第41話、ネプチューン
「ソナーに感」
「ガザミ、数7、いや8確認」
ブリッジは戦闘用に赤い電灯に変えられている。
「爆雷だっ」
「爆雷用意」
「用意完了」
「落とせっ」
カイラギが、手を前に出しながら命令した。
「アイアイ、キャプテン」
樽上の爆雷が、海面に投下される。
ド、ドオオオン
白い水柱が海面に上がる。
「沈黙2、確認。 下に2匹残ってます」
「上々だ」
カイラギがにワイルドに笑いながら、顎をさする。
「”ネプチューン”を全機出せっ」
「アイアイ」
◆
”人型装甲潜水球、ネプチューン”
日本海軍が採用する、人型潜水球である。
全高約7メートル。
胸の部分の潜水球に、頭と腰と両手足と装甲が着いた形をしている。
頭に着いている大きめのメインカメラが、一つ目に見えるのが特徴。
全体的に、流線型の美しい機体である。
背中と両肩、両太ももに水中ジェットを備える。
その周りを曲線を描いた装甲版が覆う。
◆
少し前、メグミは、飛行艇の格納庫に移動していた。
”水無月”のコックピットで、スクランブルに備え待機している。
格納庫の奥に、キャノピー越しに、”ネプチューン”が6機見えた。
全機、正座の形で待機状態である。
3機ずつ3列に並んでいる。
天井の黄色い回転灯が周り、
ブー、ブー
とサイレンが鳴っている。
「全機、出撃準備急げ」
頭を前に倒した根本にある、潜水球の入口にパイロット達が滑り込んでいく。
曲面である胸部装甲の真ん中には、”平家蟹の甲羅と蟹の足がクロスした模様”が描かれていた。
灰色の機体の肩装甲の横には、”海11”から”海33”まで、白色で小隊番号が書かれている。
天井からアームが伸びて、機体が固定された。
「出撃準備完了っ」
「出撃っ」
電灯が赤くなった瞬間、”ネプチューン”の足元の床が下に開いた。
アームをリリース、全機海中に落ちて行った。
「アタッカーは第1、第2小隊」
「第3小隊は、周囲警戒および、フォロー」
「「「アイアイ!!」」」
「1匹ずつだっ」
1匹の”タイラントガザミ”に6機の”ネプチューン”が攻撃を加える。
第3小隊は、もう1匹を邪魔させないように牽制する。
11号機が、手に持った巨大なアンカーで攻撃するが歯が立たない。
「うおっと」
ギリギリのところで”ハサミを回避した。
(あぶね~、真っ二つになるとこだったぜ)
21号機が背後から、”超振動太刀”で斬りつける。
蟹の甲羅は、硬い上にしなやかさも備えている。
「駄目かっ」
触れた所から火花は散るがそれだけである。
周りの機体も、手に持った”電磁式三又鉾”で弱らせようとする。
死闘は、20分に及んだ。
「(”ネプチューン”の)活動限界が近いっ」
11号機が強引に、”ガザミ”の前に出た。
「こなくそおおお、左手っパイルバンカーー」
”ガザミ”の口の中に、左手に装備したパイルバンカーを、”口頭射出”。
ドンッ
”ハサミ”に挟まれて機体が悲鳴を上げる。
「もう一発っ」
ドンッ
「もう一発ううう」
ドンッ
挟む力が徐々に弱くなり、”ガザミ”は沈黙した。
「すまん。 11号機はこれ以上動かん。 緊急浮上する」
機体各所から、緊急用のフロート(浮袋)を出して浮上した。
「隊長、無茶しすぎっすよ~」
「あとは任せてくだせ~」
残った一匹は残りの全機で、追い払った。
合計、3匹の”タイラントガザミ”を狩るという快挙に成功。
「あと一匹でエースだったのに……」
11小隊の隊長の一言である。
「……カニ鍋、美味しい……」
今回は見ているだけだったメグミは、罪悪感に駆られながらも、鍋のおかわりを止められないのだった。




