第36話、シーキャット
メグミは、先日拾った部品を調べていた。
「……夜に一瞬、周りが静かになって巨大な船が見えたような気がするのよね……」
「この硬さにこの軽さ……、ハイパーカーボン製?」
「でも製法は、大戦末期に失われたはず」
百目鬼ネットで検索しながらつぶやいた。
「科総研に出すか……」
調べるのを諦めたとき、
ピピピピ
とメインモニターが音を出した。
「作戦協力要請信号だ。発信元は……」
「日本空軍、酔鯨級潜水空母”呑竜”」
(ナンバ君の艦だ~)
メグミは、緩みそうになる頬を必死に引き締めながら、イソイソと”水無月”を離水させた。
信号の方にしばらく飛ぶと、”呑竜”が海上に浮上して、艦載機を発艦させるところだった。
前部の飛行艇格納庫のハッチを、全開に開いている。
その前に、可変翼を装備した”F41シーキャット弐”が可変翼を最大に広げていた。
◆
”可変翼後退機、F41シーキャット弐”
日本空軍が採用する、可変翼後退飛行艇。
双発のジェットエンジン装備。
潜水空母に乗せるために可変翼後退機を採用した。
フロートは、引き込み式で本体と一体化する。
現在”呑竜”には、3機配属されている。
◆
ズドオオオン
”シーキャット弐”が電磁カタパルトに射出され、アフターバーナーを吹かしながら舞い上がってくる。
「こちら、日本海軍所属”水無月”協力しますよ~」
(っつ、メグミさん!?)
「こちら、”呑竜”、協力感謝する」
(んっ、ナンバ君!?)
続いて二機の ”シーキャット弐”が上がって来た。
作戦内容は、先日の”リュウグウウミガメ”二頭を補足したので、”誘導弾”を用いて外洋に誘導することである。
メグミはしばらく、”シーキャット弐”三機の編隊飛行の後をついて行った。
「こちら、”子猫ワン”、ターゲットを発見」
「”子猫ツー”、確認」
「”子猫スリー”、確認」
「”水無月”確認しました~」
「こちら”大猫”ターゲットの位置を確認した。 そちらに向かう」
「”誘導弾”で誘導を開始せよ」
「「「了解」」」
三機の”シーキャット弐”は、機関砲で”リュウグウウミガメ”の鼻先から、外洋に向かって”誘導弾”を撃ち込んだ。
白い水柱が線上に並んだ。
”誘導弾”は、リュウグウウミガメ”に取って美味しいにおいがする物質を放出する。
「こちら”水無月”、上空でウミガメの様子を報告します~」
”水無月”を上昇させ、ウミガメがどこに動いているかを報告し始めた。
「一番、二番魚雷管に”誘導魚雷”」
「三番、四番魚雷管に”音響魚雷”を装填、注水せよ」
「注水完了」
「一番、二番、”誘導魚雷”射出」
ゴゴゴン
と言う振動と共に魚雷が射出される。
「魚雷は、ウミガメの鼻先で進路を外洋に変更、直進中~」
メグミが報告する。
途中で、レドーム付きの”満月”も参加した。
外洋まで誘導するのに約5時間かかった。
「ふうう、やれやれ~」
”シーキャット弐”が”呑竜”に帰っていく。
「……”水無月”、寄っていくかい?」
(ナンバ君……)
「はい、寄らせていただきます」
メグミは、”水無月”を”呑竜”に向けて飛ばした。




