で開発された、兵器の品評会である”エレクトリカルパレード”には、各国の軍関係者がたくさん見に来るのだ。
真ん中にある、童話のお姫様の名前をした白い中央制御用の建物は、正に”ユメノクニ”を守るお城なのである。
最近、兵器の販売額と、”メガシャーク”から作られるかまぼことふかひれに、遊園地の収益が抜かれた。
◆
「次の休暇に遊びに来ようね~」
「うん。かならず」
遊園地は、無茶苦茶楽しいのだ。
たとえ、”メガシャーク”に囲まれ、八方を”46センチ大和型主砲塔”で守られているユメノクニであろうとも。




