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[画像付き] 気象観測員『メグミさん』。 地表のほとんどが海に沈んだ近未来の地球で、日々がんばってます。  作者: トウフキヌゴシ
第一章

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第35話、レインメーカー

 日本海軍に気象部が出来た当初から、ある噂があった。

 スーパーハリケーンなどの異常気象は、”幽霊船”もしくは”レインメーカー”が起こしているというものだ。

 実際、スーパーハリケーンの中で、未確認の船を見たと言う報告書が何件かあげられていた。


「うわ、急に天気が変わったよ」

 さっきまで晴れていた空が、今では真っ暗だ。

 翼の上のテントを大慌てで畳み、コックピットに入ってキャノピーを閉めた。

 突然の大雨で、雨粒がキャノピーにバシバシ音を立てて当たってくる。

 視界はゼロで、雷が鳴り始めた。


「……レインメーカーが来てる……」

「なんてね」 

 少し不安になったメグミは、全方位パッシブレーダーと、パッシブソナーの動作を確認した。

 近づくものがあれば警告音で知らせてくれるはずだ。

 識別コードも出してあるし、機首と垂直尾翼の先の識別灯も点滅している。


 メグミは、シートを倒してフルフラットにして、横になりメインモニターで、”新着の学術論文”に目を通し始めた。


 しばらくした後、そのまま寝入ってしまった。



 ”完全AI型気象操作兵器搭載ステルス艦、レインメーカー”


 大戦中、”大国連合”が極秘裏に開発した、ナノマシンを使って気象を操作する兵器。

 平面を組み合わせた、護衛艦クラスのステルス艦でレーダーに映らない。

 艦内にナノマシン製造工場を持ち、海水酸素水素分離型ジェネレーターで、故障するまでほぼ無限に活動が可能。


 ”レインメーカー”のAIは、大戦末期、”エイプリルフール”が世界中に拡散したとき、正しいデータを表示しているにもかかわらず、全く違う数字を言う人間の反応が理解できず、”自律隠蔽モード”に入った。

 AIの構造上、モニターの情報だけが変わっていることに気付けなかったのだ。



 ”レインメーカー”は”水無月”の近くに無音で近づいた。

 気象を操作して、艦の周りだけは雨も風もなく静かである。

 長年メンテナンスも受けずに海上をさまよっているため、船体はところどころ傷んでいる。


 :識別コード……日本海軍

 :友好国と確認

 :サーモセンサーでパイロットを調査

 :睡眠中

 :良い夢を


 ”レインメーカー”は静かに立ち去った。

 彼は、海の底に沈んだ、かっての敵性国家の跡を、気象を荒らしながらさまよい続けている。

 海の底に沈んだ”母港”から、来ることがないであろう”帰還命令”を待ちながら。


「これは……」 

 次の日、天気は晴れている。

 メグミは海に浮いて、”水無月”の機体にコツンと当たってくる、部品を見つけた。

 ”レインメーカー”から剥がれ落ちた”ステルス装甲”の一部だ。


 この発見が、異常気象の解明の第一歩になるのである。

 

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