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第3話、呑竜

 メグミは、飛行艇”水無月(ミナヅキ)”をヨット状態にして走らせている。

 ソナーに感があった。

 巨大なものが、海中から浮上してくる。

 識別(IFF)信号を受信した。



 日本空軍所属、酔鯨(すいげい)級潜水空母、”呑竜(どんりゅう)


 超伝導電磁推進装置(キャタピラー)、装備。

 飛行艇を最大5機まで収納可能。

 空軍が誇る大型の潜水空母である。



「こちら、”呑竜(どんりゅう)”。近くに浮上する。メグミ中尉久しいな」


「ナンバ艦長。久しぶりだね」


 無線で答える。

 完全に浮上した、”呑竜”に”水無月(ミナヅキ)”を横づけにした。

 もやいで”水無月”と”呑竜”を繋ぐ。

 

 ウエットスーツの機能を備えた、ぴったりとした飛行服は、スタイルのいいメグミの体を浮き立たせる。   

 ショートカットの黒髪を、ソバージュにしていた。


 男所帯の”呑竜”の乗組員には、いささか目に毒だ。


「メグミちゃ~ん。いつもかわいいねえ」


 ”呑竜”の甲板に引き上げてもらいながら


「ありがと~」


 手の空いた乗組員が、外の空気を吸いに甲板に出て来ている。

 軍服に艦長帽を被った、20代半ばの男が近づいてきて


「元気にしてたか?メグミ中尉」


「おかげさまで。ナンバ艦長」


「何か足りないものはないか?」


「う~ん。そうだ。煙草ない?切れちゃって」


「分かった。ちょっと待ってろ」

 艦内に入っていった。


「これでいいか?」

 ナンバは、煙草とスキットルに入ったウイスキーを、メグミに渡す。


「ちょっ。いいのこれ」


 植物が原料の酒は大変貴重だ。

 海洋生物の巨大化で食料は十分にあるが。 


「……今度食事でも一緒にどうだ?」


「……いいよ。次の休みを教えて」


「艦長~ナンパですか~」


「ちょっと基地まで乗ってかな~い」

 乗組員の一人が、後ろの飛行艇用のハッチを親指で指しながら言う。


「電磁カタパルトもつけるよ~」

 別の乗組員が、甲板中央を走る電磁カタパルトのレールを叩いた。


「ありがと。でももう少しで空へ上れそうなんだ」


「そうか。この周辺にメガシャークも見ていない」

「緊急信号は、なるべく早く出すんだぞ」


「分かった」


 しばらく話をして”呑竜”と別れた。


 その日の夜、飛行艇の翼の上、満天の星の下である。

 煙草を吹かしながら、


「ナンバ艦長か……」

 

 スキットルから飲んだウイスキーは、ほんの少し甘い味がした。

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