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[画像付き] 気象観測員『メグミさん』。 地表のほとんどが海に沈んだ近未来の地球で、日々がんばってます。  作者: トウフキヌゴシ
第一章

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第31話、タコパ

 ”コンゴウリキシ”3機は、沈んだ漁船を目指し、潜航中である。

 時々、”ガンテツ”のソナーの反応を聞きながら、両肩の横と太ももの横に着いた、可動式の水中ジェットを吹かしながら、真っ暗な海に沈んで行く。


 しばらくすると、海底に横たわっている、漁船を見つけた。

 船体の横に、ひっかかれたような大きな穴が開いている。


「隊長、見つけました」

 スズキが穴に近づく。


「待て、スズキッ」


 次の瞬間、穴から巨大な蛸が出てきて、スズキの”コンゴウリキシ”にまとわりついた。


「”グレートオクトパス”だ、ウミガメから隠れてたんだ」


「うわああああ」

 スズキの視界一杯に、インコの嘴のような、蛸の”カラストンビ”が迫っている。

 カチ、ゴリと胸部装甲をかじられている音がした。


「サ、サエコさんっ」


「今、助けるっ」

 ウエタ機が背中のツルハシを手に装備、蛸の急所である、目と目の間を叩く。

 自動で水中ジェットが叩いた反動から、姿勢を保った。 

 刺さりはしなかったが、少し体が離れた所に取りつき、


「超振動短剣、右手っ」


 火器管制を音声操作(ボイスコントロール)、右手の二の腕から、超振動ナイフが飛び出し、右手が掴んだ。

 ナイフで、絡んでいる足を、根元から1本切り落とす。


 ”グレートオクトパス”が真っ黒な墨を吐きながら、”スズキ機”から離れた。

 墨で視界ゼロだ。


「視界を温度探知に変更、タナカ、スズキ機を強制浮上、後共に浮上しろ」


「了解」

 スズキ機の背中に回り、黒と黄色の縞に塗られた、四角いレバーを引いた。

 機体各所に着けられた浮袋が膨らみ、浮上する。 

 ウエタ機とタナカ機も、周りを警戒しながら一緒に浮上した。



 上空でメグミは、スズキ機が”グレートオクトパス”に襲われたことを無線で聞いた。

 ”スズキ機”の浮上場所を探すため、周りを”水無月”で飛ぶ。


「見つけた。まずい、蛸の足がまだ動いてる」

 スズキ機にまとわりついている蛸の足が、うねうねと動いている。

 ”スズキ機”の近くに緊急着水。

 エマージェンシーボックスから、”リボルバー拳銃”を出し、空の薬室に”電磁麻酔弾”を装填した。



 ”73式ニューナンブ回転式拳銃”

 

 日本軍が採用している、5連装のリボルバー銃である。

 銃身がシリンダー下部にあり、銃身の交換を容易にしている。

 整備が簡単で頑丈、薬莢が飛び散らない(再利用するため)ことから、回転式が採用されている。



 パンパンパンパンパン


 弾が当たった所で、パリッパリッと青白いスパークが起こる。

 スタンガンのように電気で麻痺させるのだ。

 5発打ち切り、シリンダーを横に出して、コックピット内に薬莢を落とした。

 クイックローダーで装填、さらに5発撃ち込んだところで足の動きが止まる。


「ふう、ここだよ~」

 無線で、”ガンテツ”に位置を知らせた。 



 ”コンゴウリキシ”の、MBTの120ミリ主砲弾すら跳ね返す、可動式(モーフィング)装甲である胸部ハッチに、蛸にかじられた傷がある。


 その前に、”コンゴウリキシ”を脱いだ、スズキが頭を抱えてしゃがみ込んでいた。


 慌てて走って来た、キバ軍曹と、ヒナコ少尉は、


「大丈夫か?」


「視界一杯に、サエコさん、ヨメさんの顔が・・・」

 スズキが震えながら言う。


「それはヨメじゃない、死神だ・・・」


 しばらくした後、


 胸部ハッチを開けた、ウエタとタナカの所にスズキが歩いてきた。


「「スズキ、大丈夫か?」」


「もう大丈夫でありますっ」

 スズキが胸を張る。


「本当にか?」

 ウエタが心配そうな声を出した。


「ヒナコ少尉に、頭を撫でてもらいましたっ」(きりっっ)


「よしっ、大丈夫だなっ」

 ウエタが力強くうなずいた。


「ふふ、大丈夫のようだね」

 タナカがほっとしたように微笑む。


「スズキ二等兵、任務に復帰するでありますっ」


「「「吶喊っ」」」


 ”コンゴウリキシ”をまとった、日本陸軍の”益荒男(ますらお)”たちが、勇ましく、危険溢れる海に飛び込んで行った。



 その夜、”ガンテツ”の上部甲板で”グレートオクトパス”の足を使った”タコパ”が行われ、メグミも呼ばれて参加した。


 蛸の足を”電磁麻酔弾”で素早く()()たことが感謝され、ヒナコ少尉に頭を撫でられる。

 まわりの隊員の称賛と嫉妬の声に、何とも言えない微妙な表情を浮かべてしまうメグミである。



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