第34話、クロッサー
ドオオオン
低空を超スピードで飛行していく、戦闘飛行艇を見つけた。
「うわ」
双眼鏡で、確認する。
「クリスティアニティの、マンハント部隊だ」
尾翼の横に銀十字が光っていた。
「ロシア正教所属の、”SU63フランカーモーリェ(海)”だね」
「近くに”強制更生施設艦、シベリア”が来てるんだ」
◆
”強制更生施設併設型、重航空巡洋艦シベリア”
この世界には、”絶海の孤島”や”家族単位で大きな船”で海上をさまよいながら、生活している人が少なからずいる。
これらの人たちは、社会生活の経験が少なく、”海賊”になったり、人知れず犯罪の犠牲になる場合が多い。
これらの人たちに、強制的に社会の仕組みやルールを教え、更生するための施設を備えた艦を”強制更生施設艦”と言う。
”海賊”などは物理で黙らせてから、更生することになる。
ちなみに、捕まると”シベリア送り”になると言われる。
主に、”クリスティアニティ”が運営する。
アメリカの”強制更生施設艦、アルカトラス”や、日本の”網走”も有名。
◆
「いや~、彼らは強引なんだよね」
数年前に、気象観測中の、日本海軍の観測員が”シベリア送り”にあった事件がある。
「取り合えずさらっとけっていうノリなんだろうな~」
マンハント部隊と言われる所以である。
「うわ、ちかづいてきた」
大慌てで、ロシア語で”日本人”と書かれた大きな旗を取り出し必死に振った。
”SU63フランカーモーリェ(海)”が近づいてきて、ホバリングする。
”SU63フランカーモーリェ(海)”のコックピットに乗った、シスター服をきた修道女が、笑いながら十字を切った。
マンハント部隊のパイロットの”クロッサー”と呼ばれる仕草だ。
「あの後、いきなり、発砲したりするからな~」
しばらく、最大限の笑顔で旗を振っていると、修道女が軽く手を振って去って行った。
「怖い怖い」
ほっと胸をなでおろすメグミである。




