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[画像付き] 気象観測員『メグミさん』。 地表のほとんどが海に沈んだ近未来の地球で、日々がんばってます。  作者: トウフキヌゴシ
第一章

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第37話、ゴールデンスパイラル

 ”呑竜”は、艦載機三機と”水無月”を回収した後、”リュウグウウミガメ”の動きを追っている。

 ほぼ外洋まで誘導したが帰ってくるかもしれないからだ。

 ”呑竜”のブリッジのモニターには、泳いでいるウミガメの後ろ姿が映っていた。

 端の方には、LIVEと書かれた、上空の飛行艇”満月”からの映像が四角く表示されている。


「念のため、一番、二番、魚雷管に”誘導魚雷”を装填」

「気づかれないように距離を保て」

 ブリッジ中央の艦長席に座ったナンバが指示を出す。


「はああ、……かっこいい……」

 メグミは、ナンバの席の斜め後ろにあるブリッジに通じる廊下の影から、熱い視線を送っていた。

 艦長帽と制服がナンバを一層、精悍に見せていた。


「おい、あれって」

「メグミちゃんと艦長付き合い始めたって本当だったんだな」

「……うらやましい……」

 ナンバからは死角だが、ブリッジのクルーからは丸見えである。


 その時、


「艦長、コーヒーはいかがですか」

 反対側の廊下から、身長175センチくらい、金髪、立て巻きロールの白人美女が現れた。

 副長である”フランソワーズ、オリガミ”大尉である。

 日本人とフランス人のハーフ。


「ありがとう」


 フランソワーズがナンバ艦長にコーヒーを渡した後、反対側の廊下をふと見ると、黒髪の細身だがスタイルのいい女性がこちらを見ている。

 (? 何故ショックを受けたような目で?しかも涙ぐんでません?)


 目が合った瞬間、そのまま走り去ってしまった。


「え?」

 周りのクルーを見回すと

 (やっちまった)

 という目で見られている。


 (まさか、メグミさん?ナンバ艦長の恋人の?)

 (私と艦長のことを誤解された?)

 彼女は、誰もが振り返るような美人だ。

 たまにこういう誤解を受けるときがある。


 メグミは、借りている部屋に駆け込んだ。


「あんな美人がいるなんて~」

 艦長帽に制服のナンバの横に、制服でタイトスカートの金髪美人はとてもよく似合っていた。

 自分の、飛行服にフライトジャケットを着たアウトドアな格好を見下ろして、


「勝てないよう~」

 少し泣いてしまうメグミである。

 

 時間が経って落ち着いた後、


「お風呂で温まって落ち着こう」

 ナンバの浮気が確定したわけでもない。

 泣いてしまった顔も洗いたい。

 着替えの準備をして大浴場に向かった。


 ”女”と書かれた暖簾をくぐり、浴場の引き戸を開けると、立て巻きにされた豊かな金髪が目に入った。


「あっ」

 メグミがびくりと身を固めた。


「あっ」

 下着姿のフランソワーズが


「お待ちなさい、多分貴女誤解していますわ」 

「取り合えずこちらにお寄りなさいな」

 着替え入れの籠が並ぶ、着替え室にメグミを呼んだ。


「はい」

 おずおずとメグミが入ってくる。


 フランソワーズは、メグミに涙の後を確認して


「はあ~」

 とため息をついた。 


「まず最初に言っておきますが、ナンバ艦長のことはこれっぽっちも思っていませんことよ」

 フランソワーズが携帯を取り出す。


「はい」


「信じてませんわね」

「……貴方には耳の痛い話になりますけど……」

 少しためる。


「ナンバ艦長には、”厚み”が足りませんわっ!!」


 携帯の写真を見せながら言った。


「あ、厚み!?」

 携帯の写真には、茶色い軍服を着た、筋肉があふれそうな男性が映っている。


「キバ軍曹っ」

 思わずメグミが叫ぶ。

 少し前に”ガンテツ”であったばかりである。


「知っているのっ」

 まるで”泥棒ネコ”を見るような目で、メグミを見た。


「……ナンバ艦長と付き合っていたんでしたわね……」


 メグミは、コクコクと必死に首を縦に振った。


「見なさい」

 二枚目の写真には、カーゴパンツに、タンクトップ姿で、筋肉ムキムキのキバが写っている。

 手には手ぬぐいを持ち、男くさい笑みを浮かべながら、汗を拭いていた。


「……隠し撮りしましたのよ……」


 くわッと目を見開いて

「これぞまさに、”大和男子”っ」

益荒男(ますらお)っ、益荒男(ますらお)ですわ~~」

 携帯を両手で掲げながら、くるくると回った後、下着姿の豊かな胸に抱きしめる。

 立て巻きの金髪が花のようにふわりと広がった。


「ま、益荒男(ますらお)っ!?」


 重度の筋肉好きである彼女の性向は、”呑竜”内では有名で、”残念美人”の名をほしいままにしているのである。


「……でも出会いの機会がないのですわ……」

 しょんぼり。


「あの、協力しましょうか?」

 陸軍の船(”ガンテツ”や”文福茶釜”)にはよく寄らせてもらっている。


「いいんですの?」


「はい」


「では、私からは、ナンバ艦長の写真や様子を送りましょう」


 二人は携帯の連絡先を交換した。



 :ゴールデンスパイラルさん


 陸軍の男性に、私のことを気付いて欲しいのです。気を引く方法を教えてください。


 ベストアンサー


 :茶釜たぬきさん


 陸軍~。頭を撫で撫ですればいちころだよう~。(陸軍中野学校で調教済みだよう~)


 その他の回答


 :副茶かまさん


 学術論文の”撫で撫で理論”に基づいた、”戦術ドクトリン”の元”士気高揚”に効果的な方法です。

 繊細かつ大胆に、気になる殿方の頭を撫でることです。

 応援していますよ。



 多分陸軍の人の回答だと思う。

 その後、メグミの友人である”ヒビキ”が陸軍の土木部の人と付き合っており、キバとフランソワーズのコンパが開かれる。


 フランソワーズはしばらくした後に、”撫で撫でランキング”の番外編の一位に躍り出ることとなった。  

 ランキングを駆け上がる原因となった、ある軍曹とのエピソードは有名である。



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