第44話、科総研
ヤスコ・サワグチ中佐。
「アネさんっ、お世話になりましたっ」
「アネゴッ、もう行っちまうのか」
イナバと、サクラギである。
スクランブル訓練の後、めちゃくちゃ懐かれたのだ。
そろそろ休暇のために、本部に帰還するつもりだ。
「さびしくなるねえ」
オリガだ。
「ありがと~、また寄らせてもらうよ~」
「ああいつでも歓迎するよ」
カイラギが言った。
メグミが”水無月”に乗り込み”ブラックオパール”から離艦した。
一路、日本軍本部をめざす。
「今回の勤務も濃かったな~」
報告用の書類を作成した後、
「そうだ」
気になっていた部品を”科総研”に持っていく。
異常気象の後に拾ったものだ
◆
日本軍、科学総合研究所、”科総研”
日本軍の総合研究所だ。
歴史は古く、大戦前の警視庁までさかのぼる。
日本軍が誇る研究者集団だ。
◆
「これはっ」
拾った部品を見せると男性職員に驚かれる。
「ヤスコ中佐っ、これを見てください」
主任らしい白衣を着た女性隊員が奥から出てきた。
「……ハイパーカーボン製に、ステルス塗料っ」
「やはり……」
「メグミ中尉でしたね」
「はい」
「詳しく聞かせてちょうだい」
拾った経緯を説明した。
「そう。 これから話すことは、機密になるから他言は無用よ」
「最近、空軍の降下猟兵を、ここ(旧国会議事堂上部の階層建築を利用した海上軍事基地)の最下層まで降下させて調べさせたの」
「厳重な鍵付きのアタッシュケースの中に入った”作戦計画書”が見つかったわ」
「水没した長官室の椅子に座った、白骨化した長官の腕に、手錠付きであったそうよ」
「ミッション、”レインメーカー”と書いてあったわ」
身を乗り出して、声が小さくなる。
「……AIを用いた完全自立型のステルス艦に、ナノマシンを使った、気象兵器を載せる計画みたいなの……」
「えっ」
拾ってきた部品は艦の外装にも見えなくはない。
ゴクリ
「……メグミ中尉……」
ヤスコ中佐がメグミの目を見ながら、首をゆっくり縦に振った。
メグミも、青い顔をしながら、ゆっくり首を縦に振り返した。
日本陸空海軍すべてを巻き込んだ作戦に、メグミが参加することが決まった瞬間である。




