第45話、ネコ神さん
「ほんとに見たんだって~」
小さめの背丈の巫女が言う。
「ほんとに~」
「ほんとだって~」
背丈が、大中小と揃った三人の巫女さんが、風呂上がりのコーヒー牛乳を片手にくつろいでいる。
風呂上がりの普段着だ。
大浴場から出た所の休憩所である。
「ニャ~、ニャ~」
「ゴロゴロ」
三匹の猫が足元や膝の上でくつろいでいる。
「お~、よしよし」
背が一番高い、眼鏡をかけた巫女さんが近くの猫の頭を撫でていた。
◆
”航空母艦型神社、お松大権現”
昔、無実(直訴)の罪で処刑されたお松さんが飼っていた三毛猫が、化け猫になり復讐したという伝説から出来た神社。
通称、”ネコ神さん”。
全国的にも珍しい、ネコの狛犬がある。
艦内には沢山、ネコが飼われており、広い航空甲板のそこかしこに横たわるネコの姿は、圧巻。
拝艦料を払い入艦すると、ネコと一緒に食事したり、お茶をしたりすることが出来る。
ネコ好きの聖地である。
◆
「いーや、あれは幽霊船だった」
この前のスーパーハリケーンの中で、船のシルエットを見たと言うのだ。
「まさか、レインメーカー?」
中くらいの背丈の巫女だ。
「だって、船の周りだけ、雨も風もなかったんだよ」
「ん~? あ、こら、痛い痛い」
「ニャ~ニャ~」
背中を爪を立てて登られたようだ。
中くらいの巫女の顔の横に、ネコの顔がある。
「取り合えず。上に報告しといたら」
背の高い巫女が、ネコにイリコをあげている。
ちなみに、この神社の巫女は、ネコを神の使いとして、ネコに仕えている。
大半の業務はネコの世話である。
「うん。わかった」
◆
「以上が協力してくれた、”打撃神社群”からの報告書よ」
「スーパーハリケーンの中で、雨や風が収まるというところが、メグミ中尉の報告と一緒よ」
「他にも似たような報告が何件かあるわ」
ヤスコ中佐が胸の前で手を組んだ。
「やはりあるんでしょうか。レインメーカーは?」
メグミは心配そうだ。
「……上層部は、あると考えているわ」
「そうですか」
メグミは、部品を拾ったときの報告を終えた。
そのまま、しばらく深刻な顔で考えている。
「……お松大権現……」
確か、徳島県沖に停泊しているはず。
「今度、ナンバ君と行かなくてはっ」
ふにゃりと表情をゆるめた。
情け容赦なく、ネコをたくさん、触りまくらなくてはっ
メグミさんは、かなりのネコ好きだ。




